【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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21 錯乱 誘拐

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 依頼の報告に行った冒険者ギルドでは、しっかりと報告がされていました。
 ギルドを出た所までは確認されていますが、それ以降のロビーの足取りが掴めません。
 周辺の店に聞きこみをしましたが、人であふれかえるこの街で、一々覚えている人などいませんでした。

「ロビー……一体何があったというのですか」

 ギルドから家に至る道沿いの店、全てに聞きこみをしましたが、手掛かりは無し。
 は! まさかもう家に戻っているのでは!?
 急いで家に戻りますが、ロビーの姿はありませんでした。

「どこに居るのですかロビー」

 手分けして街中を探し、衛兵や門番にも聞きますが、情報は集まりません。
 城へ行き、ロビーを知らないか聞きに行きますが、当然のように情報はなし。

「まさか、ジャイアントモスの討伐現場に戻ったのでは? 今から行ってきます」

「落ち着けフラン!」

「フラン~、そんな所には行かないと思うよ~」

「そうだぞフラン。ロビーが意味のない場所に行くはずねーよ」

 みんなに諭されて、当たり前のことに気づかなかった自分に驚きます。
 
「それでは街の中をしらみ潰しに調べましょう。ああ、下水道の中への入坑許可も取ってきます」

 衛兵の詰め所へ向かおうとしましたが、ケイが私の腕を掴んで引っ張ります。
 一体どうしたのでしょう。一刻を争うというのに。

「ケイ、急がないといけな……!」

 両手で頬を挟まれました。

「取り乱したらダメ~。下水道に居るはずないでしょ~?」

「台風が発生した際には川の様子を見に行って下水道に流されることが頻繁に……」

「だから、台風なんて無かったじゃん」

「そ、そうですが万が一という事が……」

「一旦家に戻るぞ。情報が入れば、家に集まるようにしておく」

 レッドに引っ張られ、家に連れ戻されました。
 どうしたというのですか? 今日はみんな、とても冷たく感じます。

 居間のソファーに座らされ、喉も乾いていないのにココアを飲まされました。

「どぉフラン~。少しは落ち着いた~?」

「はい……申し訳ありません、わたくしとしたことが、取り乱してしまいました」

 冷静に調査をしているつもりでしたが、かなりの錯乱状態だったと思います。
 下水道など、人が入れる大きさでは無いのに。
 しっかりと計画を立て、正確な情報を元に行動しなくては、迷走するだけで先へは進めません。

「ただいま。衛兵の隊長に直接話をしてきた。なんかあったらココに連絡してくれるってさ」

 マットは衛兵へ手を回してくれました。
 レッドは城に行き、騎士団や警護隊に話をしに行ったようです。
 各街に早馬が走り、街の出入りのチェックが厳しくなるでしょう。
 これでロビーが街を通り抜けようとしたら、必ずこちらに連絡が来ます。

 しかし、誘拐の場合はそうはいきません。
 荷物に紛れたり、変装させられたり……死んでいたら分からないでしょう。

 誘拐……やはり誘拐と考えるのが妥当でしょうか。

「戻ったぞ」

 レッド・ローズも戻ってきました。
 全員揃ったので、これからの作戦を考えましょう。

「まず、俺はロビーが誘拐されたと思っている。異論のある者はいるか?」
 
 誰も居ません。やはり、誰もが誘拐されたと考えていたのですね。
 しかしロビーは手練れ……しかも背が大きいので、意識を無くして運ぶのは難しそうです。

「これは予想ですが、何らかの理由で、ロビーは連絡する暇もなく、誘拐犯に付いて行ったのだと思います」

「やっぱそうかな。俺もさ、意識を失ったでっかいロビーをどうやって運ぶのか、考えてたんだ」

「それには俺も同意する。断れない理由があったんだろう」

「でもなに~? ロビーが断れない程の理由って~?」

 皆が黙り込みます。
 思い当たる事がありません。仮にわたくし達を誘い込む罠だとして、そんな事をする理由は何でしょうか。
 私達に恨みを持つ者? それとも、最近は落ち着いた『聖女』を手に入れるため?
 知らない内に恨みを買ったのでしょうか。
 冒険者は、依頼をこなしていくうちに恨みを買う事が稀にあります。

 大体は逆恨みですが、一緒に依頼を受けた人が亡くなった場合、その家族から恨まれることがあるようです。

 しかしわたくしはこの3年間、他のパーティーと行動を共にしたのは数回のみ。
 それも全員が無事に帰ってきています。

 分かりません。ロビーを誘拐して、一体何が望みなのでしょうか。

 ふと、窓が開きました。風でしょうか。
 窓から風と共に封筒が舞い込んできました。
 レッドが窓を蹴破り外に飛び出しますが、すでに誰も居なかった様です。

 舞い込んだ封筒を手に取ると、あて先が書いてありました。
 『フランチェスカ聖女へ』と。

 急いで開封すると、予想を肯定する内容が書かれていました。
 『仲間は預かった。返して欲しくばグラストリム帝国へ来い』と。
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