【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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27 ロビー 抜け穴

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 馬車の後姿を捉え、3人は走る速度を上げる。
 先ほどは7人のならず者に襲われたが、流石にこれ以上襲ってくる気配はない。
 
「あん中にロビーいるかな?」

「いたらいいね~」

「いなかったら、また1から調べ直しだ」

 調べ直しと言っても、すでにこれ以外の手掛かりはなく、調査は暗礁に乗り上げてしまう。
 だから居ると願ってやまない。

「止めるね~。スラッジ・ポンド!」

 ケイが魔法を唱えると、馬車の進行方向の通路に水がしみ出し、ぬかるみになった。
 走っていた馬が足を取られ、馬車も車輪がぬかるみにとられ、その場から動けなくなる。
 すると馬車から1人が逃げ出した。おそらく御者だろう。

「逃がすか!」

 レッドがナイフを投げると足に刺さり、御者の男はその場に転んでしまう。
 そのまま顔面を殴りつけ、意識を奪って手足を縛る。

 馬車の後ろ側の幌を開けると、中には沢山の荷物が積まれている。
 だが人影はない。

「まさかハズレとかじゃねーよな」

「マット~、ロビーが入れそうな積み荷を開けていって~」

「ああそっか。わかった」

 名前を呼びながら、手当たり次第に積み荷を開けていく。

「ロビー、どこだロビー? 返事しないと勢い余って剣で刺しちまうかもよ?」

「喋れないか、眠らされていたらどうするつもりだ?」

「あ、いっけね、考えてなかった。ロビー、喋らなくてもいいぞー」

 少しだけ丁寧に積み荷を調べるようになった。
 箱を破壊し、布を破り、順番に調べていくと、大きな酒樽の中でロビーは眠っていた。

「ロビー見つけたよ~」

「お、どこだどこだ? やっべ本当に眠ってた」

「よし、樽から出すぞ」

 ゆっくりと酒樽を横にして、ぶつけないように丁寧に引っ張り出す。
 手足が縛られ口は布で縛られている。
 順番にほどいて行くと、ロビーが唸り声をあげた。

「う……今度は何を……ああ、おはよう」

 3人の顔を見て安心したのか、また眠りそうになるロビー。

「おおっと、流石にお前をおぶって運ぶのは大変なんだ、起きていてくれ」

「はは、そっか、体が大きいと、こういう時不便だね」

 しかし立とうにも手足がしびれているため立てず、しばらくはマッサージをしていた。



「主犯格の顔みたか?」

 馬車をぬかるみからだし、誘拐犯の馬車に乗って出口を目指していた。
 レッドが御者をして、マットとケイはロビーの手足をほぐしている。

「いや、恐らくは下っ端だろう。背が低くてスキンヘッドの男と、フードをかぶった男だったよ」

「それはきっと、最初の部屋にいた人たちね~」

 地下に入ってすぐの部屋、扉を蹴破って入った場所にいた男2人だろう。
 それ以外の誘拐犯でいえば、ロビーよりも戦った3人の方が詳しいくらいだ。

「誘拐犯はどうして僕をさらったの? まさかと思うけど、フランが関係してる?」

 フランチェスカ宛の手紙に書かれていた通りなら、グラストリム帝国が聖女を手に入れるため、ロビーを誘拐したという事になる。
 しかし誰が出した手紙なのか分からない上、誘拐犯たちも下っ端なため手掛かりがない。
 ロビーにも、その手紙の話をしている。

「そうか、そんな事があったんだね。ごめん、僕が油断したばっかりに、みんなに迷惑をかけちゃったね」

 頭を下げるロビーだが、誰もその事を咎める者はいない。

「悪いのは誘拐犯と主犯格だ。ロビーが謝る事ではないな」

「そうだぜ! お前が掴まったって事は、それなりの手練れだったんだろ? 他の奴でも掴まってるって!」

「そうだよ~、こうやって無事だったんだし、フランも喜ぶよ~」

「フラン……フランは怒って無かったかい?」

 ロビーの的外れな心配に、3人は首をかしげた。

「一番心配していたのはフランだがな。おっと、そろそろ出口だ、警戒しろ」

 通路の先が明るくなってきた。
 地下道が終わり地上に出るのだろうか。
 ロビーはマットから予備の剣を受け取り、それぞれが警戒をする中、馬車は地下通路を抜けた。
 
 抜けた先は森の中だった。
 どうやら街を抜けて、近くの山の中に出た様だ。

「抜け道か? 街は一体どこにある」

「あ、あそこ~」

 ケイが指さした先、木々の隙間から城壁に囲まれた街が見える。
 スラムは街の外周付近にあるとはいえ、街からかなり離れている。
 これだけの距離の穴を掘るのに、個人や小さな組織が出来るとは考えにくい。
 さらにこの通路の利用方法を考えると……。

「国が関係しているね」

「やはりそうなるか。という事は、予想通りデイヴィット王太子関係か?」

「いけすかねー女も一緒にいたけどな」

「フランを睨んでたね~」

 3年前にデイヴィット王太子がサザンクロス聖国に来た際、女性が一緒に居たのを覚えていた。
 当時はあまり気にしていなかったが、身なりからすると上級貴族かそれ以上。
 今回の件にどれだけ関係しているかは分からないが、無関係ではないだろう。

「それよりも今は、早くサザンクロス聖国に戻りたいよ」

「そうだな。馬車もある事だし、このままサザンクロスに戻るとしよう」

 誘拐騒動は一旦の幕を閉じた。
 しかし相手の目的が聖女フランチェスカである以上は、さらなる問題が起こるのを防ぐことは出来ない。
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