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しおりを挟むそしてギムリィたちは、しぶしぶといった風にこれからもリリーのことを頼むとフラウに頭を下げた。ここ最近続いていた生徒会の忙しさもまだしばらくは続きそうであるし、アランもセイもそれぞれクラスで忙しい。生徒の個人的な情報も取り扱うことがあるため、いくら身内といえども生徒会役員やそれに準ずる役職の者以外は生徒会室で活動することが禁じられている。それは守るべき規則であり、信用にも繋がることであることから悔しいながら休憩時にリリーを保護しておくことはできない。それに、なによりリリーのフラウに対する信頼が強いのだ。よって、仕方なく何の役職も持たないフラウにリリーの護衛を頼むことにした。
そして日にちが経つごとに、リリーはおかしくなっていった。
普段好んで話すことをしないリリーが、珍しくよく話すと思ったら、話の内容はフラウのことばかり。それに一目でわかるような、恋をしているかのような瞳で頬を染めながら話すものだから、ギムリィもハレムも対応に困ってしまった。
そして語られる内容はフラウの格好良さ、心の優しさ、挙げ句の果てには素の接し方が心地よいとまで、頬に手を上げきゃっきゃと兄に自慢をしてくる始末。こんなリリーの姿を見たことがなかった兄たちは、本当にこれはおかしいと思い学校での最近のリリーを調べると、どうやら弟はほとんどの休憩時間をフラウと、あの気にくわない男――タイム――と過ごしていたららしいことが発覚した。タイムという男は、やはり疑わしい人物である。そして、またリリーを騙して何かを企んでいるのではないかとフラウにも懐疑の目を向けた。
なにかリリーがおかしくなった原因はないか、そして最近のフラウにおかしい点はないか、アランやセイにも意見を聞こうと思いギムリィは授業後二人を生徒会相談室へ呼び出した。
「それで、何か最近のことで気になっていることはないか?」
「最近、か・・・・・・。俺は最近クラスの方で忙しいから・・・・・・。それに、フラウが何もしていない分仕事がこっちにきてるし。あいつ・・・!ほんっとうに困った奴だよ。タイムの奴ともまだ連んでやがるしって――すまん、これは私事だった」
「俺も、最近忙しくて。お役に立てなくて、申し訳ありません・・・・・・」
「そうか・・・・・・。いや、時間を取らせたな」
目立った収穫がなく、ギムリィは残念そうに視線を下ろす。と、セイが『いえいえ』と言いながら何とはなしにぽつりと呟いた。
「しっかしタイムの奴、どうやってフラウに取り入ったんだか・・・・・・。あいつを手なずけるのは相当難しいぞ?」
「催眠術でも使ったんじゃないですか?」
「アラン、その催眠術とはなんだ?」
「え、っと、最近一年生の男子の間で流行ってて・・・。あっ、実際にはできませんよ?でも昔読んだお伽話にも出てきたでしょ?魔法使いっていうんでしたっけ・・・なんか貴族間で有能な治癒士がいるっていう噂があることを聞いて、どうやら魔法みたいだって。それで、魔法が使えるなら相手を操ることもできるんじゃないかって話が盛り上がって・・・・・・つまり、尾籠な話ですっ!すみませんっ!!!」
「兄さん・・・もしかして」
「ああ。もしかしたらあり得ることかもしれないぞ」
「ギムリィ・・・・・・それは以前お義父上から聞いた、アレか?」
「ああ・・・・・・。何か、その様な力が関わっているかもしれない」
話の見えないセイは彼らの会話に首を傾げ、アランはひたすら下らない話をしてしまったと後悔に顔を青くさせていた。
「セイ、確かタイムという生徒は三学年に上がるまで病床についていたのだったな?」
「え、ええ。そうです。三年生に上がるタイミングで全快したと」
「ジル、調べた情報と合っているか?」
「はい。私が調べたものとも一致しています」
「難しい病だったのだろう?なのにいきなり全快とは、怪しいな・・・・・・」
「これは、タイム氏に直接会って、どういう経緯なのか問いただす必要があるな。ということでセイ、お前はブロッサム家の人間で、タイム家はブロッサムの派閥の筆頭だろ。一緒にタイムの家に行くぞ」
「えっっ、ちょっと待ってくださいよ。第一、まだよく話がわからないんですけど」
「俺も、わからないです」
「「「「あー・・・・・・」」」」
気が競っており、ギムリィやクォードたちは今からでも!と手がかりを掴みに立ち上がろうとしていたが、前に座るセイとアランが慌てて彼らを止める。
そして初めて彼らにはあの話をしていなかっと気づき、焦っている自分を落ち着かせた。
「そうだったな、お前らには話していなかったな・・・・・・。実はうちのリリーなんだが――
こうしてギムリィは、自分の父親から聞いた、我が弟に降りかかった事実をゆっくりと話し始めた。
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