この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜

妄想屋さん

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3話

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 その日、《ノア・クロス学園》の中庭では、戦術育成科と一般教養科の合同で、バイオギアの模擬知識演習が行われていた。

 といっても、実際にバイオギアを装着するわけではなく、訓練用障害物コースをペアで走り抜けるだけの軽いものだ。

「よーし、文哉くん! 次のターンはロープの下くぐりね! 腰、低くして――はい!」

 しずくはそう声をかけながら、自分が先行して走る。
 振り返ると、文哉もそれなりに体を動かせている様子で、頑張ってついてきていた。

「……ふぅ。けっこう、運動量あるな……」

「ふふっ、ちょっと疲れた?」

「正直、なめてた……。でも、こうして体動かせるの、気持ちいいな」

 文哉が額の汗を拭って笑う。
 その笑顔は、どこか無防備で、少年のようで。

 ――そのとき。

(……ん?)

 しずくの視線が、ふと止まる。

 汗を吸った文哉のシャツが、薄く肌に貼りついていた。
 胸元から腹にかけて、輪郭がうっすらと透け、太陽の光を受けて淡く浮かび上がっている。

(……えっ)

 胸のあたりが、ドクン、と鳴った。

 目を逸らそうとするのに、できない。
 意識した瞬間、なぜか呼吸が浅くなってしまう。

 そのわずかな違和感に、自分でも驚く。

(なんで……あたし、今……)

 護衛として、常に冷静に、状況判断に長けたしずく。
 文哉が“男子”であることはもちろん知っていたし、守るべき対象として距離感を保ってきた。

 でも、今――視線が勝手に追ってしまうのは、「護る相手」じゃなくて。

 ひとりの“異性”として、目の前に立っている彼だった。

「……しずく? どうかした?」

「えっ!? あっ、な、なんでもないっ! 大丈夫、全然平気っ!」

 しずくは顔を横に向けて、ぶんぶんと頭を振る。

(落ち着け、海里しずく。あたしは護衛、そう、護衛なんだからっ!)

 でも、顔が火照ってくるのを止められなかった。
 喉が乾く。風が急に熱を持ったように感じる。

(あーもう、あたし……)

 気づいてしまった。

 文哉のことを「守りたい」と思ったのは、きっと、護衛としてだけじゃなかったんだ――と。

 目の前で、汗に濡れたシャツを軽く持ち上げて仰ぐ彼の姿。
 その仕草ひとつに、心がどうしようもなく揺れてしまう。

「しずく?」

「っ……なんでもないってばっ!」

 思わず声を上げてしまった。

 文哉が首を傾げるその顔を、しずくは見られなかった。
 自分の顔が、どれだけ赤くなっているのか、わかりすぎてしまっていたから。

✿✿✿✿

 模擬演習が終わった中庭。ベンチに腰を下ろした文哉は、シャツの裾を軽く引っ張って汗をぬぐう。
 陽光に濡れた生地が、ほんのりと身体のラインに沿って貼りついていた。

「文哉くん、おつかれさま! はい、水っ!」

 海里しずくが明るくボトルを差し出す。
 髪をひとつにまとめた彼女の表情は、いつも通り快活で、どこか得意げだった。

「ありがとう。なんだか、すっかり体力テストみたいだったな……」

「ふふっ、でも楽しそうだったよ? けっこう動けてたし!」

「まあ、前の世界じゃ寝たきりだったから、こうして汗かけるのも新鮮っていうか」

「へえ……」

 しずくはその言葉に少しだけ驚き、そしてすぐに笑みを浮かべる。
 そのとき、彼女の視線がふと止まった。汗で薄くなった文哉のシャツの下――

(……うわっ)

 素肌のラインが、うっすらと透けて見えた瞬間、しずくの頬にわずかな熱が灯る。

(ちょ、ちょっと……ドキッとしちゃった……!?)

「しずく?」

「な、なんでもないよー!? うんっ、全然っ!」

 そのやりとりの最中、後ろからひっそりとした足音が近づいてくる。

「……文哉くん。ここにいたんだ……」

 声の主は、柊 真帆だった。
 胸元にスケッチブックを抱き、白いカーディガンの袖を指先でつまむようにしていた。

「真帆ちゃん! あれっ、演習見てたの?」

「……うん。遠くから、だけど」

 真帆は文哉を見つめ、そしてしずくにも一瞬だけ視線を向ける。

「しずくさん……その話、まだ言わないって、言ってたのに……」

「えっ、ご、ごめん! つい……」

「……文哉くん、ごめんね。私……リストの確認を少しだけ、手伝ってたの。だから……知ってて」

「リストって、あの……バイオギアの?」

 真帆は小さくうなずき、そしてスケッチブックをそっと開く。

「えっと……さっきの演習中の文哉くん、描いたの。……ちょっと、見てほしくて」

 そこには、走り抜ける文哉の姿。障害物を越える瞬間の、躍動感のある線。
 だがどこか優しさも残る描写だった。

「文哉くんの動き……他の人と、ちがってた。すごく……自然で」

「バイオギアの適合って、普通はもっと体が強化されてからじゃないとできないんでしょ? でも、文哉くんは……」

 真帆は、静かに言葉を紡ぐ。

「……男子で、適合反応が出たのって……ほんの数例しかないの。だから……すごく、特別なこと」

「そんな特別にされた記憶は、ないけどな……」

「でも……文哉くんが、それで傷ついたりしないようにって……思って」

 その声は、小さく震えていた。
 けれど、まっすぐで、嘘のない思いやりがこもっている。

 しずくが口を開く。

「でもさ、文哉くんが“やってみたい”って思ったなら、私、協力したいよ。戦術科だし、教えられることあると思うし!」

 真帆は、ふと文哉の袖に視線を落とし、小さく手を伸ばす。
 だが、あと数センチのところで、その手は止まった。

「……でも、無理はしないで。文哉くんが、苦しい思いするの……私、見たくないから……」

 その囁きのような声が、春の風に混じって揺れる。

 文哉は、ふたりの想いのあたたかさに、言葉を失った。
 それが、好意という形なのか、守ろうとする気持ちなのか。まだ、うまく言葉にできない。

 模擬演習が終わった中庭。ベンチに腰を下ろした文哉は、シャツの裾を軽く引っ張って汗をぬぐう。
 陽光に濡れた生地が、ほんのりと身体のラインに沿って貼りついていた。

「文哉くん、おつかれさま! はい、水っ!」

 海里しずくが明るくボトルを差し出す。
 髪をひとつにまとめた彼女の表情は、いつも通り快活で、どこか得意げだった。

「ありがとう。なんだか、すっかり体力テストみたいだったな……」

「ふふっ、でも楽しそうだったよ? けっこう動けてたし!」

「まあ、前の世界じゃ寝たきりだったから、こうして汗かけるのも新鮮っていうか」

「へえ……」

 しずくはその言葉に少しだけ驚き、そしてすぐに笑みを浮かべる。
 そのとき、彼女の視線がふと止まった。汗で薄くなった文哉のシャツの下――

(……うわっ)

 素肌のラインが、うっすらと透けて見えた瞬間、しずくの頬にわずかな熱が灯る。

(ちょ、ちょっと……ドキッとしちゃった……!?)

「しずく?」

「な、なんでもないよー!? うんっ、全然っ!」

 そのやりとりの最中、後ろからひっそりとした足音が近づいてくる。

「……文哉くん。ここにいたんだ……」

 声の主は、柊 真帆だった。
 胸元にスケッチブックを抱き、白いカーディガンの袖を指先でつまむようにしていた。

「真帆ちゃん! あれっ、演習見てたの?」

「……うん。遠くから、だけど」

 真帆は文哉を見つめ、そしてしずくにも一瞬だけ視線を向ける。

「しずくさん……その話、まだ言わないって、言ってたのに……」

「えっ、ご、ごめん! つい……」

「……文哉くん、ごめんね。私……リストの確認を少しだけ、手伝ってたの。だから……知ってて」

「リストって、あの……バイオギアの?」

 真帆は小さくうなずき、そしてスケッチブックをそっと開く。

「えっと……さっきの演習中の文哉くん、描いたの。……ちょっと、見てほしくて」

 そこには、走り抜ける文哉の姿。障害物を越える瞬間の、躍動感のある線。
 だがどこか優しさも残る描写だった。

「文哉くんの動き……他の人と、ちがってた。すごく……自然で」

「バイオギアの適合って、普通はもっと体が強化されてからじゃないとできないんでしょ? でも、文哉くんは……」

 真帆は、静かに言葉を紡ぐ。

「……男子で、適合反応が出たのって……ほんの数例しかないの。だから……すごく、特別なこと」

「そんな特別にされた記憶は、ないけどな……」

「でも……文哉くんが、それで傷ついたりしないようにって……思って」

 その声は、小さく震えていた。
 けれど、まっすぐで、嘘のない思いやりがこもっている。

 しずくが口を開く。

「でもさ、文哉くんが“やってみたい”って思ったなら、私、協力したいよ。戦術科だし、教えられることあると思うし!」

 真帆は、ふと文哉の袖に視線を落とし、小さく手を伸ばす。
 だが、あと数センチのところで、その手は止まった。

「……でも、無理はしないで。文哉くんが、苦しい思いするの……私、見たくないから……」

 その囁きのような声が、春の風に混じって揺れる。

 文哉は、ふたりの想いのあたたかさに、言葉を失った。
 それが、好意という形なのか、守ろうとする気持ちなのか。まだ、うまく言葉にできない。

 けれど、確かにその中心に、自分がいるということだけは――肌で感じていた。
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