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しおりを挟むゴーン――・・・
ガチャリッ
「こっ、これはギムリィ様っ!?それにセイ様とアランロード様までっ!一体どの様なご用件でしょうか!?」
「アポなしで来てしまって申し訳ない。至急タイム殿との時間を取ってはくれないだろうか」
タイム侯爵家の屋敷に来客のチャイムが鳴り響き、執事長がドアを開けるとそこにはタイム家が支援するブロッサム家と敵対関係の、ホワイトローズ家長男ギムリィと、なぜかこちら側であるはずのセイ、そしてアランロードが立っていた。青天の霹靂に一瞬言葉も忘れた執事長だったが、すぐに顔を繕い来客を客室へと招き入れた。
*****
「いきなりやって来て済みません。お久しぶりですタイム殿」
「こちらこそ、お久しぶりでございます、ギムリィ様。それにセイ様とアランロード様も。・・・・・・して、どの様なご要件で?」
タイムはいきなりの訪問に、警戒を露わにしている目でギムリィにそう問いかけた。表情や口調を柔らかくしようと努めていることが伝わってきたが額にはうっすらと汗が滲んでおり、何か都合の悪い隠し事をしているのかと疑いたくなるような様子である。
「いえね、単刀直入にお聞きしますよ。ご子息のキャスティアさんはお難しい病に冒されていたのでしたよね?それがなぜ・・・・・・いきなり全快なんて奇跡が起きたのでしょうか?」
「い、いやなに・・・・・・。ちょうど腕の良い医者が見つかり、良く効く薬が見つかったのですよ。いやぁ、あれはまさしく奇跡でしたな!キャスティアは昔から病弱で、あのときも衰弱が激しくて弱り切っておりましたから・・・・・・。最後の年だけでも修学パーティーに出席できて、本当に嬉しがっております」
後半は本心からきているのか目尻を下げてしみじみと零したが、前半については何か隠しているような響きが感じられた。ギムリィの両端に座っているセイとアランも、タイム家当主の動作を注意深く観察しており、今の言葉にやや引っかかりを覚えながらもギムリィの次の言葉を静かに待つ。
「ほぅ・・・・・・。でしたら、その腕の良い医者というのを紹介していただきたいものだ」
「え・・・・・・どなたかご病気で?でっ、ですが、きっとホワイトローズ様が懇意になさっている方の方が腕は良ろしいかと・・・・・・」
「おや?でも、奇跡を起こしたのでしょう?」
「そ、それはそうなのですが・・・・・・」
タイムは明らかに動揺しており、目は泳ぎ汗が額から流れてきている。おもむろにポケットから出したハンカチーフで額を拭い、どう言い訳をしようか考えているような表情をとっていたが、次の瞬間ギムリィの右隣に座るセイを見て『一体どういうことなのですか!?』という目を向けてきた。
「実は今、ホワイトローズ家三男が病に冒されていまして・・・・・・」
「なんとっ!!その様なこと存じ上げておりませんでしたがっ・・・・・・」
「極秘なんです。ほら、原因不明の病など表に出てしまったら、第三王子の婚約者候補である立場が危うくなりますでしょう・・・・・・?」
「そ、そうでしょうな・・・・・・。で、でも何故そんな話を私などに・・・・・・?」
たらりと、タイムの頭皮から汗が流れ落ちるのが目に入った。
疑問の目を向けられたセイはそっとタイムに顔を近づけて手を口元にやり、眉を下げてさも悲しそうな表情を作ってホワイトローズ家が持つ秘密を話すと、セイに倣い顔を近づけていたタイムは目を見開いて驚きを見せた。続いてアランが深刻な顔をし、また後半は下から上目遣いでタイムを見上げるように妖しく言い放った。
相対してる男たちが一体どんな目的で自分にその様な、世間的にも重大な話をしてくるのかわからず、タイムは流れる汗を必死に布で拭っている。
一体彼らはどういうつもりなのか。タイムの頭の中では彼らが敵なのか、それとも自分に害を成すものではないのか、図りかねていた。
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