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27.エピローグ
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後日、現国王の報告と申請によって、魔術史学会経由で二点の重大な発表がされた。
一つ目は、伝承にあった西の国の王子の生存について。
そして二つ目は、その『西の王子』が新たな国王に就任するということだった。
もちろん、王宮でのエレーヌ誘拐未遂については、箝口令が敷かれ、そもそもそのような出来事自体が存在しなかったという事になっていた。
魔術で眠らされていた近衛達も、蒸し返せば自らの恥を晒すと知ってか、誰一人として苦情を告げてくる者は居なかった。
「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたが、上手くおさまって良かった、良かった!」
「バートン、お前はまた私の傍で働く気はないか?」
「カノン様の?」
「その気があるなら、あらためて宰相として任命するが、どうだ?あの人の王から、自分のせいでお前まで職を失うのは理不尽だから、どうか私にお前を雇ってほしいと頼み込まれた」
バートンはやれやれという顔をした。
「全くあの方は・・・。あなたは聖女様も取り戻して、もう私の存在など不要でしょうが、あの方は私が居ないと駄目なんです。お誘いは有難いですが、お断りしますよ。私はあの方について行こうと思っていますから。一人で旅なんて、危なっかしくて放っておけませんし。そのうち、手紙は書きますよ」
「そうか、達者でな」
「カノン様も、お幸せに・・・」
◇
新たな王となり、多忙な日々を送るカノンは、エレーヌとつかの間の休息を過ごしていた。
カノンは、メリダからエレーヌにも『善意の悪行』についての説明をするべきだという言葉の通り、すべてを話し、謝罪も済ませ、すっきりとした気分だったが、ここ数日エレーヌがどこか浮かない表情なのが気になった。
「どこか具合が悪いのですか・・・エレーヌ」
心配そうな表情をして、彼女の顔を覗き込むカノン。
「カノン・・・あの時は勢いで、あなたを傍で支えたいなどと口走ってしまいましたけれど、正直、聖女の力を失っている今の私などあなたにとって何の価値も無いのではないですか?」
「エレーヌ、私はあなたが聖女だから、愛したのではありませんよ。あなたが、あなただから愛おしいと思ったのです。あなたの優しい心が、私を暗闇から救い出してくれたから、私は今もここにいる・・・。
もし、初めからあなたに力が無かったとしても、私はあなたに惹かれていたでしょう。そして、同じようにあなたを求めたでしょう・・・だから、もう私を独りにはしないで」
エレーヌには、今の自分と比べて随分年長で、いつでも自分を守ろうとしてくれる目の前のこの男が、どこか守ってやらなくてはならない幼い子供のように感じられた。
「カノン・・・!」
思わずカノンを抱きしめたエレーヌの身体から、白い閃光が迸った。
その瞬間、エレーヌは聖女の力を自ら取り戻したのだった。
前世、力のせいで翻弄された彼女は、どこかでその力を恐れ、同時にその力があるからこそ自分は他人から求められるのだという、強い思考に囚われていた。
それゆえに、今生では無意識に聖女としての力を拒絶し、自ら封じ込めていたのだった。
だが、今、自らの愛する者から、その力があろうと無かろうと彼女自身が必要なのだと、心からの告白を受けたエレーヌは、長く自分自身を縛り付けていた重圧から解き放たれたのだった。
◇
千年の時を経て帰還した西の国の王子カノンは、新しい西の国の王となり、聖女エレーヌを王妃として迎えた。
長き命を持つ王は残りの時間を愛する王妃と分け合った。
二人の治めた国は争いもなく、平和に、末永く続いたという。
fin.
=================================
本篇は、これにて完結です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次話はおまけで、ロベルトの顛末です。
一つ目は、伝承にあった西の国の王子の生存について。
そして二つ目は、その『西の王子』が新たな国王に就任するということだった。
もちろん、王宮でのエレーヌ誘拐未遂については、箝口令が敷かれ、そもそもそのような出来事自体が存在しなかったという事になっていた。
魔術で眠らされていた近衛達も、蒸し返せば自らの恥を晒すと知ってか、誰一人として苦情を告げてくる者は居なかった。
「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたが、上手くおさまって良かった、良かった!」
「バートン、お前はまた私の傍で働く気はないか?」
「カノン様の?」
「その気があるなら、あらためて宰相として任命するが、どうだ?あの人の王から、自分のせいでお前まで職を失うのは理不尽だから、どうか私にお前を雇ってほしいと頼み込まれた」
バートンはやれやれという顔をした。
「全くあの方は・・・。あなたは聖女様も取り戻して、もう私の存在など不要でしょうが、あの方は私が居ないと駄目なんです。お誘いは有難いですが、お断りしますよ。私はあの方について行こうと思っていますから。一人で旅なんて、危なっかしくて放っておけませんし。そのうち、手紙は書きますよ」
「そうか、達者でな」
「カノン様も、お幸せに・・・」
◇
新たな王となり、多忙な日々を送るカノンは、エレーヌとつかの間の休息を過ごしていた。
カノンは、メリダからエレーヌにも『善意の悪行』についての説明をするべきだという言葉の通り、すべてを話し、謝罪も済ませ、すっきりとした気分だったが、ここ数日エレーヌがどこか浮かない表情なのが気になった。
「どこか具合が悪いのですか・・・エレーヌ」
心配そうな表情をして、彼女の顔を覗き込むカノン。
「カノン・・・あの時は勢いで、あなたを傍で支えたいなどと口走ってしまいましたけれど、正直、聖女の力を失っている今の私などあなたにとって何の価値も無いのではないですか?」
「エレーヌ、私はあなたが聖女だから、愛したのではありませんよ。あなたが、あなただから愛おしいと思ったのです。あなたの優しい心が、私を暗闇から救い出してくれたから、私は今もここにいる・・・。
もし、初めからあなたに力が無かったとしても、私はあなたに惹かれていたでしょう。そして、同じようにあなたを求めたでしょう・・・だから、もう私を独りにはしないで」
エレーヌには、今の自分と比べて随分年長で、いつでも自分を守ろうとしてくれる目の前のこの男が、どこか守ってやらなくてはならない幼い子供のように感じられた。
「カノン・・・!」
思わずカノンを抱きしめたエレーヌの身体から、白い閃光が迸った。
その瞬間、エレーヌは聖女の力を自ら取り戻したのだった。
前世、力のせいで翻弄された彼女は、どこかでその力を恐れ、同時にその力があるからこそ自分は他人から求められるのだという、強い思考に囚われていた。
それゆえに、今生では無意識に聖女としての力を拒絶し、自ら封じ込めていたのだった。
だが、今、自らの愛する者から、その力があろうと無かろうと彼女自身が必要なのだと、心からの告白を受けたエレーヌは、長く自分自身を縛り付けていた重圧から解き放たれたのだった。
◇
千年の時を経て帰還した西の国の王子カノンは、新しい西の国の王となり、聖女エレーヌを王妃として迎えた。
長き命を持つ王は残りの時間を愛する王妃と分け合った。
二人の治めた国は争いもなく、平和に、末永く続いたという。
fin.
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本篇は、これにて完結です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次話はおまけで、ロベルトの顛末です。
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