61 / 139
第六十一話
しおりを挟む
執務室を出て、私とエクシーガ大司教は別室へと案内されました。
応接室かしら、お城の中だから凄く豪華だけど。
「さあシルビア、まずは君に説明をしないといかんな」
王太子のグロリア様が上座にある二人掛けソファーの左側に座ると、体格が良いのでソファーが音を立てて沈みます。
その横に次女のステージア様が座ると、左右前方に並べられた長いソファーにリック様が座ります。
私はリック様に手招きされたので隣に座ると、五女のリーフ様が間に割り込みます。
エクシーガ大司教は向かいの長いソファーに一人で座ります。
「プレアデス教国の新教皇に、アルシオーネ八世が就任する事になった。だからこちらからお祝いの使節団を送る事になった」
「そうでしたか。しかしそれは王族や貴族が行くべきなのではありませんか?」
「もちろん王族・貴族からも人を送る。だが使節団にはもう一つの役割があってな、プレアデス教国にエルグランド王国の文化を伝えるんだ」
エルグランド王国の文化を伝える? それはいわゆる文化交流という奴かしら。
であればプレアデス教国からも人が来るの?
だとしても私じゃ意味がないんじゃないかしら。
「それならば余計に私である必要性がわかりません」
「そうでもない。お前はあちこちの領地に行っているし、その土地の文化を知っているはずだ。料理も出来ると聞いている」
「た、確かにそうですが」
「そして何より、人員の選択権はエクシーガ大司教に一任されている」
私は正面に座るエクシーガ大司教を見ます。
それは公私混同ではありませんか? 私に結婚を申し込んだから、それを断れないようにするために選んだのでしょう?
怪訝そうな顔でエクシーガ様を見ていると、ステージア様が元気な声を上げます
「シルビア、あんたの警戒ももっともや。エクシーガ大司教はんは公私混同しとるわけやし、このままついて行ったら無理やり結婚させられる、そう思っとるんやろ?」
「……その通りです」
「私との結婚が嫌なのか!? 私は将来の教皇候補だよ!?」
「おま……大司教は少し……黙っていて欲しい……」
「その件については安心しや~。あんたの身柄はウチらエルグランド王家が持っとるんや。こちらの意を無視した場合は……どうなるかわかっとるよね?」
「え? シルビアは王族なんですか?」
「違うわよ! こんな奴が私達の家族なわけないでしょ! ステージアお姉様! こんな奴はさっさとプレアデスに売ってしまえばいいんです!」
大人しかったリーフ様が私を指さして凄いことを言ってます。
しかしグロリア様とステージア様は何も言いません。
代わりに口を開いたのはセドリック様。
「リーフ……それは僕を売っても構わない……そう言っているんだよ?」
「ひぇえ!? な、なんでですか! セドリックお兄様は大切な家族です!」
なるほど、そういうレベルの話なんですね。
だとしたら、たとえ私がエクシーガ大司教と結婚したいと言っても、王族の許可が無いと不可能、という事です。
身元保証人が王族というのは心強いですが、反面恐ろしいですね。
「文化を伝える事は理解しました。今の私に拒否権が無いことも。任期はどれくらいになりますか?」
「一年だ。王族からは末のローレルを向かわせるから、一緒に行くといい」
ローレル様……一番末の六女ね。
以前お会いした時は、年齢に相応しくない大人っぽさがあったわ。
「かしこまりました。出発はいつになりますか?」
「一週間後だ。それまでは城内に部屋を用意するからゆっくりするといい」
部屋を出るとエクシーガ大司教が私の隣に立とうとしますが、それを遮るようにセドリック様が私の隣に立ちます。
「エクシーガ大司教……少しは分別を付けて欲しい……」
「し、しかし私はシルビアの事を」
「諦めろとは言わない……しかし嫌がる女性を無理やり手に入れようとするなら……僕が許さない」
流石に王子にここまで言われては手出しができないようで、エクシーガ様はガックリと肩を落として去っていきました。
「ありがとうございますリック様。助けていただいてばかりですね」
「気にしてない……シルビアは……エクシーガ大司教の事……どう思ってる?」
「エクシーガ大司教ですか? 増水した川から犬を助けた優しい人、でしょうか」
「……ふ、フフフ……そう、そうだね」
リック様はご機嫌なのか口を押えて笑っています。
私、おかしなことを言ったかしら。
その後は何とプリメラやアベニール様がお城に来ているそうなので、久しぶりにみんなで会って話をしました。
リック様やアベニール様が一緒なので、お城の庭を散歩しています。
久しぶりに会うプリメラはとても綺麗になっていました。
以前から綺麗でしたが、今日は随分とおめかししています。
「実はねシルビア、ワタクシ……結婚するのよ」
「本当ですかプリメラ! おめでとうございます!」
「ふふ、ありがとう。あなたも式に来てちょうだい」
「もちろんです! ウェディングドレスを着たプリメラは、一体どれだけ綺麗なんでしょう」
そうですか、遂にプリメラが結婚ですか。
プリメラ程の器量良しなら遅いくらいですね。
「まだ婚約期間だし、式は再来年になるわ。あなたがプレアデス教国《きょうこく》から戻って来てからね」
「戻ってからの楽しみが出来ました。それまでにプレゼントを考えておきますね」
応接室かしら、お城の中だから凄く豪華だけど。
「さあシルビア、まずは君に説明をしないといかんな」
王太子のグロリア様が上座にある二人掛けソファーの左側に座ると、体格が良いのでソファーが音を立てて沈みます。
その横に次女のステージア様が座ると、左右前方に並べられた長いソファーにリック様が座ります。
私はリック様に手招きされたので隣に座ると、五女のリーフ様が間に割り込みます。
エクシーガ大司教は向かいの長いソファーに一人で座ります。
「プレアデス教国の新教皇に、アルシオーネ八世が就任する事になった。だからこちらからお祝いの使節団を送る事になった」
「そうでしたか。しかしそれは王族や貴族が行くべきなのではありませんか?」
「もちろん王族・貴族からも人を送る。だが使節団にはもう一つの役割があってな、プレアデス教国にエルグランド王国の文化を伝えるんだ」
エルグランド王国の文化を伝える? それはいわゆる文化交流という奴かしら。
であればプレアデス教国からも人が来るの?
だとしても私じゃ意味がないんじゃないかしら。
「それならば余計に私である必要性がわかりません」
「そうでもない。お前はあちこちの領地に行っているし、その土地の文化を知っているはずだ。料理も出来ると聞いている」
「た、確かにそうですが」
「そして何より、人員の選択権はエクシーガ大司教に一任されている」
私は正面に座るエクシーガ大司教を見ます。
それは公私混同ではありませんか? 私に結婚を申し込んだから、それを断れないようにするために選んだのでしょう?
怪訝そうな顔でエクシーガ様を見ていると、ステージア様が元気な声を上げます
「シルビア、あんたの警戒ももっともや。エクシーガ大司教はんは公私混同しとるわけやし、このままついて行ったら無理やり結婚させられる、そう思っとるんやろ?」
「……その通りです」
「私との結婚が嫌なのか!? 私は将来の教皇候補だよ!?」
「おま……大司教は少し……黙っていて欲しい……」
「その件については安心しや~。あんたの身柄はウチらエルグランド王家が持っとるんや。こちらの意を無視した場合は……どうなるかわかっとるよね?」
「え? シルビアは王族なんですか?」
「違うわよ! こんな奴が私達の家族なわけないでしょ! ステージアお姉様! こんな奴はさっさとプレアデスに売ってしまえばいいんです!」
大人しかったリーフ様が私を指さして凄いことを言ってます。
しかしグロリア様とステージア様は何も言いません。
代わりに口を開いたのはセドリック様。
「リーフ……それは僕を売っても構わない……そう言っているんだよ?」
「ひぇえ!? な、なんでですか! セドリックお兄様は大切な家族です!」
なるほど、そういうレベルの話なんですね。
だとしたら、たとえ私がエクシーガ大司教と結婚したいと言っても、王族の許可が無いと不可能、という事です。
身元保証人が王族というのは心強いですが、反面恐ろしいですね。
「文化を伝える事は理解しました。今の私に拒否権が無いことも。任期はどれくらいになりますか?」
「一年だ。王族からは末のローレルを向かわせるから、一緒に行くといい」
ローレル様……一番末の六女ね。
以前お会いした時は、年齢に相応しくない大人っぽさがあったわ。
「かしこまりました。出発はいつになりますか?」
「一週間後だ。それまでは城内に部屋を用意するからゆっくりするといい」
部屋を出るとエクシーガ大司教が私の隣に立とうとしますが、それを遮るようにセドリック様が私の隣に立ちます。
「エクシーガ大司教……少しは分別を付けて欲しい……」
「し、しかし私はシルビアの事を」
「諦めろとは言わない……しかし嫌がる女性を無理やり手に入れようとするなら……僕が許さない」
流石に王子にここまで言われては手出しができないようで、エクシーガ様はガックリと肩を落として去っていきました。
「ありがとうございますリック様。助けていただいてばかりですね」
「気にしてない……シルビアは……エクシーガ大司教の事……どう思ってる?」
「エクシーガ大司教ですか? 増水した川から犬を助けた優しい人、でしょうか」
「……ふ、フフフ……そう、そうだね」
リック様はご機嫌なのか口を押えて笑っています。
私、おかしなことを言ったかしら。
その後は何とプリメラやアベニール様がお城に来ているそうなので、久しぶりにみんなで会って話をしました。
リック様やアベニール様が一緒なので、お城の庭を散歩しています。
久しぶりに会うプリメラはとても綺麗になっていました。
以前から綺麗でしたが、今日は随分とおめかししています。
「実はねシルビア、ワタクシ……結婚するのよ」
「本当ですかプリメラ! おめでとうございます!」
「ふふ、ありがとう。あなたも式に来てちょうだい」
「もちろんです! ウェディングドレスを着たプリメラは、一体どれだけ綺麗なんでしょう」
そうですか、遂にプリメラが結婚ですか。
プリメラ程の器量良しなら遅いくらいですね。
「まだ婚約期間だし、式は再来年になるわ。あなたがプレアデス教国《きょうこく》から戻って来てからね」
「戻ってからの楽しみが出来ました。それまでにプレゼントを考えておきますね」
628
あなたにおすすめの小説
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる