義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月

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力なく言葉を紡ぐカノン。

「彼女は記憶を失ったままなのに、昔の事を無理に思い出させるのが忍びなくてな・・・それに、突然『西の王子』などと聞かされて訳も分からず困惑するだけだろう。拒絶されるかもしれない・・・そう考えたら、自分から名乗り出ることも説明することも出来なかった」

彼のエレーヌに対する思いを聞けば聞くほど、メリダは昨日まで敵だと思っていたはずのこの一途な男の願いを、どうにか成就させてやりたいと思うようになっていた。

幾日か前に、『義妹が泣いた』とエレーヌから聞いたときは、とんでもない狸だと思ったはずなのに、今ではその真っ直ぐな思い故に堪えきれず流れてしまった涙なのだろうと理解し、彼に同情心すら湧いてくる。

「そういうお考えでしたか。けれど、その心配は無用でしょうね。お嬢様ははっきりと記憶を思い出しているわけでは無いようですが、『西の王子』が迎えに来られたとお知りになったら喜ばれるに違いありません」

「何故、そう言える?」

「私は自分の出自について意識することもなく、おとぎ話として当家に伝わっていたお二人の話をお嬢様が幼いころから聞かせていました。エレーヌ様は、その話を特別気に入り、自分にも『西の王子』のような方が現れないだろうかと折に触れて仰っておられました。
それに、あなたが義妹に扮して、事情があるとはいえあれだけの悪行を働いたにも関わらず、お嬢様はあなたに対して全く嫌悪感を抱いておらず、寧ろかなり好意的なようでしたし・・・意識上はどうあれ、無意識的にはあなたの正体を感じ取っているのでは?」

「それは、エレーヌは記憶を取り戻す準備が出来ていると受け取っても良いのだろうか?」

切実な表情でメリダに問うカノン。

メリダは、自分の勝手な考えではあるがと付け加えたうえで考えを述べた。

「・・・そこまでは言いきれませんが、あなたがこの屋敷にやってきてからというもの、やはりどこか共鳴されるようなところがあるのか・・・お嬢様は以前にも増してお二人の過去である、あの話に固執されるようになりました。
ご自身でもその心境の変化が気になっているようで、近頃は『架空の話にそこまで入れ込むなど、自分は精神に異常をきたしているのでは?』とお考えになってもいるようなのです・・・」

「それは・・・」

「そういった具合ですから、このまま隠し続けるよりも、いっそあなたから真実を告げるなり何なりしていただいて、ご自身の過去について思い出していただいた方が、お嬢様の為にも良いと思うのです」

それを聞いたカノンはあらたまった表情で、メリダに言った。

「そうか・・・ならば、お前に一つ頼みたい事がある」

「何でしょう?出来ることであれば、何なりと」

「眠っているエレーヌに、お前の一族が聖女から授けられた『祝福』の力の一部を流しこんでみてくれないか?
その方が私が話をするよりも、『実感』してもらうには確実だ。
魔力や聖女の法力には、記録や感情を蓄積する性質があるのは知っているか?
元々彼女が持っていた力の一部を本人に還元すれば、先ほどお前が司祭の記憶を見たように、彼女もかつての記憶を自然に思い出すはずだ。力の使い方は私が教えよう・・・」
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