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22 国境 訓練
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「グラストリム帝国……私が居た国に、ロビーが連れていかれたのですか」
窓から投げ込まれた手紙には、グラストリム帝国に来いとしか書かれていませんが、ロビーが連れていかれた可能性は高いでしょう。
もしも、もしもデイヴィット王太子が関わっているのなら、私の所為でロビーは誘拐された事になります。
私の事を、聖女の事を諦めてはいなかったのですね。
「グラストリム帝国か、あの国は厄介だぞ」
「レッド。なにかあったのですか?」
「簡単な話が……フラン、お前の所有権を主張している。聖女は王太子の許嫁だとな」
「そんな事を……私を捨てただけでなく、利用できるとなれば手のひらを返すのですね」
「そんな所だ。そんなわけだから、まずここ、サザンクロス聖国がお前の出国を認めない」
!!! そうですね、今の私はサザンクロス聖国で祈りを捧げるという契約を履行中です。戻ってこれないとなれば、出国の許可は出ないでしょう。
さらに契約を破棄したとして、多大なる罰金や、制裁の可能性もあります。
「それでは……それでも私は行かねばなりません」
「ダメだってば。だから俺達が行くんじゃねーかよ」
「フランは待ってて~。私達が必ずロビーを連れて帰ってくるから~」
「お前が動いたら、その後の冒険者としての活動に支障が出る。ロビーの事を考えるなら、今は動くな」
そんな、そんな事を言われては、私は動けなくなってしまいます。
どうして私は、愛する人を助けに行く事すら出来ないのでしょうか。
「ならば、せめてダラムの街で待たせてください。国境の街ならば、私が居ても文句は言われないはずです」
「ああ、あの街で待っていろ。ロビーが帰ってきたら、真っ先に抱きしめてやれ」
こうして、ロビー救出作戦が開始されました。
国境の街ダラムへ向かい、私を除いた3人が国境を渡ります。
この3人ならば、必ずロビーを救い出してくれるでしょう。
私は街でする事がありません。
とはいえ、冒険に出てしまうとすぐに動けないため、街を離れる訳には行きません。
しかし何かをしていないと気ばかり焦ってしまいます。
「聖女様、お暇でしたら新人の訓練をお願いできませんか?」
「訓練ですか? それはギルドの訓練場でよろしいのでしょうか?」
冒険者ギルドの受付嬢が、そんな話を持ち掛けてきました。
訓練場でいいのなら、何かあった際は直ぐに動けますし、体を動かす仕事なら気がまぎれます。
「ええもちろんです。訓練場でしごいてやってください」
さっそくその日から訓練を開始しました。
最初は魔法使いや聖職者などの後衛職の訓練のつもりでしたが、剣士や格闘家などの訓練もするようになりました。
こういう時は、一通りこなせる聖女は便利な物ですね。
しかし弊害ももちろんありました。
私が1人で行動しているため、ソロになったと勘違いした冒険者が、パーティーに入ってくれと勧誘を始めるのです。
しかし説明をしたら諦めてくれるので、本当に勧誘も最近は落ち着いてきました。
そして久しぶりに見る顔がありました。
「あなたはネオではありませんか? お久しぶりですね」
「ん? おお聖女様ではございませんか。これはこれはご機嫌麗しゅうございますれば……えーっと?」
「以前と同じで結構です」
「そうか、じゃあそうする。久しぶりだなフランチェスカ」
冒険者ネオ。以前私が聖女だと判明した際に、ギルドマスターが移籍しろと言ったパーティーのリーダーです。
「あれ以来ですから、3年ぶりでしょうか」
「そうだな。フランチェスカのウワサは度々聞いていたが、今の元気のいい剣の音はお前か?」
「ええ。いま新人の訓練をしていますので、その時の音でしょう」
「そうか。じゃあ俺も訓練をしてくれるか? 聖女様」
そう言ってネオは腰に下げた剣を叩き、あごで訓練場を差します。
窓から投げ込まれた手紙には、グラストリム帝国に来いとしか書かれていませんが、ロビーが連れていかれた可能性は高いでしょう。
もしも、もしもデイヴィット王太子が関わっているのなら、私の所為でロビーは誘拐された事になります。
私の事を、聖女の事を諦めてはいなかったのですね。
「グラストリム帝国か、あの国は厄介だぞ」
「レッド。なにかあったのですか?」
「簡単な話が……フラン、お前の所有権を主張している。聖女は王太子の許嫁だとな」
「そんな事を……私を捨てただけでなく、利用できるとなれば手のひらを返すのですね」
「そんな所だ。そんなわけだから、まずここ、サザンクロス聖国がお前の出国を認めない」
!!! そうですね、今の私はサザンクロス聖国で祈りを捧げるという契約を履行中です。戻ってこれないとなれば、出国の許可は出ないでしょう。
さらに契約を破棄したとして、多大なる罰金や、制裁の可能性もあります。
「それでは……それでも私は行かねばなりません」
「ダメだってば。だから俺達が行くんじゃねーかよ」
「フランは待ってて~。私達が必ずロビーを連れて帰ってくるから~」
「お前が動いたら、その後の冒険者としての活動に支障が出る。ロビーの事を考えるなら、今は動くな」
そんな、そんな事を言われては、私は動けなくなってしまいます。
どうして私は、愛する人を助けに行く事すら出来ないのでしょうか。
「ならば、せめてダラムの街で待たせてください。国境の街ならば、私が居ても文句は言われないはずです」
「ああ、あの街で待っていろ。ロビーが帰ってきたら、真っ先に抱きしめてやれ」
こうして、ロビー救出作戦が開始されました。
国境の街ダラムへ向かい、私を除いた3人が国境を渡ります。
この3人ならば、必ずロビーを救い出してくれるでしょう。
私は街でする事がありません。
とはいえ、冒険に出てしまうとすぐに動けないため、街を離れる訳には行きません。
しかし何かをしていないと気ばかり焦ってしまいます。
「聖女様、お暇でしたら新人の訓練をお願いできませんか?」
「訓練ですか? それはギルドの訓練場でよろしいのでしょうか?」
冒険者ギルドの受付嬢が、そんな話を持ち掛けてきました。
訓練場でいいのなら、何かあった際は直ぐに動けますし、体を動かす仕事なら気がまぎれます。
「ええもちろんです。訓練場でしごいてやってください」
さっそくその日から訓練を開始しました。
最初は魔法使いや聖職者などの後衛職の訓練のつもりでしたが、剣士や格闘家などの訓練もするようになりました。
こういう時は、一通りこなせる聖女は便利な物ですね。
しかし弊害ももちろんありました。
私が1人で行動しているため、ソロになったと勘違いした冒険者が、パーティーに入ってくれと勧誘を始めるのです。
しかし説明をしたら諦めてくれるので、本当に勧誘も最近は落ち着いてきました。
そして久しぶりに見る顔がありました。
「あなたはネオではありませんか? お久しぶりですね」
「ん? おお聖女様ではございませんか。これはこれはご機嫌麗しゅうございますれば……えーっと?」
「以前と同じで結構です」
「そうか、じゃあそうする。久しぶりだなフランチェスカ」
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「あれ以来ですから、3年ぶりでしょうか」
「そうだな。フランチェスカのウワサは度々聞いていたが、今の元気のいい剣の音はお前か?」
「ええ。いま新人の訓練をしていますので、その時の音でしょう」
「そうか。じゃあ俺も訓練をしてくれるか? 聖女様」
そう言ってネオは腰に下げた剣を叩き、あごで訓練場を差します。
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