無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第六十一話

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 執務室を出て、私とエクシーガ大司教は別室へと案内されました。
 応接室かしら、お城の中だから凄く豪華だけど。

「さあシルビア、まずは君に説明をしないといかんな」

 王太子のグロリア様が上座にある二人掛けソファーの左側に座ると、体格が良いのでソファーが音を立てて沈みます。
 その横に次女のステージア様が座ると、左右前方に並べられた長いソファーにリック様が座ります。
 私はリック様に手招きされたので隣に座ると、五女のリーフ様が間に割り込みます。
 エクシーガ大司教は向かいの長いソファーに一人で座ります。

「プレアデス教国きょうこくの新教皇に、アルシオーネ八世が就任する事になった。だからこちらからお祝いの使節団を送る事になった」

「そうでしたか。しかしそれは王族や貴族が行くべきなのではありませんか?」

「もちろん王族・貴族からも人を送る。だが使節団にはもう一つの役割があってな、プレアデス教国きょうこくにエルグランド王国の文化を伝えるんだ」

 エルグランド王国の文化を伝える? それはいわゆる文化交流という奴かしら。
 であればプレアデス教国きょうこくからも人が来るの?
 だとしても私じゃ意味がないんじゃないかしら。

「それならば余計に私である必要性がわかりません」

「そうでもない。お前はあちこちの領地に行っているし、その土地の文化を知っているはずだ。料理も出来ると聞いている」

「た、確かにそうですが」

「そして何より、人員の選択権はエクシーガ大司教に一任されている」

 私は正面に座るエクシーガ大司教を見ます。
 それは公私混同ではありませんか? 私に結婚を申し込んだから、それを断れないようにするために選んだのでしょう?
 怪訝そうな顔でエクシーガ様を見ていると、ステージア様次女が元気な声を上げます

「シルビア、あんたの警戒ももっともや。エクシーガ大司教はんは公私混同しとるわけやし、このままついて行ったら無理やり結婚させられる、そう思っとるんやろ?」

「……その通りです」

「私との結婚が嫌なのか!? 私は将来の教皇候補だよ!?」

「おま……大司教は少し……黙っていて欲しい……」

「その件については安心しや~。あんたの身柄はウチらエルグランド王家が持っとるんや。こちらの意を無視した場合は……どうなるかわかっとるよね?」

「え? シルビアは王族なんですか?」

「違うわよ! こんな奴が私達の家族なわけないでしょ! ステージアお姉様! こんな奴はさっさとプレアデスに売ってしまえばいいんです!」

 大人しかったリーフ様が私を指さして凄いことを言ってます。
 しかしグロリア様とステージア様は何も言いません。
 代わりに口を開いたのはセドリック様。

「リーフ……それは僕を売っても構わない……そう言っているんだよ?」

「ひぇえ!? な、なんでですか! セドリックお兄様は大切な家族です!」

 なるほど、そういうレベルの話なんですね。
 だとしたら、たとえ私がエクシーガ大司教と結婚したいと言っても、王族の許可が無いと不可能、という事です。
 身元保証人が王族というのは心強いですが、反面恐ろしいですね。

「文化を伝える事は理解しました。今の私に拒否権が無いことも。任期はどれくらいになりますか?」

「一年だ。王族からは末のローレルを向かわせるから、一緒に行くといい」

 ローレル様……一番末の六女ね。
 以前お会いした時は、年齢に相応しくない大人っぽさがあったわ。

「かしこまりました。出発はいつになりますか?」

「一週間後だ。それまでは城内に部屋を用意するからゆっくりするといい」

 部屋を出るとエクシーガ大司教が私の隣に立とうとしますが、それを遮るようにセドリック様が私の隣に立ちます。

「エクシーガ大司教……少しは分別を付けて欲しい……」

「し、しかし私はシルビアの事を」

「諦めろとは言わない……しかし嫌がる女性を無理やり手に入れようとするなら……僕が許さない」

 流石に王子にここまで言われては手出しができないようで、エクシーガ様はガックリと肩を落として去っていきました。

「ありがとうございますリック様。助けていただいてばかりですね」

「気にしてない……シルビアは……エクシーガ大司教の事……どう思ってる?」

「エクシーガ大司教ですか? 増水した川から犬を助けた優しい人、でしょうか」

「……ふ、フフフ……そう、そうだね」

 リック様はご機嫌なのか口を押えて笑っています。
 私、おかしなことを言ったかしら。

 その後は何とプリメラやアベニール様がお城に来ているそうなので、久しぶりにみんなで会って話をしました。
 リック様やアベニール様が一緒なので、お城の庭を散歩しています。
 久しぶりに会うプリメラはとても綺麗になっていました。
 以前から綺麗でしたが、今日は随分とおめかししています。

「実はねシルビア、ワタクシ……結婚するのよ」

「本当ですかプリメラ! おめでとうございます!」

「ふふ、ありがとう。あなたも式に来てちょうだい」

「もちろんです! ウェディングドレスを着たプリメラは、一体どれだけ綺麗なんでしょう」

 そうですか、遂にプリメラが結婚ですか。
 プリメラ程の器量良しなら遅いくらいですね。

「まだ婚約期間だし、式は再来年になるわ。あなたがプレアデス教国《きょうこく》から戻って来てからね」

「戻ってからの楽しみが出来ました。それまでにプレゼントを考えておきますね」
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