26 / 73
26 地下通路 馬車
しおりを挟む
地面の一部が下に降り、坂道になった。
かなり深そうだが、やっとつかんだ手掛かりを見逃す訳にはいかない。
中は暗く足元すら見えないが、ケイの魔法で仄かな光を出して周囲を照らす。
坂を降りて中に入ると、地下通路は人の手で掘られたらしく、スコップの跡があちこちに残っている。
警戒しながら進むと、降りていた坂が元に戻り、完全に日の光が入らなくなった。
地下通路は音が響くため、侵入者が居たらすぐに見つかってしまいそうだ。
しかし3人の足音がしない。魔法で音を消しているのだろう。
口を開かずに手で合図をし合い、ゆっくりと進んでいくと扉が見えてきた。
レッドが扉の前に静かに立つと、扉に耳を当てる。
何やら声がするが、何を言っているのかまでは分からない。
手で合図をすると、マットは扉の前で剣を構え、ケイは魔法で音もなく鍵を外した。
そして何やら魔法を唱え始める。
ケイの準備が出来たのか、レッドに向かって首を縦に振る。
レッドも剣を抜き、扉を力いっぱい蹴り開けた!
と同時にマットが大声を上げて殴り込み、ケイの魔法が発動し、室内には風が吹き荒れた。
「うわ! な、なんだ!?」
「侵入者だ! くそっ! 何だこの風は、火が消えて何も見えねぇ!」
吹き荒れる風で部屋の中はごった返し、中にいた者達には何が起こっているのか理解が追いつかない。
だが暗い場所にいたレッドとマットには全てが見えていた。
冷静に剣の柄を腹に当て2人の意識を奪い、他にも人が居ないか捜索を始める。
その間にケイが意識のない2人をロープで縛り、捜索に参加する。
「馬車が無いな。すでに移動したか?」
どうやら2人以外に人影はなく、部屋も無い様だ。
「じゃあこいつらは犯人じゃねーって事か。しくったかな」
「そうでもないよ~、ここの壁、隠し扉になってる~」
棚や荷物がたくさん置いてある壁に、よく見ると隙間がある。
太陽の下でなら簡単に見つけられるだろうが、薄暗い洞窟の中で見つけるのは至難の業だ。
棚や荷物をどかして岩の様な扉を押すと、馬車が通れそうなほどに広い通路が現れた。
「行くぞ」
レッドの合図で通路を走っていく。相変わらず足音はしていない。
しばらく走ると先から音が聞こえてくる。
「馬車の音じゃねーか?」
「急いでる訳ではないな。俺達が来たから逃げたわけでは無い様だ」
「じゃあ間一髪で間に合ったんだね~」
本当に間一髪だった。3人が地下に入る少し前に馬車は移動を開始したのだ。
だが、残念ながら相手もプロだった。
走る速度を上げる3人に、左右からいくつもの剣が襲い掛かった。
完全に気配を絶っていたため、通路の脇に隠れているのに気が付かなかったのだ。
レッドは何とかかわせたが、マットとケイは腕や胴体に傷を負ってしまう。
「うわっ! なんだこいつ等! 一体どこに隠れてやがったんだ!?」
悲鳴を上げると同時にに剣を構えて立ち上がる。怪我をしても直ぐに体制を立て直すのは、経験と鍛錬のお陰だろう。
血は流れているが、傷は深く無い様だ。
立ち止まった3人を囲むように、前後から人が現れる。
前に4人、背後に3人。倍以上の人数だ。
全員が剣を持ち、恐らくは一般市民を装っているのだろうが……あまりに目つきが悪く、いやらしい笑い顔だ。
「大丈夫か2人とも」
「すまねぇレッド兄、傷は大した事ねーよ」
「私も大丈夫だよ~」
囲まれてしまったが、あまり緊張はしていない様だ。
倍の人数を、一体どうするつもりなのだろうか。
武器を構えて前を見ると、前方の4人も武器を構える。そしてどうやら背後の3人はニヤケているだけの様だ。
レッド達は姿勢を少し低くし、後ろに向かってダッジュした。
不意を突かれた背後の3人は、慌てて剣を振り回すが当たるはずもなく、胸や腹を一突きにされ動かなくなる。
もう一人は魔法で燃やされていた。
「こっ! この野郎!!」
慌てて4人が襲い掛かるが、3人はすでに迎撃態勢を整えている。
1人多いくらいでは……相手にならなかった。
4人の内2人の足元に小さな穴が開き、足を取られて地面に転がる。それに気を取られた2人はレッドとマットに首を落とされ、地面に転んだ2人は……地面から突き出した鋭い棘に串刺しになっていた。
「馬車を逃がすな!」
思わぬことで時間を食ったが、まだ馬車が走る音がする。遠くへは行っていない様だ。
さっきよりも速度をあげて走ると、前方に馬車が見えてきた。
「見つけたぜ!」
かなり深そうだが、やっとつかんだ手掛かりを見逃す訳にはいかない。
中は暗く足元すら見えないが、ケイの魔法で仄かな光を出して周囲を照らす。
坂を降りて中に入ると、地下通路は人の手で掘られたらしく、スコップの跡があちこちに残っている。
警戒しながら進むと、降りていた坂が元に戻り、完全に日の光が入らなくなった。
地下通路は音が響くため、侵入者が居たらすぐに見つかってしまいそうだ。
しかし3人の足音がしない。魔法で音を消しているのだろう。
口を開かずに手で合図をし合い、ゆっくりと進んでいくと扉が見えてきた。
レッドが扉の前に静かに立つと、扉に耳を当てる。
何やら声がするが、何を言っているのかまでは分からない。
手で合図をすると、マットは扉の前で剣を構え、ケイは魔法で音もなく鍵を外した。
そして何やら魔法を唱え始める。
ケイの準備が出来たのか、レッドに向かって首を縦に振る。
レッドも剣を抜き、扉を力いっぱい蹴り開けた!
と同時にマットが大声を上げて殴り込み、ケイの魔法が発動し、室内には風が吹き荒れた。
「うわ! な、なんだ!?」
「侵入者だ! くそっ! 何だこの風は、火が消えて何も見えねぇ!」
吹き荒れる風で部屋の中はごった返し、中にいた者達には何が起こっているのか理解が追いつかない。
だが暗い場所にいたレッドとマットには全てが見えていた。
冷静に剣の柄を腹に当て2人の意識を奪い、他にも人が居ないか捜索を始める。
その間にケイが意識のない2人をロープで縛り、捜索に参加する。
「馬車が無いな。すでに移動したか?」
どうやら2人以外に人影はなく、部屋も無い様だ。
「じゃあこいつらは犯人じゃねーって事か。しくったかな」
「そうでもないよ~、ここの壁、隠し扉になってる~」
棚や荷物がたくさん置いてある壁に、よく見ると隙間がある。
太陽の下でなら簡単に見つけられるだろうが、薄暗い洞窟の中で見つけるのは至難の業だ。
棚や荷物をどかして岩の様な扉を押すと、馬車が通れそうなほどに広い通路が現れた。
「行くぞ」
レッドの合図で通路を走っていく。相変わらず足音はしていない。
しばらく走ると先から音が聞こえてくる。
「馬車の音じゃねーか?」
「急いでる訳ではないな。俺達が来たから逃げたわけでは無い様だ」
「じゃあ間一髪で間に合ったんだね~」
本当に間一髪だった。3人が地下に入る少し前に馬車は移動を開始したのだ。
だが、残念ながら相手もプロだった。
走る速度を上げる3人に、左右からいくつもの剣が襲い掛かった。
完全に気配を絶っていたため、通路の脇に隠れているのに気が付かなかったのだ。
レッドは何とかかわせたが、マットとケイは腕や胴体に傷を負ってしまう。
「うわっ! なんだこいつ等! 一体どこに隠れてやがったんだ!?」
悲鳴を上げると同時にに剣を構えて立ち上がる。怪我をしても直ぐに体制を立て直すのは、経験と鍛錬のお陰だろう。
血は流れているが、傷は深く無い様だ。
立ち止まった3人を囲むように、前後から人が現れる。
前に4人、背後に3人。倍以上の人数だ。
全員が剣を持ち、恐らくは一般市民を装っているのだろうが……あまりに目つきが悪く、いやらしい笑い顔だ。
「大丈夫か2人とも」
「すまねぇレッド兄、傷は大した事ねーよ」
「私も大丈夫だよ~」
囲まれてしまったが、あまり緊張はしていない様だ。
倍の人数を、一体どうするつもりなのだろうか。
武器を構えて前を見ると、前方の4人も武器を構える。そしてどうやら背後の3人はニヤケているだけの様だ。
レッド達は姿勢を少し低くし、後ろに向かってダッジュした。
不意を突かれた背後の3人は、慌てて剣を振り回すが当たるはずもなく、胸や腹を一突きにされ動かなくなる。
もう一人は魔法で燃やされていた。
「こっ! この野郎!!」
慌てて4人が襲い掛かるが、3人はすでに迎撃態勢を整えている。
1人多いくらいでは……相手にならなかった。
4人の内2人の足元に小さな穴が開き、足を取られて地面に転がる。それに気を取られた2人はレッドとマットに首を落とされ、地面に転んだ2人は……地面から突き出した鋭い棘に串刺しになっていた。
「馬車を逃がすな!」
思わぬことで時間を食ったが、まだ馬車が走る音がする。遠くへは行っていない様だ。
さっきよりも速度をあげて走ると、前方に馬車が見えてきた。
「見つけたぜ!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
追放されたヒロインですが、今はカフェ店長してます〜元婚約者が毎日通ってくるのやめてください〜
タマ マコト
ファンタジー
王国一の聖女リリアは、婚約者である勇者レオンから突然「裏切り者」と断罪され、婚約も職も失う。理由は曖昧、けれど涙は出ない。
静かに城を去ったリリアは、旅の果てに港町へ辿り着き、心機一転カフェを開くことを決意。
古びた店を修理しながら、元盗賊のスイーツ職人エマ、謎多き魔族の青年バルドと出会い、少しずつ新しい居場所を作っていく。
「もう誰かの聖女じゃなくていい。今度は、私が笑える毎日を作るんだ」
──追放された聖女の“第二の人生”が、カフェの湯気とともに静かに始まる。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
悪役令嬢は伝説だったようです
バイオベース
恋愛
「彼女こそが聖女様の生まれ変わり」
王太子ヴァレールはそう高らかに宣言し、侯爵令嬢ティアーヌに婚約破棄を言い渡した。
聖女の生まれ変わりという、伝説の治癒魔術を使う平民の少女を抱きながら。
しかしそれを見るティアーヌの目は冷ややかだった。
(それ、私なんですけど……)
200年前に国を救い、伝説となった『聖女さま』。
ティアーヌこそがその転生者だったのだが。
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる