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最終話「風を継ぐ者たち」
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穏やかな春の風が、世界中を駆け抜けていた。
北の凍原、南の教都、東の商港、そして西の砂の都。
そのすべての空気に、どこか同じ香りが混じっていた。
――それは“初恋草”の香り。
かつて、一人の追放令嬢が、泥だらけの畑で咲かせた小さな花の匂い。
いまやそれは、世界を結ぶ“風”になっていた。
王都《アリュール学院》。
香りの塔の前で、四人の弟子たちが集まっていた。
ノアは北方の風をまとい、
エリスは祈りの光を抱き、
カイルは笑い声を、
リディアは法の書を手に持っていた。
彼らの前には、クラリッサの形見――
小さな香瓶がひとつ、並んでいる。
封を開けると、風がふわりと流れ出た。
それは、彼女の声だった。
> 「あなたたちへ。
> 香りは、誰かが残すものではありません。
> あなたが感じ、信じ、受け継ぐものですの。」
四人はそれぞれの胸に手を当て、微笑んだ。
「先生……風は、確かにここにあります。」
その夜、学院の庭に焚き火が灯った。
かつてクラリッサとレオンが語り合ったあの丘の上。
今、弟子たちが同じ場所で、次の時代を語っていた。
ノアが空を見上げる。
「……風って、見えないけど、確かに誰かを繋いでるんだな。」
カイルが笑う。
「俺たちももう、“先生の風”の中にいるってことか。」
エリスが祈るように手を組む。
「香りは、命の記憶……なら、先生はいつまでも生きていますわ。」
リディアが頷く。
「そして、わたしたちはそれを“法”として残す。
この風が、決して誰にも支配されないように。」
夜風が吹いた。
焚き火の炎が揺れ、星が瞬く。
ふと、空の向こうから、聞き覚えのある声が流れてくる。
> 「図太く生きることを、忘れないでくださいませ。」
四人が顔を上げる。
そこには、風に溶けるように現れた一人の女性の姿。
金の髪、白いドレス、そして微笑み。
クラリッサ・ヴァレンティーヌ――
風の女王にして、ただの“おせっかいな令嬢”。
「……先生。」
彼女は微笑み、静かに手を広げた。
「風はあなたたちのものですわ。
どうか、笑って――生きてくださいな。」
言葉が風に溶け、
光の粒となって夜空に散った。
朝。
学院の塔の上に、新しい旗が掲げられた。
その旗には、クラリッサが初めてこの地に来たときに掲げた言葉が刺繍されていた。
> “図太く、優雅に生きること。”
風が吹き、旗が大きくはためく。
子どもたちが走り出し、笑い声が広場に満ちる。
世界の風は再びめぐり、
香りは人から人へ、時代を超えて受け継がれていった。
――その日、遠くの空の下で、
初恋草の花がひっそりと咲いた。
風が通り過ぎ、
その花弁をやさしく揺らす。
まるで、クラリッサの声が再び囁いているように。
> 「さあ、今日も笑っていきましょうか。
> この世界は、まだまだ香りが足りませんもの。」
北の凍原、南の教都、東の商港、そして西の砂の都。
そのすべての空気に、どこか同じ香りが混じっていた。
――それは“初恋草”の香り。
かつて、一人の追放令嬢が、泥だらけの畑で咲かせた小さな花の匂い。
いまやそれは、世界を結ぶ“風”になっていた。
王都《アリュール学院》。
香りの塔の前で、四人の弟子たちが集まっていた。
ノアは北方の風をまとい、
エリスは祈りの光を抱き、
カイルは笑い声を、
リディアは法の書を手に持っていた。
彼らの前には、クラリッサの形見――
小さな香瓶がひとつ、並んでいる。
封を開けると、風がふわりと流れ出た。
それは、彼女の声だった。
> 「あなたたちへ。
> 香りは、誰かが残すものではありません。
> あなたが感じ、信じ、受け継ぐものですの。」
四人はそれぞれの胸に手を当て、微笑んだ。
「先生……風は、確かにここにあります。」
その夜、学院の庭に焚き火が灯った。
かつてクラリッサとレオンが語り合ったあの丘の上。
今、弟子たちが同じ場所で、次の時代を語っていた。
ノアが空を見上げる。
「……風って、見えないけど、確かに誰かを繋いでるんだな。」
カイルが笑う。
「俺たちももう、“先生の風”の中にいるってことか。」
エリスが祈るように手を組む。
「香りは、命の記憶……なら、先生はいつまでも生きていますわ。」
リディアが頷く。
「そして、わたしたちはそれを“法”として残す。
この風が、決して誰にも支配されないように。」
夜風が吹いた。
焚き火の炎が揺れ、星が瞬く。
ふと、空の向こうから、聞き覚えのある声が流れてくる。
> 「図太く生きることを、忘れないでくださいませ。」
四人が顔を上げる。
そこには、風に溶けるように現れた一人の女性の姿。
金の髪、白いドレス、そして微笑み。
クラリッサ・ヴァレンティーヌ――
風の女王にして、ただの“おせっかいな令嬢”。
「……先生。」
彼女は微笑み、静かに手を広げた。
「風はあなたたちのものですわ。
どうか、笑って――生きてくださいな。」
言葉が風に溶け、
光の粒となって夜空に散った。
朝。
学院の塔の上に、新しい旗が掲げられた。
その旗には、クラリッサが初めてこの地に来たときに掲げた言葉が刺繍されていた。
> “図太く、優雅に生きること。”
風が吹き、旗が大きくはためく。
子どもたちが走り出し、笑い声が広場に満ちる。
世界の風は再びめぐり、
香りは人から人へ、時代を超えて受け継がれていった。
――その日、遠くの空の下で、
初恋草の花がひっそりと咲いた。
風が通り過ぎ、
その花弁をやさしく揺らす。
まるで、クラリッサの声が再び囁いているように。
> 「さあ、今日も笑っていきましょうか。
> この世界は、まだまだ香りが足りませんもの。」
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