【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
15 / 73

15 勇者 聖女 

しおりを挟む
「俺はレッド・ローズ。勇者だ」

 盗賊に襲われ、間一髪で助けてくれた人物は以前出会った怪しい剣士ソードマン
 助かりました……しかし、なぜこんな場所に居るのでしょうか。

「助けていただきありがとうございます。あの時は―――」

「話はいい。今はそんな場合ではない」

 そうでした。今は盗賊に襲われている最中です。
 しかし盗賊も、レッド・ローズさんが来たことで動きが止まっていますね。
 今のうちです!

「マット! ロビー! ケイ! 態勢を立て直します!」

 3人は直ぐに反応し盗賊の手から逃げました。いえ、わたくし達に構っている暇は無くなった、と言った方が良いでしょう。
 レッド・ローズさんの装備や、音もなく接近する技術は間違いなく一級品です。
 盗賊達はゆっくりと動き出しますが、まさか正面から戦うつもりなのでしょうか?

 しかしレッド・ローズさんは剣を下にさげたまま、構えを取ろうとしません。
 戦う気はない、という意思表示でしょうか。

 しかし理由は直ぐにわかりました。
 突風が吹き一瞬顔を背けましたが、前を見た時には……盗賊は全員倒れていました。
 まさか今の突風の間に? いえひょっとしたら、突風をのかもしれません。
 どちらにせよ、レッド・ローズさんの腕は桁外れです。

「やりたいようにやる、などと言っておきながら、随分とノンキなものだな」

 剣を鞘に納め、見下したようにわたくしに辛らつな言葉を浴びせます。
 確かにやりたいようにやると言いましたが、この方に文句を言われる筋合いはないと思うのですが。

「おいお前! 助けてもらった事は感謝するけど、フランになんて事いってやがんだ!」

「マット、良いのです。レッド・ローズさん、助けていただき感謝いたします。お礼もかねて、食事などはいかがでしょうか? よろしければ、ですが」

 断られるでしょうか。しかし今のわたくし達に出来る事といえば、食事をご馳走する位です。
 借りを作ったまま別れても良いのですが、出来ればその場で借りは返したいですね。

 レッド・ローズさんはわたくしの目を見ています。
 何でしょうか、まるでわたくしの心を読もうとしているようですね。

「ご馳走になろう」

「ありがとうございます。ケイ、1人分追加でお願いします」

「はぁ~い」

 マットがケイのお手伝いを始め、わたくしとロビーはイスとテーブルの用意をします。
 レッド・ローズさんにはイスを用意して、少々お待ち願いましょう。

「ねぇフラン、どうしてあの人を食事に誘ったの?」

「お礼をしたいのは本当です。それに、わたくし達には手本となるべき人物が必要だとは思いませんか?」

「手本? 冒険者としての師匠って事?」

「ええ。わたくし達は順調に成長しているとは思いますが、今回のようなことはこの先も起こるでしょう。ならば、それに必要な知識・実力を身につけねばなりません」

「そうだけど……フランはいいの? あんなこと言われてさ」

「ふふふ、わたくしはあの程度の事は気にしません。自分の利益になるのなら、もっと言われても構いませんし」

「それは……僕が我慢できなくなるから止めて」

「そうですね、ほどほどにしておきましょう」

 焚き火にかけておいたヤカンを取り、カップにお湯を注いでコーヒーを入れます。
 ロビーにはマットとケイに話をしておいてもらいます。

 イスに座り、腕を組んで下を向いているレッド・ローズさんにコーヒーを渡します。

「どうぞ。砂糖はいりますか?」

「少し貰おう」

 スプーン一杯分の砂糖を入れ、カップを渡します。
 取っ手を持って口に運び、熱かったようで体がピクリと動きました。

「レッド・ローズさんは、わたくしには役目があるとおっしゃっていました。どのような役目なのでしょうか」

「聖女という職業は、勇者と組んで人ではたどり着くことのできない、遥かな高みに行かねばならん。そのためには無駄な時間などすごす暇はないのだ」

 とても不愛想に、ぶっきらぼうに喋ってはいますが、この方には確かな目標があるのでしょう。
 わたくしは聖女とはいえ、その様な高みに行けと言われても困ってしまいます。
 レッド・ローズさんの向かいのイスに座り、少し話を進めましょう。

「しかしわたくしは聖女とはいえ、冒険者になったばかり。そのような高みなど、想像もつきません」

「だから俺と共に来いと言ったのだ」

「しかしそれでは、今の仲間を捨てる事になってしまいます。あなたは、その様な人間を仲間として信用できますか?」

 何も言わずにコーヒーを飲んでいます。
 どうやらそれは理解しているようですね。ならばもう一押ししてみましょう。

「あなたは共に来いという、わたくしは仲間を捨てられない。それならば、選択肢が一つ増えるのではありませんか?」

「? どういう意味だ?」

「レッド・ローズさん、わたくし達と共に冒険をしましょう」
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

処理中です...