22 / 29
21
しおりを挟む
「ところで、お嬢様のお輿れの話は勿論ご存じでしょうが、それについては、どうなさるおつもりなのです?相手が国王陛下だからと言って、このまま黙っているおつもりは無いのでしょう?」
メリダは一番の懸念事項について、カノンに投げかけた。
「・・・王宮に出向いたエレーヌを、国王の目の前で攫おうかと思っている」
「随分大胆ですね。まぁ、案外お嬢様はそういう劇的な演出がお好きなので、悪くないと思いますよ」
「そうか?ともかく、エレーヌは自分が輿入れを断ることで生家に迷惑が掛からぬかどうかを一番心配しているようだったが、この方法を取ればエレーヌも、家も何も責めを負う事は無いだろうと思ってな。
それと、魅了を解いたうえで、エレーヌの父の意向も確認してみたが、彼女が嫌なら自分が不遇を被ったとしても希望をきいてやりたいという様子でもあった」
それから、カノンはバートンと示し合わせたエレーヌの狂言誘拐についての詳細を、メリダに語りだした。
エレーヌと国王が会っているところに、敢えて一旦義妹のカノンとして乱入してから元の姿へと戻り、彼女を誘拐するのだという。
義妹の存在自体が化物で、エレーヌはその化物に攫われたのだという印象を植え付けることができれば、皆が正気に戻った途端に矛盾しかない義妹という存在そのものの矛盾も解消できる。
そして、二人に関わった人々は皆、自覚なく、人ならざる者に誑かされていた被害者なのだという理屈で、全てが丸く収まるはずだと。
対外上は、エレーヌが義妹を装っていた化物の人身御供になったというシナリオだ。
理由については、わざわざこちらで考えずとも市井の噂好き達が、適当なそれらしい話を大袈裟につけてくれるだろう。
「なるほど、それで問題なさそうですね。事前にお嬢様にもお伝えしておきましょうか?」
「いや・・・その方が良いのだろうが・・・一旦、エレーヌに私の正体を告げてしまったら、もう自分の気持ちに歯止めが効きそうにない・・・もう一度、事をなす為に義妹を装うことなど出来なくなってしまいそうだ・・・」
先ほど狂言誘拐について語っていた真面目で頼もしい様子とは打って変わり、急に乙女のように顔を赤らめ言葉を詰まらせるカノンを見たメリダは、溜息をついた。
「はいはい、わかりました。そういうことでしたら、内緒にした方が良さそうですね」
「ただ、一つ危惧があってな・・・国王が喰らいついてきた場合に荒事にならないように気をつけなくては・・・と思ってはいるのだが」
「『西の王子』であるあなたが、荒事に何の心配があるというのです?・・・と言いたいところですが、お強いというのは物語の脚色で、実際のあなたはひ弱なので、相手に遅れを取りそうだということですか?
見たところ筋骨隆々という訳でもないですし、たしかに全然強そうには見えませんね・・・」
メリダは疑わし気に目を細めた。
「ぬかせ!そうではない。うっかり相手を消してしまわないように、という心配だ。
自分で言うのもどうかと思うが、私はエレーヌに関しては腑抜けだが、荒事には誰よりも自信がある!
だが、彼女は争いごとが嫌いだから、出来るだけそういった血生臭い事は避けたいと思っている。昔はそうせざるを得ない世情があったが、今は違う。
それに、諦めがたくはあるが、記憶を取り戻したうえで、もし彼女が私の事を望まなければ、解放しようとも思っている・・・」
カノンはその美しい顔を曇らせて言った。
「そこまでとは・・・。あなたがなさる事は、いつも傍から見れば酷い事ばかりでしたが、本当にお嬢様の事を心から大切に思っていらっしゃるのですね」
「エレーヌの気持ちを大切に思うのは当たり前だ」
「大丈夫ですよ、ご自分に自信を持って!こんな可愛らしい方をお嬢様が嫌いだと仰るはずはありませんよ」
メリダはにっこりと笑って言った。
「私はお前の何倍生きていると思っている?!・・・可愛らしいなどと言われる覚えはない!!」
カノンは照れ隠しか、目線を横にやった。
メリダは一番の懸念事項について、カノンに投げかけた。
「・・・王宮に出向いたエレーヌを、国王の目の前で攫おうかと思っている」
「随分大胆ですね。まぁ、案外お嬢様はそういう劇的な演出がお好きなので、悪くないと思いますよ」
「そうか?ともかく、エレーヌは自分が輿入れを断ることで生家に迷惑が掛からぬかどうかを一番心配しているようだったが、この方法を取ればエレーヌも、家も何も責めを負う事は無いだろうと思ってな。
それと、魅了を解いたうえで、エレーヌの父の意向も確認してみたが、彼女が嫌なら自分が不遇を被ったとしても希望をきいてやりたいという様子でもあった」
それから、カノンはバートンと示し合わせたエレーヌの狂言誘拐についての詳細を、メリダに語りだした。
エレーヌと国王が会っているところに、敢えて一旦義妹のカノンとして乱入してから元の姿へと戻り、彼女を誘拐するのだという。
義妹の存在自体が化物で、エレーヌはその化物に攫われたのだという印象を植え付けることができれば、皆が正気に戻った途端に矛盾しかない義妹という存在そのものの矛盾も解消できる。
そして、二人に関わった人々は皆、自覚なく、人ならざる者に誑かされていた被害者なのだという理屈で、全てが丸く収まるはずだと。
対外上は、エレーヌが義妹を装っていた化物の人身御供になったというシナリオだ。
理由については、わざわざこちらで考えずとも市井の噂好き達が、適当なそれらしい話を大袈裟につけてくれるだろう。
「なるほど、それで問題なさそうですね。事前にお嬢様にもお伝えしておきましょうか?」
「いや・・・その方が良いのだろうが・・・一旦、エレーヌに私の正体を告げてしまったら、もう自分の気持ちに歯止めが効きそうにない・・・もう一度、事をなす為に義妹を装うことなど出来なくなってしまいそうだ・・・」
先ほど狂言誘拐について語っていた真面目で頼もしい様子とは打って変わり、急に乙女のように顔を赤らめ言葉を詰まらせるカノンを見たメリダは、溜息をついた。
「はいはい、わかりました。そういうことでしたら、内緒にした方が良さそうですね」
「ただ、一つ危惧があってな・・・国王が喰らいついてきた場合に荒事にならないように気をつけなくては・・・と思ってはいるのだが」
「『西の王子』であるあなたが、荒事に何の心配があるというのです?・・・と言いたいところですが、お強いというのは物語の脚色で、実際のあなたはひ弱なので、相手に遅れを取りそうだということですか?
見たところ筋骨隆々という訳でもないですし、たしかに全然強そうには見えませんね・・・」
メリダは疑わし気に目を細めた。
「ぬかせ!そうではない。うっかり相手を消してしまわないように、という心配だ。
自分で言うのもどうかと思うが、私はエレーヌに関しては腑抜けだが、荒事には誰よりも自信がある!
だが、彼女は争いごとが嫌いだから、出来るだけそういった血生臭い事は避けたいと思っている。昔はそうせざるを得ない世情があったが、今は違う。
それに、諦めがたくはあるが、記憶を取り戻したうえで、もし彼女が私の事を望まなければ、解放しようとも思っている・・・」
カノンはその美しい顔を曇らせて言った。
「そこまでとは・・・。あなたがなさる事は、いつも傍から見れば酷い事ばかりでしたが、本当にお嬢様の事を心から大切に思っていらっしゃるのですね」
「エレーヌの気持ちを大切に思うのは当たり前だ」
「大丈夫ですよ、ご自分に自信を持って!こんな可愛らしい方をお嬢様が嫌いだと仰るはずはありませんよ」
メリダはにっこりと笑って言った。
「私はお前の何倍生きていると思っている?!・・・可愛らしいなどと言われる覚えはない!!」
カノンは照れ隠しか、目線を横にやった。
17
あなたにおすすめの小説
転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。
皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」
そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。
前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。
父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。
使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。
え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……?
その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……?
あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ!
能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する
ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。
卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。
それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか?
陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。
聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。
青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。
婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。
王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる