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しおりを挟む「ですから・・・・・・ね?ご紹介、していただけませんか・・・・・・?」
再び顔を近づけ威圧的に請うセイの、にやりと歪められた口。そして隣を見ると同じく口の端を微妙に引き上げ歪んだ笑みを作っているギムリィとアランを目に入れた瞬間、タイム自身も口元を歪ませた。
「そういうことでしたか・・・・・・。確かに、近頃のブロッサム家は権力が乏しくなってきているようですし・・・・・・そろそろ私も乗り換え時かと思案しておりましたところなのですよ。ホワイトローズ家のご長男であるギムリィ様直々のご要望ならば、このタイム、喜んでお答えいたしましょう」
その瞬間、悪役然として嫌な笑みを浮かべているタイムに対面していた三人は、『かかった!!』と目を細めた。
相手は十中八九、ギムリィがタイム氏をホワイトローズ家側に引き抜こうとしていると思っているのだろう。そもそも、ブロッサム家の一員であるセイと同じくブロッサム家側であるアランがギムリィと共に現れた時点で、その様なことを予想でしていたのかもしれない。きっと、その医者とやらは非常に重要な存在であり、かつ下手に口に出してはいけない存在なのだろう。ギムリィたちは、彼の言う“医者”は魔族の可能性が高いと踏んでいた。きっとタイムはその情報と引き換えにギムリィと手を組むつもりなのだろう。
タイムは社会的地位は高いものの、裏では色々と小汚いことをしているという事実がある。三人は、今まで散々ブロッサム家の影に隠れて好き放題やってきたのにも関わらず、その隠れ蓑であるブロッサムの力が衰えてきたと判断したらすぐさま他に乗り換えるこの目の前の男のことを、『この外道が』と罵りたい衝動に駆られたが、本音をポーカーフェイスで隠して我慢した。
セイにとっても、非常に腹正しかった。セイとフラウはこの目の前の相手と何度か対面したことがある。フラウが年齢的にも成熟し、当主が徐々に仕事を引き継いでいくというので彼と共にこの男にも挨拶を受けたことがある。あのときは、耳障りの良いことを並べ立て、ごまをすってひたすらフラウに取り入ろうと必死になっていたことしか覚えていない。本当に、腐った奴だとセイは心の底から嫌悪した。
同時にアランも憤っていた。アランの家もブロッサム家と懇意にしており、タイム家とは競って気に入られようとしていたことを思い出すと苦い思いがするが、こうやっていとも簡単に他の方へ寝返る様を見せつけられると、子どもながらに軽蔑の意が生じた。
きっと自分が受け入れられると勘違いをしているのだろう。汗も吹き飛び手を擦り合わせながらにやにやと口を歪ませ、タイムはスルスルと欲しい情報を声に乗せた。
「ま、魔女、ですか・・・・・・!?」
「シッ!!・・・・・・失礼いたしました。どこで誰が聞いているかわかりませぬので。ご容赦ください」
「魔女・・・・・・。本当に、存在したのか・・・・・・」
「あれは噂ではなかったんだ・・・・・・」
タイムの口から出た情報は、大方予想していたもののやはり驚くべきものだった。お伽話や童話などで親しみ深い存在だとしても、それはお伽話の世界のものだと当然思っていたし、現実にいるなんて想像もしたことがない。ギムリィは現にロイズの口から聞いたが、だとしてもどこか空想の世界のように感じていたのだ。だが、実際に目の前の人間から『魔女』という言葉が出されたことによって、いよいよ現実味を帯びてきた。
そしてタイムの話には、三人を・・・・・・特にギムリィをさらに驚かせることがあったのだった。
「黒髪の・・・・・・美しい魔女」
「はい。妻がいる身で大変言いにくいのですが・・・・・・、それはそれは、美しい女でした」
「名は・・・・・・、その魔女の名はなんと言うのですか」
「“リリアナ”と」
「「「っ!!?」」」
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