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しおりを挟むこいつなら、こいつなら自分の気持ちを理解してくれる。そう思っていた相手に裏切られた気持ちが、フラウのホワイトローズ家への恨みを加速させた。
そして忌々しいホワイトローズ家三男のリリーが入学してきた年。いよいよフラウも最上級生となり、今年度の祝賀会が憂うつに感じられ一人になりたくて学園の離れた庭園で一人過ごしていたとき、今まで見たことのなかったキャスティアという生徒に声をかけられた。
彼はブロッサム家を支持する家の中でも特に影響力のあるタイム家の三男で、何の目的で自分に近づいてきたのか最初は警戒をしたが、傷心していたフラウには彼の耳障りの良い賞賛の声が天使の声のように聞こえた。多少なりとも心が慰められた気がした。
キャスティアという男は口が上手く、その上頭も回るらしい。下心の見え透いた賛辞ではなく、フラウの辛さや苦労を慮って、優しく甘い声をかけてくる。
セイに疑心を抱いていたフラウは、次第にキャスティアと過ごす時間が増えていった。
セイならば眉を潜めて止めさせるホワイトローズ家への愚痴や悪口も、キャスティアはうんうんと頷いて同調を示してくれた。それだけで、今まで降り積もっていた黒い気持ちが軽くなった気がした。どうせわかるわけでもない、と思いながらも少しの期待を持ってブロッサム家での愚痴も零すと、驚くことに、キャスティアは笑った。眉間の皺が深くなり、やはりこんなことを話しても理解できないかと不快感を露わにしようとしたところ、キャスティアが淡い微笑みを向けながら『嬉しいです・・・・・・。フラウくんの、深い部分を僕に話してくれたことが・・・・・・』と言ったのだ。
さすがに驚かされたが、その瞬間嘘みたいに喉元までせり上がってきていた黒いものが、さぁっと引いていったのだった。
『僕にはフラウくんが背負っているみたいに大きなものはないけど、だからフラウくんの苦しみとかがわからないけど、僕で良かったら・・・僕にだけは何でも話していいから。どんな汚い心の内も、僕だけには打ち明けていいから』
似たような立場だが、所詮は背負うものの大きさが違ったセイ。こいつは自分と同じなんじゃないかと最初に思っただけに、実は違っていたとわかったときの落胆が大きかった。しかしキャスティアは、フラウとは立場が異なるのにも関わらず、心の距離が近く感じた。そしてやっとフラウは気づいた。『自分は自分のことを丸々理解して欲しかったのでない。ただ日々の湧き出てくる文句を、愚痴を、体内に溜め込んでヘドロのようにいこってくると自分でも息を吸うのが苦しくなるほどの黒い感情を吐き出せる場が・・・・・・、本音をただ聞いて、受け入れてくれる場が欲しかったのだ』ということを。
キャスティアと過ごす時間は楽しかった。もちろん、フラウリーゼを交えて皆で話す時間も大切だったが、笑顔のフラウリーゼを見ると大事にしたいと思う反面焦る気持ちも出てきてしまうため、いつもその相反する気持ちを抑えつつ無理に笑っていたという節がある。
それに、王子と婚約をという期待を家から持たれつつも特に王子に接近もしないフラウリーゼを見ていると、心のどこかからかふつふつと抱いてはいけない怒りが湧いてくるのだ。愛する妹に対しそんな感情を抱いてはいけない。それはわかっているだけに、一緒にいるのが辛かった。
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