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余計なことはしなくていい
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277 余計なことはしなくていい
「兄ちゃんがいなくなったら寂しくなるぜ。俺が売った魚をこんな料理にしたーとか、油が乗ってて美味かったーとかそんなこと楽しそうに話してくる奴なんていないからな。そういや兄ちゃん昨日チコの村に居たらしいが、何してたんだ?」
「商業ギルドの人たちに舗装した道を案内してくれって言われちゃって。すぐにこっちに戻ったからお魚なんて買ってくる時間もなかったよ」
おっちゃんは僕のためにチコの村で今朝獲れたての魚を仕入れてくれたらしい。朝一番でおっちゃんの魚屋に行くともうすぐ帰ってくるから待ってて欲しいと店員さんに言われた。セシル婆さんとこの先の季節に旬を迎える野菜たちについて話ながら待つと、馬車に乗りこちらに手を振るおっちゃんの姿が見えた。
積荷をどんどん下ろしながらおっちゃんは今日の成果を自慢してくる。
「こんな鮮度で持ってこれるなんてな。ついこの間まで考えもしなかったぜ」
チコの村の人たちは暗いうちから漁に出てくれて獲れた魚はすぐおっちゃんの馬車に積み込まれて全速力で領都に運び込んだらしい。まだきちんと整理されていない魚の入った箱は鮮度の良い魚で溢れていた。
「明日の朝もう一度店に来いよ。塩漬けした魚をやるから。干物もいくつか作っておくぜ。帰ったら食べるのだけで苦労するかもな」
おっちゃんはそう言ってガハガハと笑う。
「それでこれは兄ちゃんに俺からの贈り物だ」
そう言って見せてくれた水槽に入れられていたのは大型の鯛だ。
「なにこれ?こんなの見たことないよ!」
「すげえだろ。チコの親父が渦がある岬のとこまで船を出してくれてな。網じゃなくって竿で釣り上げた極上の奴だぜ。釣った本人が驚いてたくれぇだからな。間違いなくこいつは美味い。上物だぜ」
渦潮の中で暮らす鯛はよその鯛より身が締まって美味しいと言う話を聞いたことがあった。危険を犯して漁に出るなんて大丈夫なの?そう思ったけれどここは素直に感謝しよう。大切に料理します。
釣ったばかりの身の締まった鯛も良いけれど、半身は昆布締めにしてみよう。
おっちゃんのところのまな板を借りて鯛を捌く。ちょこっと味見してみたら最高だ。フェルが目を白黒させている。
これ売ったらかなりの値段になるんじゃない?
王家に献上されるくらいの極上品ではないだろうか?
「気にすんな。黙ってりゃわかんねーよ」
おっちゃんはニヤリと笑った。
想像以上におっちゃんの持ってきてくれた魚が質が良くって、頭を悩ませてたら、おっちゃんが僕に言ってくる。
「確かお前、保存の魔道具の箱持ってたよな?それに入れときゃ良いんじゃ、ねーの……。いや、ちょっと待てよ?ケイ、その箱、王都に着いたらうちの店に送ってくれないか?弟に言えば仕入れの定期便に乗せられんだろ。届いたらその時の季節の魚のいいやつ選んで箱に詰めてそっちに送ってやるよ。値段はその時の仕入れによるからわかんねーけどよ。兄ちゃんにはまだまだ美味い魚を食わせてーからな。どうだ?」
そんな事を言われて断るわけはないだろう。だけどそれなりにお金もかかるだろうしフェルに相談してみる。
「問題ないだろう。むしろ楽しみではないか」
フェルにも快く了承してもらえた。
あれこれ道中の献立を考えて、必要な野菜をセシル婆さんに出してもらう。
セシル婆さんが言うには、これから旬になる野菜の中で越冬野菜と言う物があるらしい。霜にわざと当てて、野菜たちがそれに負けないように栄養を蓄えるとその実が甘くなるらしい。王都に比べて冬の寒さが厳しいこの土地では冬場にそういう野菜が作れるのだそうだ。
ちなみに王都では雪が降るほど寒い時期は短いから育てるのは難しいと言ってた。
いつかこの領都でその野菜を食べてみたい。そう思うくらいセシル婆さんの話は心に残った。
旅に必要な物を買い揃える前に中央の広場に行く。お昼ごはんは屋台で食べるつもりだ。
1週間ぶりの中央広場にはたくさんの人が集まっていてどの屋台も忙しそうに営業している。ついこの間の出来事だけど、なんだか懐かしく思えた。
「お、おふたりさん。ひさしぶりじゃないか。そうだケイ、うちのスープ、また少し出汁を変えたんだよ。ジェイクが勧める昆布ってやつを使ってるんだ。飲んで感想聞かせておくれよ。まだ工夫できるところがある気がするんだ。トビーのとこみたいにうちにもちょっと教えてくれないか?頼むよ」
「いいよ。でも先にセルジュさんのところに挨拶してからね。うわ、かなり並んでるな」
「義理堅いとこがお前のいいところだな。ほら、これ飲んで列に並ぶといい」
スープ屋のおじさん。ハンスさんが後で感想を聞かせてくれと言って順番を飛び越し僕にスープを渡してくる。あ、あの人ハンバーガーの、とか、あの時の小熊亭の人だよとかささやく声が聞こえた。半月くらいの営業だったけど覚えてくれて少し嬉しい。
もらったスープを飲みながら、フェルと一緒にセルジュさんの屋台の列に並ぶ。トビーが来てホットドッグを僕に渡し、ジョージさんが大盛りの焼きそばをフェルに渡す。いつだったか串焼きを値引きしてくれたおじさんがやってきて、自信作だと串焼きを2本渡してくる。「また皿がいるかい?持ってきてやろうか?」そう言うおじさんに僕たちは笑って手を振る。
「お前たち。そんなにたくさん料理を持ってなにやってんだ?そんなに食うもんあれば俺のとこの串焼きなんて要らないだろう」
「いや、それが並んでたらみんな料理を持ってきてくれて……」
両手に抱え切れないほど僕たちは屋台の料理を持っていた。それを見たセルジュさんが冷たい視線で僕たちを見る。
「見ていたのだからわかっとる。今日は4種類だ、何本買っていくんだ?残したら許さんからな」
「あ、全部の種類を2本ずつ。セルジュさん、そこの空いてるところで食べてもいいですか?邪魔になるようなら別のところに行きますから」
「構わんぞ。だいたいお前らが始めたんだろうが。店の裏で勝手に食ってく奴が近頃多すぎる」
セルジュさんは折りたたみのテーブルを出してくれてここで食っていけと言ってくれる。嫌そうじゃないところを見ると結構この状況を楽しんでいるのかも。そうじゃないならテーブルなんて用意しないよね。
セルジュさんの隠れたデレを楽しみつつ、ありがたくお店の裏でもらった屋台の料理を食べさせてもらった。
「先に4本。味はついてるからそのまま食え」
ツンデレ番長、じゃなかった。セルジュさんがお皿で串焼きを4本出してくれた。
出された串焼きは焼き鳥だった。
「セルジュさん!これチェスターさんの鶏でしょ?」
「昔からの付き合いでな。ワシのところには何羽か必ず届くのだ。冷めないうちに食え。焼き直しとかやらんからな」
これ胸肉かな?こっちはモモの肉だ。塩で味付けされて、あ、肉汁が……。
慌てて串焼きを頬張る。
あ、美味しい!と言葉に出す前にフェルがテーブルを叩いて絶賛してる。ずるいぞフェル。リアクションが早すぎるんだ。
「美味いぞ!セルジュ。こんな肉は今まで食べたことがない」
完全に出遅れた僕はフェルの後に何と言っていいか分からず黙り込んでしまう。
悔しいけど僕が作った焼き鳥より美味しい。まぁそうだよね。素人が思いつきで串に刺して焼いたものとは全然違う。
「同じものだが今度はこれを塗って食べてみろ。いっぱいつけて食うと美味いぞ」
レバーペーストだ。僕も作ったあのパンに塗ったやつ。絶対美味しいに決まってる。フェルと2人でいっぱい塗りつけてそれを食べる。
「これすごい美味しい!入れたのは塩と少しのバターだけですか?それだけなのに全然臭みがない」
「良い素材なら余計なことはしなくていいのだ。チェスターの鶏は新鮮だからな。バターで炒めて潰すだけだ。胡椒は少し使ってはいるが」
頼んだ串焼きは8本だけだったと思うけど、セルジュさんは次々と焼いて僕らに振舞ってくれる。他の屋台からもらった料理も残さず食べたらお腹いっぱいだ。
「セルジュさん。これだと貰いすぎです。いくらですか?」
そんな事を言うのは30年早いとセルジュさんは言って、食べたのならさっさと帰れと言う。
美味しかったなー。すっかりご馳走になってしまった。
「やはり料理人というのは目の付け所が違うものだな。ケイはずっとセルジュの手元を見ていたな。楽しそうだったぞ」
焼き鳥の技術を少しでも盗もうとずっとセルジュさんの仕事を見ていたことにフェルが気づいていた。
鶏肉って火を通すの実は難しいんだよな。ちょうどいい温度で火を通すのはなかなかうまくできない。セルジュさんはその火加減をうまく調節しながら大量の串をすべて均一に仕上げている。
「ずっと見てたんだけどねー。早すぎて実際よく解らなかったよ。すごいなー。あの焼き方はセルジュさんにしか出来ないよ」
炭焼きをしているセルジュさんは自分のところで作った炭を使って串焼きを焼いていた。
そういえば腰が痛いような様子はなかったな。この先ずっとセルジュさんには元気で仕事を続けてもらいたい。
味は良くなったが仕込みの手間が増えてしまったというハンスさんの悩みを聞き、いろんなやり方がある事を教えてあげた。
昆布の出汁なんて前の日に鍋に入れておけば作れてしまう。
前日にある程度やってしまえる事を話し、いくつかの具材は炙ってから入れたほうがいいんじゃないかと言ってみた。
トマトと一緒に煮込むと魚の臭みは気にならなくなるけど、少し工夫すればこのスープの良いところがもっとグッと前に出る気がする。
ハンスさんもなるほどと頷いて、明日からまた工夫してみると言ってた。
市場を一周して料理をもらった人たちにお礼を言う。すっかり顔馴染みになってしまった屋台の人たちに声をかけられ、食べて行かないかと誘われるけど2人ともお腹いっぱいだ。声をかけてくれた人にあやまりつつ、お礼を言ってまわった。
旅の支度は中央公園の周りで揃えた。
銭湯に入ったらエドさんの果実水を買いに行こう。
「兄ちゃんがいなくなったら寂しくなるぜ。俺が売った魚をこんな料理にしたーとか、油が乗ってて美味かったーとかそんなこと楽しそうに話してくる奴なんていないからな。そういや兄ちゃん昨日チコの村に居たらしいが、何してたんだ?」
「商業ギルドの人たちに舗装した道を案内してくれって言われちゃって。すぐにこっちに戻ったからお魚なんて買ってくる時間もなかったよ」
おっちゃんは僕のためにチコの村で今朝獲れたての魚を仕入れてくれたらしい。朝一番でおっちゃんの魚屋に行くともうすぐ帰ってくるから待ってて欲しいと店員さんに言われた。セシル婆さんとこの先の季節に旬を迎える野菜たちについて話ながら待つと、馬車に乗りこちらに手を振るおっちゃんの姿が見えた。
積荷をどんどん下ろしながらおっちゃんは今日の成果を自慢してくる。
「こんな鮮度で持ってこれるなんてな。ついこの間まで考えもしなかったぜ」
チコの村の人たちは暗いうちから漁に出てくれて獲れた魚はすぐおっちゃんの馬車に積み込まれて全速力で領都に運び込んだらしい。まだきちんと整理されていない魚の入った箱は鮮度の良い魚で溢れていた。
「明日の朝もう一度店に来いよ。塩漬けした魚をやるから。干物もいくつか作っておくぜ。帰ったら食べるのだけで苦労するかもな」
おっちゃんはそう言ってガハガハと笑う。
「それでこれは兄ちゃんに俺からの贈り物だ」
そう言って見せてくれた水槽に入れられていたのは大型の鯛だ。
「なにこれ?こんなの見たことないよ!」
「すげえだろ。チコの親父が渦がある岬のとこまで船を出してくれてな。網じゃなくって竿で釣り上げた極上の奴だぜ。釣った本人が驚いてたくれぇだからな。間違いなくこいつは美味い。上物だぜ」
渦潮の中で暮らす鯛はよその鯛より身が締まって美味しいと言う話を聞いたことがあった。危険を犯して漁に出るなんて大丈夫なの?そう思ったけれどここは素直に感謝しよう。大切に料理します。
釣ったばかりの身の締まった鯛も良いけれど、半身は昆布締めにしてみよう。
おっちゃんのところのまな板を借りて鯛を捌く。ちょこっと味見してみたら最高だ。フェルが目を白黒させている。
これ売ったらかなりの値段になるんじゃない?
王家に献上されるくらいの極上品ではないだろうか?
「気にすんな。黙ってりゃわかんねーよ」
おっちゃんはニヤリと笑った。
想像以上におっちゃんの持ってきてくれた魚が質が良くって、頭を悩ませてたら、おっちゃんが僕に言ってくる。
「確かお前、保存の魔道具の箱持ってたよな?それに入れときゃ良いんじゃ、ねーの……。いや、ちょっと待てよ?ケイ、その箱、王都に着いたらうちの店に送ってくれないか?弟に言えば仕入れの定期便に乗せられんだろ。届いたらその時の季節の魚のいいやつ選んで箱に詰めてそっちに送ってやるよ。値段はその時の仕入れによるからわかんねーけどよ。兄ちゃんにはまだまだ美味い魚を食わせてーからな。どうだ?」
そんな事を言われて断るわけはないだろう。だけどそれなりにお金もかかるだろうしフェルに相談してみる。
「問題ないだろう。むしろ楽しみではないか」
フェルにも快く了承してもらえた。
あれこれ道中の献立を考えて、必要な野菜をセシル婆さんに出してもらう。
セシル婆さんが言うには、これから旬になる野菜の中で越冬野菜と言う物があるらしい。霜にわざと当てて、野菜たちがそれに負けないように栄養を蓄えるとその実が甘くなるらしい。王都に比べて冬の寒さが厳しいこの土地では冬場にそういう野菜が作れるのだそうだ。
ちなみに王都では雪が降るほど寒い時期は短いから育てるのは難しいと言ってた。
いつかこの領都でその野菜を食べてみたい。そう思うくらいセシル婆さんの話は心に残った。
旅に必要な物を買い揃える前に中央の広場に行く。お昼ごはんは屋台で食べるつもりだ。
1週間ぶりの中央広場にはたくさんの人が集まっていてどの屋台も忙しそうに営業している。ついこの間の出来事だけど、なんだか懐かしく思えた。
「お、おふたりさん。ひさしぶりじゃないか。そうだケイ、うちのスープ、また少し出汁を変えたんだよ。ジェイクが勧める昆布ってやつを使ってるんだ。飲んで感想聞かせておくれよ。まだ工夫できるところがある気がするんだ。トビーのとこみたいにうちにもちょっと教えてくれないか?頼むよ」
「いいよ。でも先にセルジュさんのところに挨拶してからね。うわ、かなり並んでるな」
「義理堅いとこがお前のいいところだな。ほら、これ飲んで列に並ぶといい」
スープ屋のおじさん。ハンスさんが後で感想を聞かせてくれと言って順番を飛び越し僕にスープを渡してくる。あ、あの人ハンバーガーの、とか、あの時の小熊亭の人だよとかささやく声が聞こえた。半月くらいの営業だったけど覚えてくれて少し嬉しい。
もらったスープを飲みながら、フェルと一緒にセルジュさんの屋台の列に並ぶ。トビーが来てホットドッグを僕に渡し、ジョージさんが大盛りの焼きそばをフェルに渡す。いつだったか串焼きを値引きしてくれたおじさんがやってきて、自信作だと串焼きを2本渡してくる。「また皿がいるかい?持ってきてやろうか?」そう言うおじさんに僕たちは笑って手を振る。
「お前たち。そんなにたくさん料理を持ってなにやってんだ?そんなに食うもんあれば俺のとこの串焼きなんて要らないだろう」
「いや、それが並んでたらみんな料理を持ってきてくれて……」
両手に抱え切れないほど僕たちは屋台の料理を持っていた。それを見たセルジュさんが冷たい視線で僕たちを見る。
「見ていたのだからわかっとる。今日は4種類だ、何本買っていくんだ?残したら許さんからな」
「あ、全部の種類を2本ずつ。セルジュさん、そこの空いてるところで食べてもいいですか?邪魔になるようなら別のところに行きますから」
「構わんぞ。だいたいお前らが始めたんだろうが。店の裏で勝手に食ってく奴が近頃多すぎる」
セルジュさんは折りたたみのテーブルを出してくれてここで食っていけと言ってくれる。嫌そうじゃないところを見ると結構この状況を楽しんでいるのかも。そうじゃないならテーブルなんて用意しないよね。
セルジュさんの隠れたデレを楽しみつつ、ありがたくお店の裏でもらった屋台の料理を食べさせてもらった。
「先に4本。味はついてるからそのまま食え」
ツンデレ番長、じゃなかった。セルジュさんがお皿で串焼きを4本出してくれた。
出された串焼きは焼き鳥だった。
「セルジュさん!これチェスターさんの鶏でしょ?」
「昔からの付き合いでな。ワシのところには何羽か必ず届くのだ。冷めないうちに食え。焼き直しとかやらんからな」
これ胸肉かな?こっちはモモの肉だ。塩で味付けされて、あ、肉汁が……。
慌てて串焼きを頬張る。
あ、美味しい!と言葉に出す前にフェルがテーブルを叩いて絶賛してる。ずるいぞフェル。リアクションが早すぎるんだ。
「美味いぞ!セルジュ。こんな肉は今まで食べたことがない」
完全に出遅れた僕はフェルの後に何と言っていいか分からず黙り込んでしまう。
悔しいけど僕が作った焼き鳥より美味しい。まぁそうだよね。素人が思いつきで串に刺して焼いたものとは全然違う。
「同じものだが今度はこれを塗って食べてみろ。いっぱいつけて食うと美味いぞ」
レバーペーストだ。僕も作ったあのパンに塗ったやつ。絶対美味しいに決まってる。フェルと2人でいっぱい塗りつけてそれを食べる。
「これすごい美味しい!入れたのは塩と少しのバターだけですか?それだけなのに全然臭みがない」
「良い素材なら余計なことはしなくていいのだ。チェスターの鶏は新鮮だからな。バターで炒めて潰すだけだ。胡椒は少し使ってはいるが」
頼んだ串焼きは8本だけだったと思うけど、セルジュさんは次々と焼いて僕らに振舞ってくれる。他の屋台からもらった料理も残さず食べたらお腹いっぱいだ。
「セルジュさん。これだと貰いすぎです。いくらですか?」
そんな事を言うのは30年早いとセルジュさんは言って、食べたのならさっさと帰れと言う。
美味しかったなー。すっかりご馳走になってしまった。
「やはり料理人というのは目の付け所が違うものだな。ケイはずっとセルジュの手元を見ていたな。楽しそうだったぞ」
焼き鳥の技術を少しでも盗もうとずっとセルジュさんの仕事を見ていたことにフェルが気づいていた。
鶏肉って火を通すの実は難しいんだよな。ちょうどいい温度で火を通すのはなかなかうまくできない。セルジュさんはその火加減をうまく調節しながら大量の串をすべて均一に仕上げている。
「ずっと見てたんだけどねー。早すぎて実際よく解らなかったよ。すごいなー。あの焼き方はセルジュさんにしか出来ないよ」
炭焼きをしているセルジュさんは自分のところで作った炭を使って串焼きを焼いていた。
そういえば腰が痛いような様子はなかったな。この先ずっとセルジュさんには元気で仕事を続けてもらいたい。
味は良くなったが仕込みの手間が増えてしまったというハンスさんの悩みを聞き、いろんなやり方がある事を教えてあげた。
昆布の出汁なんて前の日に鍋に入れておけば作れてしまう。
前日にある程度やってしまえる事を話し、いくつかの具材は炙ってから入れたほうがいいんじゃないかと言ってみた。
トマトと一緒に煮込むと魚の臭みは気にならなくなるけど、少し工夫すればこのスープの良いところがもっとグッと前に出る気がする。
ハンスさんもなるほどと頷いて、明日からまた工夫してみると言ってた。
市場を一周して料理をもらった人たちにお礼を言う。すっかり顔馴染みになってしまった屋台の人たちに声をかけられ、食べて行かないかと誘われるけど2人ともお腹いっぱいだ。声をかけてくれた人にあやまりつつ、お礼を言ってまわった。
旅の支度は中央公園の周りで揃えた。
銭湯に入ったらエドさんの果実水を買いに行こう。
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