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閑話:国王の贈り物
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新国王が就任し、しばらく経ったある日。
伯爵家のロベルトの元に、一通の書状が届いた。
それは、王宮からの招待状だった。
今、国内は改革の真っ最中で、王宮にも次々と新しい部署が増え、新たに優秀な人材を募集しているという噂だった。
どこからか自分の優秀さが噂になり、それを聞きつけた上の人間が、自分を高官として登用したいという話に違いないと舞い上がるロベルト。
先日、なぜか王宮経由で、ブラン男爵家のカノンとの婚約を解消するようにという一方的な通達があってからというもの、ほかに付き合いのあった幾人かの女からも全て袖にされ、散々なことが続いていたが、やっと自分にも運が向いてきたのだろうとロベルトは思ったのだった。
カノンは良い女だったのに、まだ一度も手を付けられないうちに惜しいことをした・・・。
きっと、新国王の愛妾にでもするために、王宮が間に入って、自分と縁を切らせたのだろう。
わざわざ他人の女を奪うだなんて、新国王はとんだ好色の暴君らしい。
今回の呼び出しは、婚約者を奪ったその罪滅ぼしという事だろうか。
きっと良い知らせに違いない。
◇
王の前に呼び出されたロベルトは低く首を垂れた。
(国王陛下直々のお話など、素晴らしい話に違いない!)
ロベルトの期待は最高潮に達していた。
国王は口を開いた。
「久しいな、ロベルト」
新国王に会ったことなど無いはずのロベルトは、急いで記憶を手繰り寄せたが、どうにも思い当たる節がない。
さりげなく目線を上げて王の顔を確認してみるが、銀髪に赤い瞳の美丈夫、そもそも、こんなに印象深い男は一度会ったら忘れられないはずだ。
「大変失礼かと存じますが・・・失念してしまい・・・」
国王はニヤリと笑って言った。
「”もう私のことをお忘れになるだなんてずいぶんつれないお方ですね?ロベルト様”」
人外の美しさではあるが、どう見ても女性には見えない国王の口から、聞き覚えのある娘の声が紡ぎだされた事にぎょっとしたロベルトは、国王を二度見した。
「お前は記憶力が悪いらしいな。私はお前のよく知っているはずのカノンだ。何、そんなに驚かなくでも良いだろう?」
「・・・?!」
ロベルトはてっきり、カノンは国王の愛妾に選ばれたのだと思いこんでいたが、それは違って、彼女が、彼で、国王で・・・。
ロベルトは想定外の現実に頭が追い付かなかった。
「色々事情があってな。今日は、かねてから世話になっていたお前に、一つ贈り物をしようと思って呼んだのだ」
「・・・贈り物?」
「どうだ、受け取ってくれるか?」
何が起こっているのか、状況の整理がつかないにもかかわらず、とりあえず、貰えるものは貰っておいた方が得だと判断したロベルトは、贈り物が何なのかわからないまま咄嗟に受け取るという返事をした。
「はい・・・ありがたく頂戴いたします」
「そうか!そうか、言ったな!私からの贈り物を受け取ってくれるか、嬉しいぞ!」
カノンがロベルトに贈ったのはある魔術だった。
本人が生きている限り半永久的に解けることのないその魔術は、一種契約に近いもので、一方的には成立しない。
必ず、本人の合意がなくては掛けることが出来ないものであった。
国王の様子を不審に思ったロベルトだったが、時はすでに遅かったのだった。
「お前は、以前から女が好きで好きで仕方が無いようだったから、特別にお前を女にしてやるという贈り物をやろう!嬉しいだろう?何、礼は必要ないぞ、ロベルタ」
◇
令嬢となったロベルタは、実家の資金難を救うため、その美貌を生かし年老いた裕福な商人の元に嫁いだという・・・。
伯爵家のロベルトの元に、一通の書状が届いた。
それは、王宮からの招待状だった。
今、国内は改革の真っ最中で、王宮にも次々と新しい部署が増え、新たに優秀な人材を募集しているという噂だった。
どこからか自分の優秀さが噂になり、それを聞きつけた上の人間が、自分を高官として登用したいという話に違いないと舞い上がるロベルト。
先日、なぜか王宮経由で、ブラン男爵家のカノンとの婚約を解消するようにという一方的な通達があってからというもの、ほかに付き合いのあった幾人かの女からも全て袖にされ、散々なことが続いていたが、やっと自分にも運が向いてきたのだろうとロベルトは思ったのだった。
カノンは良い女だったのに、まだ一度も手を付けられないうちに惜しいことをした・・・。
きっと、新国王の愛妾にでもするために、王宮が間に入って、自分と縁を切らせたのだろう。
わざわざ他人の女を奪うだなんて、新国王はとんだ好色の暴君らしい。
今回の呼び出しは、婚約者を奪ったその罪滅ぼしという事だろうか。
きっと良い知らせに違いない。
◇
王の前に呼び出されたロベルトは低く首を垂れた。
(国王陛下直々のお話など、素晴らしい話に違いない!)
ロベルトの期待は最高潮に達していた。
国王は口を開いた。
「久しいな、ロベルト」
新国王に会ったことなど無いはずのロベルトは、急いで記憶を手繰り寄せたが、どうにも思い当たる節がない。
さりげなく目線を上げて王の顔を確認してみるが、銀髪に赤い瞳の美丈夫、そもそも、こんなに印象深い男は一度会ったら忘れられないはずだ。
「大変失礼かと存じますが・・・失念してしまい・・・」
国王はニヤリと笑って言った。
「”もう私のことをお忘れになるだなんてずいぶんつれないお方ですね?ロベルト様”」
人外の美しさではあるが、どう見ても女性には見えない国王の口から、聞き覚えのある娘の声が紡ぎだされた事にぎょっとしたロベルトは、国王を二度見した。
「お前は記憶力が悪いらしいな。私はお前のよく知っているはずのカノンだ。何、そんなに驚かなくでも良いだろう?」
「・・・?!」
ロベルトはてっきり、カノンは国王の愛妾に選ばれたのだと思いこんでいたが、それは違って、彼女が、彼で、国王で・・・。
ロベルトは想定外の現実に頭が追い付かなかった。
「色々事情があってな。今日は、かねてから世話になっていたお前に、一つ贈り物をしようと思って呼んだのだ」
「・・・贈り物?」
「どうだ、受け取ってくれるか?」
何が起こっているのか、状況の整理がつかないにもかかわらず、とりあえず、貰えるものは貰っておいた方が得だと判断したロベルトは、贈り物が何なのかわからないまま咄嗟に受け取るという返事をした。
「はい・・・ありがたく頂戴いたします」
「そうか!そうか、言ったな!私からの贈り物を受け取ってくれるか、嬉しいぞ!」
カノンがロベルトに贈ったのはある魔術だった。
本人が生きている限り半永久的に解けることのないその魔術は、一種契約に近いもので、一方的には成立しない。
必ず、本人の合意がなくては掛けることが出来ないものであった。
国王の様子を不審に思ったロベルトだったが、時はすでに遅かったのだった。
「お前は、以前から女が好きで好きで仕方が無いようだったから、特別にお前を女にしてやるという贈り物をやろう!嬉しいだろう?何、礼は必要ないぞ、ロベルタ」
◇
令嬢となったロベルタは、実家の資金難を救うため、その美貌を生かし年老いた裕福な商人の元に嫁いだという・・・。
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ロ、ロベルトぉぉぉー!!🤣
Jelsomina_Kさま
感想ありがとうございます。
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おゆうさま
いつもありがとうございます。
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おもしろい!
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