フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
27 / 318

初恋は

しおりを挟む
 27 初恋は

 ゼランドさんに紹介してもらった鍛冶屋に行くには、今からだとちょっと遅い時間になってしまうし、何よりも僕の頭の中は醤油と味噌のことでいっぱいだった。とにかく早く帰って料理がしたい。

 ゼランドさんの商会は公衆浴場からほど近い、中央寄りにあった。市場はもっと南門に近い。歩く距離は増えてしまうけど、フェルにお願いして、先に市場で食材を買わせてもらうことにした。

「ずいぶん嬉しそうだな。ケイ。見てるとこちらまで楽しくなってくるぞ」

 道中フェルが僕に話しかけてくる。頭ひとつ分背が高いから少し見上げた感じになる。

「ずっと手に入れたいって思ってた物だからね。こんなに早く見つけられるとは思わなかったよ。ごめんね。お金けっこう使っちゃって」

「なに、私は全く構わないぞ。ケイはもっと自分のためにお金を使ってもいいのだ」

「それはフェルも同じでしょ。まあ僕たち貧乏だからねー」

 そう言ってフェルも僕も顔を歪ませる。

「それに、その醤油とかいうものを使って美味しいものをまた作ってくれるのだろう?今から楽しみだ」

「そうだよ。僕の故郷の料理を作ってあげるから楽しみにしてて」

「故郷?ケイはあの村の生まれではないのか?」

「ごめん。間違えた。じいちゃんの故郷だよ。じいちゃん遠くの東の国の生まれなんだ」

「そうか、それでゼン殿もケイもこの辺ではあまり見ない黒髪なのだな。昔、一度だけ東の国から来た剣士を見たことがある。その者もケイやゼン殿と同じ黒髪だった。当時の騎士団長と王の御前で試合をしたのだ。私は遠くからしか見られなかったが、それは見事な腕前だったな。東の国ではこんな剣士がゴロゴロいるんだなと、当時10歳の私はその剣士に憧れたものだ」

「へー。もしかしてフェルの初恋の人?」

「そ、そんなわけあるか!私の初恋は今から始まるのだ。大体、遠すぎてその剣士の顔など見えなかったのだ。顔もわからぬ男を好きになるわけなかろう!私は……その……力の強い男より、優しくて思慮深い男の方がだな……」

 フェルの顔がだんだんと赤くなり、最後の方は小声でよく聞きとれなかった。

「じゃあこれからもフェルに優しくするね。嫌われたくないしさ」

「ケ、ケイはいつも優しいではないか、これ以上優しくされると、私はどうしていいかわからん。おかしくなってしまいそうだ」

「あ、あそこのお肉屋さんに寄るね。今日は奮発してオーク肉だよ」

 その店でオーク肉を300グラム買う。
 店を出てまたフェルと歩き出す。

「あとはお米かー、ちょっと多めに買ってもいい?明日は1日狩りが出来るから、今日よりもっと稼げると思うし」

「いいぞ。私もお米は好きだしな。しかし、あんな風にホーンラビットを狩る方法があるとはな。全くケイの発想の柔軟なところには本当にいつも驚かされてばかりだ。15歳とは思えないほどいろいろ知っているしな。たまに年上と話していると錯覚してしまうほどだ」

 前世の記憶があるからね。僕には。
 
 そんな風に楽しく会話をしながら必要なものを市場で購入した。

 そのあと公衆浴場に行ったが、急いで身体を洗ってすぐに出た。とにかく早く醤油を使った料理を食べたかったのだ。
 いつもフェルの髪を乾かすベンチで、ツボに入った米を棒でついて精米する。あたりは薄暗くなって来ているから、ちょっと不審者っぽい。こんなところで何をやってんだと思ったけど。この衝動は止められなかった。美味しい和食には炊き立てのご飯が必要なのだ。
 買ってきたお米は全部精米してしまった。ちょっと腕が痛い。

 フェルが公衆浴場から出てきた。
 
 南門を出て、早足でいつもの場所に行く。
 やっと料理が出来る。今日は生姜焼きを作るのだ。

 最初に大きな鍋にお湯を沸かして、買ってきた保存用の瓶を湯煎する。調味料を小分けにしたいのだ。樽のままでは使いにくい。
 湯煎している間にお米を研いで水につけておく。
 料理に使う水はいつもフェルが用意してくれる。門の前には水場があって誰でも自由に使える。フェルはいつも大きめの水樽を両脇に抱えて、平気な顔して持ってくる。うちのフェルってすごい。
 湯煎が終わったところで、鍋でご飯を炊きはじめた。

 ご飯が炊けるまでの間に、買ってきた調味料を瓶に小分けに入れていく。これまた買ってきた折りたたみの机がここで大活躍する。唐辛子は輪切りにして、タネと一緒に小さな瓶に入れた。

 お肉を薄切りにしてボウルにいれて、その上に醤油、酒、みりん、砂糖を入れる。ボウルはじいちゃんの食堂から持ってきたものだ。お酒とみりんはそれっぽいのが市場で買えた。穀物のお酒とそれと同じ穀物から作った甘いお酒だ。そんなに高くはなかった。
 肉の臭みが少しでも取れたらいいなと思って少しだけタレに唐辛子を入れた。

 大さじ小さじみたいなものがあるといいな。明日テントを買う時に探してみよう。
 買いたいもの、必要なものは今日買ったノートに書き込んでおく。
 もうひと組のノートとペンはフェルにも渡すつもりでいたけど、帰ってきてから、フェルが鞄を持っていないことに気づいた。しまった、醤油と味噌で浮かれていた。
 王都に着いたら買ってあげようとずっと思ってたのに。
 フェルの鞄とノートに書いておいた。

 キャベツを千切りにして、もらったクズ野菜から使える部分を切り出してサラダを作る。お酢と醤油、少し砂糖を入れて混ぜ合わせ、ドレッシングを作った。少し舐めると何か足りないような気がして、オリーブオイルを入れてみた。混ぜ合わせて味を見るとよりドレッシングっぽくなって美味しかった。
 ご飯が炊けたので火からおろして蒸らしておく。
 ご飯が冷めないように、ここからは手早く料理する。

 大きめのフライパンに満遍なく油を敷いて煙が出るまで熱する。しばらく熱したら一度火からおろして少し冷ます。
 油を拭いて、また火にかける。本当は何回か繰り返した方がいいんだけど、ご飯が冷めちゃうので、今日はこれでいいことにする。
 焼き入れしたフライパンを火にかけて肉を焼いていく。少し弱目の火でじっくり焼く。
 肉の両面に焼き色が付いたら、残ったタレを入れ弱火にする。
 味見して、少し醤油を足した。醤油の懐かしい香りが鼻から抜けていく。早く食べたい。火を止めてお肉をよくタレに絡ませた。
 定食のように盛り付けたかったが、そんないいお皿は持ってない。さっき肉を漬けてた深めの大きな皿を水洗いして、お肉をまとめてその皿に盛る。
 サラダも同じ大きさの深皿に盛り付けた。フェルと分け合って一緒に食べよう。手持ち鍋に水を入れお湯を沸かす。次は味噌汁だ。ああ、コンロもう1個欲しいな。
 キノコを刻んで入れてネギを入れる。
 お湯が沸いたところで、火を止めて味噌を溶かす。一口味見すると、懐かしい優しい味が口の中に広がった。出汁がとれてないけど仕方ない。今はこれが精一杯。

 素振りをしていたフェルにもうすぐできるよと声をかけて、味噌汁を器によそう。
 ご飯もお茶碗によそいたいけど、持っていないので仕方なくお皿に盛った。揃えないといけないものがまだまだいろいろあるなぁ。

 食事は机を使って立ったまま食べる。
 椅子も欲しいな。一番安いやつでいいから。
 これもノートに書いておく。

 「んーーーーーーっ!」

 お肉を一口食べたフェルは顔を歪ませながら、かわいくうめき声を発した。
 どうやら気に入ってくれたみたい。

「これは!こんなに、美味しい、料理は初めてだ。それから、この、この肉の後にな、その、ご飯を食べるとまた肉が食べたく、なってだな……おお!このスープも美味い。ご飯によく合うぞ!」

 フェルは興奮して食べながら、息継ぎをするみたいに味の感想を伝えてくる。ゆっくり食べなさい。話は後でもできるんだから。

「ケイ。サラダも美味しいな」

 大きな器を手に持ってフェルはお箸でサラダを食べた。僕はその器を受け取ってかわりばんこでサラダを食べる。
 
 なんかいいなこういうの、大きなお皿で分け合って食べるとなんか仲良しって感じがする。

 これ以来我が家では、食事の時いろんな料理を大皿に盛り付けて、みんなで分け合って食べるようになる。

 食べ終わったら2人とも無言になってしまった。食器を持って水場でフェルと洗い物をする。寝床に戻る帰り道は、どちらからともなく、2人、手を繋いでゆっくり歩いた。

 淹れたてのまだ熱い麦茶を2人で並んで座って飲む。少しお砂糖も入れた。

 それを飲んだフェルが「最初にケイが入れてくれたお茶もたしかこんな味であったな」そう言って僕の方に頭を乗せてその身体を委ねる。

 その日は少し寒かったので、毛布を2枚重ねてフェルとくっついて眠った。













しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...