妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

第９話

　数日後、マルスは弟マルナールの屋敷を訪れる。この時、エミリアもリリアナもいない。マルスの訪問の目的は、エミリアとリリアナの間の複雑な関係について、マルナールと話し合うことだった。

　マルナールはマルスを歓迎し、二人は屋敷の応接室で落ち着いて話し合う。

「兄さん、どうしてここに？」

　マルナールが尋ねると、マルスは深刻な表情で答える。

「エミリアとリリアナのことで話があるんだ」


　マルスはマルナールの屋敷に訪れるが、彼の心には弟に対する怒りが渦巻いていた。エミリアを裏切った理由について、彼はマルナールに詰め寄る。

「なぜエミリアを裏切ったんだ？　彼女は何も悪くない」

　マルナールは驚愕して反応する。彼はまさか自分の兄がエミリアの姉と一緒に住んでいるとは思ってもみなかった。

「兄さん、何を言っているんだ？ エミリアと一緒に住んでいるって本当か？」

　マルスは冷静さを保ちつつ、マルナールに真実を伝える。「あぁ、エミリアは今、俺と一緒にいる。彼女は自分の人生を再建しようとしているんだ」

　マルナールは自分の過去の行動について考え込み、エミリアへの後悔を口にする。

「エミリアには本当に申し訳ないと思っている。彼女を傷つけるつもりはなかった…」

　マルスはマルナールの言葉に反応し、エミリアへの深い愛情を表現する。

「エミリアは強い女性だ。彼女は過去を乗り越え、新しい人生を歩んでいる。私はただ、彼女のそばで支えたいだけだ」

　会話が進む中で、マルナールは自分の行動に対する反省を深め、エミリアとの関係をどう扱うべきかを考え始める。

「エミリアが幸せになることが、今は最も大切だと思う」


　マルスはマルナールに強い口調で問い詰める。

「それなのにお前ときたら……傷付けるつもりがないならどうしてエミリアを捨てた？」

　マルナールは動揺しつつも、自分の考えを打ち明ける。

「リリアナの方が魅力的だったんだ……エミリアよりもずっと優れている！　だから彼女に乗り換えた。それがどうしたんだ？」

　そして、少し間を開けた後。

「少しでも良い女がいれば乗り換えるのが常識だろう？」

　マルナールは言い放つ。

　マルスはマルナールの言葉に深い失望と怒りを感じる。

「お前は何もわかっていない！　エミリアはただ愛されたいと願っていただけだ……お前のような考え方が、彼女を傷つけたんだ」

　マルナールはマルスの怒りに圧倒され、自分の行動を正当化しようとするが、言葉が出ない。

「でも、リリアナは……」

「リリアナがどうであれ、エミリアを傷つけたことに変わりはない！　お前の自己中心的な選択が、彼女の心を壊したんだ」

　マルスは冷静に批判する。

　マルスはマルナールの屋敷を後にし、心重くエミリアのもとへ戻る。彼はエミリアに対する自分の責任を感じつつ、彼女の幸せを願っていた。