フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
275 / 318

言わなきゃ良いのに

しおりを挟む
 275 言わなきゃ良いのに

 お茶のおかわりはフェルが淹れてくれた。使っていたお茶の葉が良いものだったから2杯目の紅茶は素晴らしく美味しいものになった。ガンツの機嫌も良くなったみたいだ。

 アランさんとはそのあといろいろ雑談して、執事の人がアランさんを呼びに来るまで楽しくいろんな話をした。
 アランさんの冒険者時代の話はとても面白くって、独特の言い回しや、自分がしでかした失敗を面白おかしく伝えてくれる。

 良い人だな。素直に心からそう思った。

 そして僕たちが帰ろうと立ち上がると、フェルが腰から鞘ごと剣を抜き、テーブルの上にそっと乗せる。

「昨晩ケイから聞いて納得がいった。この剣は元々は貴殿のものであったのだろう?私は今までこの剣に何度も助けられた。今では自分の半身のような気がするくらい素晴らしい物だ」

 アランさんは少し困った顔になる。
 言わなきゃ良いのに。そんな顔だ。

「私たちは信じられない値段でこの剣を譲り受けた。初めは確かにサビだらけでボロボロな物だったが元々が良いものであったからな。ガンツの作だと後で知ったが、いつかは元の持ち主に返さなければならぬと、そう思っていた」

 アランさんはフェルの剣を取り、鞘を抜いてその刀身を眺める。
 想いのこもった表情でその剣を光に翳し、何度も手首を返しながらアランさんはいろんな角度で剣を眺めた。

「私はその剣を打ったガンツもそうだが、その剣を打たせた貴方のことも尊敬している。あの当時、魔竜の被害はとてつもないものだった。私は幼いながらも王国の冒険者たちが命をかけてこれに対処したという話を聞いて育った。私も……そうなりたいと……皆を守る剣になりたいとそう思ったのだ」

「フェル。お前の気持ちは嬉しいが、とんだ買いかぶりもいいとこだぜ?確かにあの時ガンツに折れない剣をってねだったけどな、あん時は魔獣相手に負けない硬い剣が欲しくてそう言っただけのことだ。山の中で落としてしまったのは……まあその時はその時の状況があってたまたまそうなっちまっただけのことだ。大事にはしてたが、人ひとりの命より重たい剣なんて無いからな。あの時はあれで仕方なかったんだ」

 ガンツは少し笑っていた。懸命に拵えた剣を無くしてきたアランさんにガンツは酷く怒鳴り散らしたことだろう。アランさんも全力で言い訳をしたはずだ。

「フェルがその剣を使っていると言う話もガンツから聞いて知っている。人を守る剣と言ったらしいな?そう思ってそれを使うお前はきっとその剣に見合った正しい使い手ってことなんだと思うぜ。あん時の俺はそんな大層なことを考えてなかったぞ。俺が攻撃を受け止めたらみんなの仕事がやりやすいだろってそれ持って前に出ただけだ。偉そうなことなんて何もしていない」

 アランさんは剣を鞘にしまってフェルの前にしっかりと立ちその剣をフェルに差し出した。

「これはもうお前の剣だ。世の中には理不尽なことが多い。その理不尽からお前はお前の愛するものたちを守ればいい。騎士ではもう無いだろうがその心は騎士に通づる。実際返してもらってもな、俺の場合それでこれからどれだけの人を守らなくちゃいけねーんだって話になるからな。それは少し困るんだ。だからそれはこのままお前が持っていればいい。俺の代わりに守るべき者を守ってやってくれ」

 まだ何か言いたそうなフェルだったけどうやうやしくその剣を受け取りアランさんに深く頭を下げた。
 それを見たアランさんは「良いってそういうの」と慌ててフェルのことを真っ直ぐ立たせた。

 帰る時は一緒に行くからなと、帰り際にアランさんがまるで昔からの友達みたいに言って、謁見?
 とにかくお城での話し合いは終わった。
 
 オークキングの報告と僕が見つけてしまった塩の作り方について王様に報告しなければならないそうだ。あんまり大袈裟にしないでねと僕が言ったらアランさんは笑っていた。

 お昼の時間もだいぶ過ぎてしまった。
 帰りの馬車の中でフェルは自分の剣を抜き、ずっと刀身を眺めていた。

「そんなに考え込まなくても良い。アランも言っとったじゃろ。そんなにたいそうなもんじゃないとな」

 フェルは剣を鞘に収めてガンツを見る。

「魔竜の災いに苦しんだあの当時の王国ではの、数え切れんほどの人間が死んだ。アランがワシにその剣を打って欲しいと頼みにきた時、アランはパーティの仲間の1人を魔獣との戦いで亡くしたばかりじゃった。もう同じことは繰り返したくないと彼奴は言っとった。無くしてきたのは仲間の命を助けるために魔物に投げつけたとか言っとったかの。その後命を救われた奴が長い時間をかけ探してその剣を拾ってきたそうじゃが、アランはもう要らぬと言いおったらしい。その頃にはアランは辺境伯になっておった。必要とする奴に使って貰えばいいとそうライアンに言ったそうじゃ」

 その割にこの剣に対してライアンさんの扱いが雑だった気もするが、それはおいておこう。

「ライアンもライアンでそんなめんどくさい事を頼んでくるなと思っておったようじゃがな。なんにせよ、その剣はオヌシに出会う時を待っておったのだ」

 そしてガンツは出会った時と同じ優しい目をする。

「とりわけ想いを込めて作られた道具はな、それに見合った使い手を待っているもんじゃ。魂が宿っているとまでは言わん。そんなことはあるわけはないのだ。だがの。長いこと生きていた中で、作られた道具がまるで運命のように、使いこなす者のところに惹き寄せられられていくのをワシは何度も見た。また相応しくない者には災いが降りかかり、その道具を手放していく様子もな。まぁ安心せい。オヌシのようにまっすぐな想いでその剣を振るう限りそれはオヌシを裏切ることはない。前にも言ったじゃろ。その剣はもうオヌシのものだ。これからも大切に使っておくれ」

「しかし、私は……」

 フェルが何かを言おうとしたけれどそのまま下を向いてしまった。

「たとえその剣を抜く機会がなかろうと、それはオヌシに必要なものじゃ。そうじゃろう?だから気にするな」

 下を向くフェルにガンツは優しい声でそう言った。

 やがて馬車は商業ギルドに着き、アランさんに言われた通り、ギルドマスターのダニエルさんに手紙を渡す。
 次の日再びチコの村にダニエルさんを含めた数人の職員と向かい、商業ギルドの人達に塩の作り方を教えて帰った。
 領都に戻った僕たちは出来上がった銭湯に行き、王都の公衆浴場よりもさらに充実した設備になったお風呂を満喫する。

 明日はいろいろお土産になりそうな物を仕入れて、一晩寝たら、いよいよ僕たちは王都に帰る。

 
 
 











しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...