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23 聖女 フランチェスカ

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「訓練、ですか? わたくしと?」

「ああ、あれからお前たちのウワサをよく聞くようになったからな、どれほどのモノか知りたいんだ」

 訓練自体は願ってもない事です。わたくしがネオクラスの実力者と戦える経験など、そうそうあるモノではありません。
 わたくしが知る一番強いのはレッド・ローズです。
 流石に勇者と比較してはいけませんが、ネオは冒険者のトップクラス。どれほどのモノなのでしょうか。

「それではお手柔らかにお願いします」

 訓練場に入ると沢山の人がわたくし達を見ています。
 聖女vsネオ。自分で言うのも変ですが、お金を取れる対決ではないでしょうか。

「さぁ、聖女様からどうぞ」

「それでは、いきます!」

 ネオ相手に小細工は通用しません。最初から全力で行きます!

 先見の明を発動し、ネオの動きを予測します。
 実物とは違うネオが動き出し、わたくしの剣を受け止めるのが見えます。
 これではダメですね、ならばこちらはどうでしょうか。
 剣を受け止められた後に魔法を使用します……く、これ以上先は見えませんか。

 ならば魔法も併用しましょう!

 実際のわたくしが剣を振り下ろすと、先見の明の通り受け止められます。
 そして間髪入れずに魔法・ファイヤアローを使用しますが、何とネロに命中と共に消滅してしまいました。

 魔法抵抗力レジストマジック……そうですか、完全無効化するとは思いませんでしたが。

 剣だけではなく、格闘技、魔法など、攻撃に仕える物全てを使いましたが、ネロには一撃も入りません。
 先見の明で近未来を見ても、どれもこれも軽くいなされてしまいます。
 このまま終わってしまうのでしょうか、そう思った時、ネオの剣がわたくしの胴を捉える未来が見えました。

「クッ!」

 攻撃の手を止めて、慌てて防御をします。
 ネロの攻撃が……見えません!! しかし剣は先見の明の通り胴体に来たため、わたくしの剣が間に合い、かろうじて攻撃を防ぐことが出来ました。

「へぇ、今のを止めるのか。今までも不思議な動きをしてたけど、勘が良いのか?」

 距離を取って剣を構えなおします。

「ええ、聖女になってからは勘が良くなりました」

「そうか。ならこういうのはどうだ?」

 ネロは剣を構えるのを止め、だらりと下にさげています。
 何をするつもりでしょうか。

飛翔鮫ひしょうざめ

 いつの間にか剣が振り上げられていました。
 いえ、すでに攻撃を終えていたのです。
 わたくしは目に見えないに吹き飛ばされ、地面を転がります。

 悲鳴をあげながら地面を転がり、何とか立ち上がった時、目の前には剣先がありました。

「……まいりました」

「お疲れ。中々楽しめたよ」

 剣を鞘にしまいましたが、ここまで勝負にならないとは思いませんでした。
 先見の明も、実力差がありすぎると役に立ちませんか。

「最後の見えない攻撃、あれは何だったのですか?」

「飛翔鮫か? 簡単な話が剣圧だ」

「剣圧……鍛錬したら、わたくしにも使えますか?」

「可能性はあるが、今のところ俺以外に出来た奴はいないな」

 それは実質無理という事ですか?
 しかし、あの技は覚えたいですね。

「お手合わせ、ありがとうございました」

「こちらこそ楽しかったよ。それに、ますますお前が欲しくなった」

「手も足も出なかったのですよ?」

「俺の剣を受け止めただろ? あれはウチのメンバーでも簡単には止められない攻撃だったんだぜ」

「そう、なのですか?」

 止めたというより、先見の明で見たから止められたのですが。
 悔しいから言わないでおきましょう。

「ああ、もしもソロになったらウチにこい。いつでも歓迎だ」

 そういって手を振りながら訓練場を出て行きました。
 ふぅ、まだまだですねわたくしも。

「さあ皆さん、いつまでも呆けていないで、訓練を開始しますよ」

 わたくし達の訓練を見ていた新人達が、口を開けたまま動かなくなっています。
 3年前なら、わたくしもああなっていたのでしょうね。
 



 この日の仕事を終え、宿に戻ると経典に祈りを捧げました。
 朝晩欠かさず祈りを捧げていますが、最近は国の安寧よりも、ロビーの無事を祈っています。
 ……1割ほどは国の為に祈っていると思います。

 聖女として1割。フランチェスカとして9割の祈りを。
 いまはこれで許してもらいましょう。
 皆、どうかご無事で。

 わたくしの祈りが通じたのかどうか、3人は順調に調査を進めていました。


 ◆◆◇◇グラストリム帝国に侵入した3人◆◆◇◇


「どうだった?」

「レッドにぃ、こっちには居なかった」

「こっちに知らない人が来てるみたい~」

 帝都に入り込んだ3人は、ロビーの行方を捜して別々に行動していた。
 慣れない土地だが、どの街にも裏ルートという物があるらしく、それをフル活用していた。
 ここでは裏の情報屋を当たっている。

 情報屋によると、帝都に入る際、登録されていない人物が確認されたらしい。
 だがロビーかどうかまでは分からない。
 今からその人物を確認しに行くところだ。
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