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しおりを挟むホワイトローズは、フラウリーゼの幸せの邪魔だ。いつからか、憎しみ以外の目で見れなくなっていった。
ギムリィもハレムも王子から離れず、いつもベッタリと一緒に行動している。さらに彼らホワイトローズ家の者は何でもないような顔をして何でもこなしていくものだから、努力ををしてもなかなか彼らに勝てないフラウは、巨大な劣等感に苛まれていた。彼らに少しでも劣れば父親からは叱咤され、諦めの籠った目で見られ、それがブロッサム家の次期当主として育てられてきたというだけで無駄に立派に育ってしまった自尊心をズタズタに突き刺した。
だがそんなフラウにも心を休める場所はあった。それは愛する妹であるフラウリーゼと、自分と同い年で同じ長男という立場にあるセイ、そしてフラウリーゼの幼馴染みのアランと過ごす時間だった。誰にも弱音を吐くことができず自分の立場や気持ちを慮ることすらできない大人たちに容赦なく責められる日々に悶々としていたある日、ブロッサム家の分家であり政治的な繋がりも強く息子がフラウと同い年だったため交流を深めさせようと父に引き合わされたのがセイだった。彼も幼いながらに世間を知り尽くしているような、そんな世間に疲弊しているような目をしており、自分と同じだと心のどこかで感じた。それは彼も同じだったらしく、本家の子息であるフラウに対し遠慮深げだったセイに自分から話しかけると彼もつらつらと日々の苦しみについて話し出した。互いに深く共感でき、その時からセイとは親友と呼べる中になった。
そしてアラン。彼はフラウリーゼがまだ社交界デビューをする前にその前段階として開かれた軽い茶会で会った、ブロッサム派閥の家の息子だった。
初めて彼と会った日、そのフラウリーゼを見つめる熱い瞳と緊張に強ばらせた顔で、一目で彼がフラウリーゼに心を寄せていることがわかった。それほどまでにアランはわかりやすく、正確面でいっても表裏のない奴だった。フラウリーゼを見つめる眼差しは優しく、彼女をエスコートする時もまるで宝物を扱うように大事に大事に接するのだ。そんな彼の恋心はフラウリーゼには今一歩届いていないらしく、フラウもそんなに簡単に手に入るものかと兄としての敵愾心はあったが、こいつがフラウリーゼの婚約者だったら彼女の幸せになるのに・・・・・・というのが本音だった。セイもいつからかフラウリーゼを妹とは違う感情で見つめていて、それに気づいたフラウは自分の妹がこんなにも良い奴らに愛されていることに幸福感を抱いた。
だがそれも束の間で、いよいよ最後の希望である第三王子にも傍らにはホワイトローズ家の者――リリーがいることを知り、フラウからは余裕が消えた。
学園に入学し、一年次の修学祭では第一王子が、二年次の修学祭では第二王子がそれぞれギムリィとハレムを婚約者とすることを宣言し、ブロッサム家は地に叩き落とされたかのような衝撃を受けた。ジルナイトの婚約者が決まったときから屋敷の中は暗く、母は病気に伏し父は酒に走り、子どものように癇癪を起こしては物を投げるなど暴力的になっていった。辛うじて仕事には務めているが、ブロッサム家はぎりぎりの状態だった。
フラウリーゼへの当たりも酷く、召使いたちの態度も悪かった。ブロッサム家の派閥の者たちはどうにかフラウリーゼと最後の王子であるゼノタールとを婚約させようと必死で、さらに第一王子や第二王子の没落を図ろうと密会も開かれたが、第三王子がなかなか鋭く目を光らせているようでその動きも緩やかになった。
暗い屋敷、もはや尊敬できない父、病気の母、責められる妹。フラウはそれらに追い詰められていた。自分がなんとかせねば。妹を、フラウリーゼをなんとでもゼノタールと婚約させねばとただ思い、その度にリリーの存在を疎ましく思った。
『第一王子も第二王子もくれてやった!!なのにどうして第三王子までも貴様らが奪っていく!?王族を独り占めしてどうしようというのだ!それに、王族も王族だ!!ブロッサム家とホワイトローズ家を対等に扱うのならば、婚約も平等にするべきだろう・・・・・・』と、王族への恨みも募っていった。
邪魔な存在であるリリーは、入学早々その姿が視界に入るだけでも虫唾が走り、怒りによる頭痛とともに心底に焦りを感じた。どうにかしなければブロッサム家の力が衰えてしまう。だが、どうにもならない自体にフラウは大人げなくもリリーへの嫌がらせで溜飲を下げようと思った。
それに、フラウはセイにも疑惑を抱いていた。社交界でリリーを目にしたときからセイのフラウリーゼへの熱が冷めたようで、嫌な予感を抱きつつも自分の立場を理解し、欲しい言葉をくれるセイと共に過ごしていた。だが後がなくなり焦るフラウに対し、セイはホワイトローズ家への悪意が薄く、怒りを感じるフラウを宥めるその姿に不信感を抱くようになったのだ。
『何故セイはそんなに平然としていられる!?フラウリーゼが王子と婚約できないとブロッサム家の立場が悪くなる。そんなこと、セイだって困るはずだ。ホワイトローズ家を罵る俺を落ち着かせるのは何故だ?どうして止める必要がある?悪いのはホワイトローズなのに・・・・・・。そうか。セイは所詮分家の息子。背負っているものの大きさが違うのだ。結局、本当に自分を理解してくれる存在などいないのだ・・・・・・』
諦めを感じ、やや冷めた気持ちでセイと接する中で、フラウはキャスティアという生徒と出会った。
彼との出会いで、フラウは変わってしまった――。
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