無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第六十話

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「私と結婚してください」

 お城で再開した褐色肌の男性が私にプロポーズしてきました。
 結婚? 結婚って私と結婚するって事? どうして?

「あの、私はあなたが誰かも知らないのに、結婚は出来ないと思います」

「ああっ! これは失礼しました」

 男性は立ち上がり、改めて自己紹介をしてくれます。

「私はプレアデス教国きょうこくの大司教、エクシーガと申します。本日はエルグランド国王陛下へいかとの面会でこちらに来ました」

 プレアデス教国ってエルグランド王国とは離れた場所にある国だわ。
 確かヴィヴィオという神を信仰していて、宗教のトップである教皇が国を運営する宗教国家のはず。
 確かエルグランド王国にもヴィヴィオ教があるから、お仕事で来ていたのかしら。

「これはご丁寧にありがとうございます。私はシルビアと申します」

「ええ存じております。付き添いの者から聞きました」

 ああそうか、大司教様の付き添いとは挨拶をしたもの。
 えっと、そうそう、なんで結婚なんて話がでてるのか、よね。

「それでどうして結婚なんて話がでたのでしょうか?」

「あの時助けられた時のことが忘れられないのです。まるでヴィヴィオ神にも勝る女神様が降臨したのかと」

「め、女神様⁉」

 そ、そう言われたら悪い気はしないけど、だからといって結婚はちょっとね。
 少し照れてしまい俯きました。
 するとすぐ近くの部屋から人が出てきます。

「お二方、騒々しいですぞ」

 白髪の老人、でも姿勢が良くて目つきが怖い人、執事さんかしら? に叱られてしまいました。
 いけない私ったら、お城の廊下で何やってるのかしら。

「し、失礼しました! お騒がせして申し訳ありません」

「こちらも失礼しました。命の恩人に会えたので興奮してしまいました」

「その事ですが、陛下へいかが話を聞きたいとおっしゃっております。どうぞ」

 執事さんが部屋に入るように促します。
 あ、そこが執務室だったのね。

 部屋に入ると奥の豪華な机には陛下が座っており、すぐ隣には王妃様、机の両脇には王子王女達が並んでいた。
 お、おお、久しぶりだわこの圧巻な風景。
 っと、リック……セドリック様もいらっしゃるけど、服装が王族っぽくないわね。

「お久しぶりでございます陛下へいか。お呼びによりシルビア、参上いたしました」

 スカートをつまんで挨拶をすると、陛下へいかはニヤニヤした顔で私を見ています。
 えっと、廊下での話が聞えていたのよね? 女にあるまじき行為に失望していないかしら。

「久しいな。お前の話は聞いているが、命の恩人とはどういう事だ?」

「はい、それですが」

 私は数日前の川での話をしました。
 陛下へいかと王妃様は笑って話を聞き、セドリック様とリーフ様は頭を抑え、他の方々は口に手を当てて笑いをこらえています。
 お、お転婆って範囲で見逃してくれないかしら。

「シルビア……久しぶりに会えて嬉しいけど……どうして君はいつも……」

 リック様が呆れた顔をしている!!
 まって、待ってください、あの場で出来る事を最大限やっただけなんです!

「でも……君らしいね」

 ほっ、ようやく微笑んでくれました。
 長男のグロリア様が笑い終わったのか、咳払いをしてたずねてきた。

「それでシルビア、君はどうしてそんな方法を知っているんだ? 軍人なら救助などで使うロープハーネスだが、一般には知られていないはずだ」

「以前仕えていた男爵家で、壊れた外壁の修理をするのに必要で覚えました」

「……外壁?」

「はい。屋上からロープを垂らして、こう、スルスル~っと降りて直していました」

 屋上から降りる動きをすると、グロリア様は大声で笑いだします。
 そ、そんなにおかしなことだったかしら??

「はー面白い。父上、シルビアを軍に入れませんか? 他の情報と合わせて面白い反応が見れるかもしれませんよ?」

「それはそれで面白そうだが、廊下での話が気になる所だ。特にセドリック辺りがな」

 そう言って陛下へいかはセドリック様を見ます。
 セドリック様は……怒ってる!?!?

「シルビア……その男と……け、ケッ!! ケッ!! コン、する……の?」

「はい! 私とシルビアは結婚します!」

 なぜかエクシール大司教が答えました。
 ああっ! セドリック様の顔が真っ赤になってるわ! 友人として勝手に決められた事を私の代りに怒ってくれているのね。

「シルビア……?」

「もちろん初めて聞きましたので、結婚はしません。ありがとうございます、私の代りに怒って下さって」

 エクシール大司教はうな垂れていますが、セドリック様は元気になりました。
 本当にセドリック様にはお世話になりっぱなしですね。
 ニヤけた顔で見ていた陛下へいかが指で机をたたくと、周りは一斉に静かになります。

「セドリック、お前の気持ちはわかるが、残念ながらシルビアはプレアデス教国へ向かわせなければならんようだ」

「……約束は知っています……しかしシルビアは……部外者です」

「え? まさか今度はエクシール大司教に嫁げという命令ですか!?」

「違う! ……違うよシルビア……プレアデス教国との約束で……人員を派遣するんだ」

「そうだ。そして人員の選定はエクシール大司教に任せてある。プレアデス教国とエルグランド王国の友好のためにな」

「つまり、友好の使節に私が選ばれた、という事でしょうか?」

「そうですシルビアさん。私はあなたに来て欲しいのです」

「……もちろん……結婚なんて……しなくていい」

 なんだか話が飛び過ぎて理解が追いつかないわ。
 ただ陛下へいかがそうおっしゃったのなら、私は行かないといけないのでしょうね。
 プレアデス教国……どんな所なのかしら。
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