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しおりを挟む「俺は・・・・・・書かない」
「なっ!?」
フラウがペンを折ると、キャスティアが明らかに焦ったような表情になった。
「一体どうしたっていうんですかっ!?ホワイトローズ家がさらに権力を持つことを阻止することができるんですよ!!?それに、今になって何故――」
「俺も不思議だ。今になってようやくわかった。俺も、お前も、魔女に操られていたってな」
「な、何を言うんですっ!?」
わかりやすく動揺を見せるキャスティアに、フラウは宣言をするための壇上から下りキャスティアに近づいていった。フラウリーゼを含め、ペンをへし折ったフラウに驚きの表情をしていた者たちは、フラウが何をするのかその動作に視線を注いでいる。
フラウは人をかき分け静かに近づいていき、とうとうキャスティアの目の前までやってきた。嫌な笑み、何かを企んでいるような含みのある表情、好青年風な顔つき・・・フラウはそのどれにも当てはまらない、それまでに見たことのない程に真面目な表情を、相対する相手に向かって見せていた。フラウの真っ直ぐな眼差しを受け、キャスティアの瞳はゆらゆらと波打った。
「フラウくん、僕君が何を言っているのかわからないよ。まさか君たちがフラウくんまでおかしくしたの――?」
「いい加減目を覚ませよっ!タイムっ!!」
矛先がゼノたちに向けられそうになったところで、フラウはいい加減にしろよとキャスティアの肩を掴み軽くその身体を揺さぶった。
「タイムっ、・・・・・・っタイムっ!!?」
すると突然キャスティアは気絶をしたかのように、身体から力が抜けふらりとその場に崩れ落ちてしまった。フラウや周りもギョッとし、フラウが彼の身体を支えながらしゃがみ込み彼の名前を呼ぶ。ギムリィやクォードたちもフラウの近くに寄り、医者を呼んだ後キャスティアの様子を窺う。
「んん・・・・・・あれ、ここは・・・・・・」
「タイムっ!!」
「あ・・・れ・・・・・・フラウ様・・・・・・?ここって・・・・・・あれ、僕自分のベッドで寝ていたような・・・・・・」
「「「!!!」」」
しばらくして目が覚めたキャスティアは今までとは似つかない程の気弱そうな声で、さらに今自分の置かれている状況がわかっていない様子であった。つい先ほどまでとは異なる口調、態度、そして困惑・・・・・・。
ギムリィたちは『やはり・・・・・・』と自分たちの推理が正しかったことを実感した時――、
「あらあら、気がついちゃったのね。残念・・・・・・」
「「「っ!!?」」」
壇上から滑らかな女の声がし、皆一斉にそちらへ視線を向けるとそこには牧師の格好をした魔女――リリアナが唇の片方の端を引き上げ微笑みながら立っていた。ロイズから聞いた容姿と全く変わらず、老いの一つも見せてない姿で。
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