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アーサーは惨めで、情けなくて、耐えられなかった。これほどまでに声を上げて泣きじゃくったのは、生まれて初めてのことだ。
呆然と涙を流し続けるアーサーを、カイルは苛立ったように、けれど力強く抱き上げた。
「やめろ! 今度は何をする気だ!!」
これ以上は、もう一刻も耐えられない。アーサーの精神は限界だった。無我夢中で暴れ、カイルの端正な頬を思い切り平手打ちする。乾いた音が室内に響き渡った。
「……っ、ってぇな。何もしねぇよ。興が冷めた、もう寝てろ」
カイルは忌々しげに舌打ちし、剥き出しのモノをしまって身なりを整えた。そして、抵抗する気力さえ失い、ぐったりとしたアーサーを抱き上げたまま、彼のために用意した私室へと運ぶ。
まるでお姫様が眠るような、豪奢な天蓋付きのベッドにアーサーを無造作に放り出した。
「今日はこの辺で勘弁してやる。だが、明日は覚悟しておくんだな。お前は俺の奴隷だ。一分一秒、忘れるんじゃないぞ」
カイルは言い聞かせるように冷たく告げ、背を向けて部屋を出ていった。
一人残されたアーサーは、あまりの急な幕引きに拍子抜けした。
——泣いたから、許してくれたのか?
酷使した喉が痛み、思考が混濁する。極限の緊張から解放された反動で、泥のような眠気が襲ってきた。アーサーは濡れた睫毛を震わせたまま、深い眠りへと落ちていった。
執務室に戻り、仕事の続きを始めたカイルだったが、一向に心は落ち着かなかった。
あんなに泣きじゃくるなんて。あの不遜で気高かったアーサーが、俺の腕の中で。
女物の部屋を与え、屈辱的なメイド服を着せ、男の象徴を喉の奥まで突き入れ、奉仕させた。騎士としての自尊心は、今や粉々に砕け散っているはずだ。
だが、その蹂躙の光景を思い出すだけで、カイルの股間は再び抗いようのない熱を帯びてくる。
「……やはり、あいつは去勢して俺の『女』にしよう」
あんなに美しいのだ。男として戦わせるなど宝の持ち腐れではないか。
カイルはペンを置き、暗い悦びに浸りながら独りごちた。
アーサーを完全に去勢し、女にしてしまえば——国務の傍ら、いつでもあの柔らかな唇を奪い、あの気高い精神を自分への依存だけで塗りつぶすことができる。
「お前に男としての機能など必要ない。俺がいれば、それでいいんだ……」
カイルの瞳に宿るのは、もはやかつての少年のような反発心ではない。獲物を檻に入れ、自分好みに作り替えようとする「支配者」の冷酷な情欲だった。
「去勢して、手元に置く」
そう決意したはずだった。そのための魔術道具や、術式の書かれた古書を無造作に机に広げ、カイルは深夜、吸い寄せられるようにアーサーの寝所へと足を向けた。
静まり返った私室。天蓋のカーテンを乱暴に引き開けたカイルは、そこに横たわる姿を見て、一瞬、呼吸を忘れた。
「……っ」
豪奢なフリルの枕に沈み、アーサーは死んだように眠っていた。
泣き腫らした瞼は赤く、端正な顔立ちにはまだ涙の跡が乾かずに残っている。あれほど鋭かった眼光は閉じられ、微かな寝息を立てる唇は、先刻自分が無理やり蹂躙したせいで少しだけ腫ぼったい。
カイルの手が、無意識にアーサーの頬へと伸びた。
指先が触れた瞬間、その肌のあまりの柔らかさに指が震える。
(……壊したい。こいつの心をズタズタにして、俺なしでは生きていけない体に作り替えてやりたい)
そう思っているのは、嘘ではない。
だが、その一方で、胸の奥が焼けるように熱い。
去勢術の術式を思い出そうとするたびに、あの日、自分を見下ろした「気高く強いアーサー」の幻影が脳裏をよぎる。
(……もし、こいつからその牙を抜いてしまったら。ただの「人形」になってしまったら、俺は満足するのか?)
カイルは唇を噛み締めた。
自分が求めているのは、自分に跪き、絶望に濡れた瞳で自分を見つめ、それでもなお消えない火花を散らす「アーサー」なのだ。
もしその魂を完全に壊してしまったら、自分の中に残るこの「渇き」は永遠に癒えないのではないか。
カイルは、眠るアーサーの横に腰を下ろし、そっとその髪を撫でた。
「……何故だ、アーサー。何故お前は、男なんだ」
もし、お前が最初から女であったなら。
俺はこんな回りくどい復讐などせず、力ずくで奪って、王妃としてでも愛人としてでも、ただひたすらに愛し抜いてやれたのに。
そうすれば、今この瞬間も、こんな苦しい感情に振り回される事も無かったのだ。
「……ん……っ」
アーサーが苦しげに身じろぎをし、カイルの服の裾を無意識に掴んだ。
縋るようなその仕草に、カイルの理性が音を立てて崩れそうになる。
憎んでいる。殺したいほど、憎んでいる。
けれど——今すぐこの男を抱き寄せ、その涙を舌で掬い取り、「怖がるな」と耳元で囁いてやりたい自分も、確かにそこにいた。
「卑怯だぞ、お前……。どこまで俺を狂わせる」
カイルは自嘲気味に笑うと、アーサーの手をそっとほどき、逃げるように部屋を後にした。
扉の向こう側で、彼は誰にも見せられないほど酷く歪んだ、悲しげな顔をしていた。
呆然と涙を流し続けるアーサーを、カイルは苛立ったように、けれど力強く抱き上げた。
「やめろ! 今度は何をする気だ!!」
これ以上は、もう一刻も耐えられない。アーサーの精神は限界だった。無我夢中で暴れ、カイルの端正な頬を思い切り平手打ちする。乾いた音が室内に響き渡った。
「……っ、ってぇな。何もしねぇよ。興が冷めた、もう寝てろ」
カイルは忌々しげに舌打ちし、剥き出しのモノをしまって身なりを整えた。そして、抵抗する気力さえ失い、ぐったりとしたアーサーを抱き上げたまま、彼のために用意した私室へと運ぶ。
まるでお姫様が眠るような、豪奢な天蓋付きのベッドにアーサーを無造作に放り出した。
「今日はこの辺で勘弁してやる。だが、明日は覚悟しておくんだな。お前は俺の奴隷だ。一分一秒、忘れるんじゃないぞ」
カイルは言い聞かせるように冷たく告げ、背を向けて部屋を出ていった。
一人残されたアーサーは、あまりの急な幕引きに拍子抜けした。
——泣いたから、許してくれたのか?
酷使した喉が痛み、思考が混濁する。極限の緊張から解放された反動で、泥のような眠気が襲ってきた。アーサーは濡れた睫毛を震わせたまま、深い眠りへと落ちていった。
執務室に戻り、仕事の続きを始めたカイルだったが、一向に心は落ち着かなかった。
あんなに泣きじゃくるなんて。あの不遜で気高かったアーサーが、俺の腕の中で。
女物の部屋を与え、屈辱的なメイド服を着せ、男の象徴を喉の奥まで突き入れ、奉仕させた。騎士としての自尊心は、今や粉々に砕け散っているはずだ。
だが、その蹂躙の光景を思い出すだけで、カイルの股間は再び抗いようのない熱を帯びてくる。
「……やはり、あいつは去勢して俺の『女』にしよう」
あんなに美しいのだ。男として戦わせるなど宝の持ち腐れではないか。
カイルはペンを置き、暗い悦びに浸りながら独りごちた。
アーサーを完全に去勢し、女にしてしまえば——国務の傍ら、いつでもあの柔らかな唇を奪い、あの気高い精神を自分への依存だけで塗りつぶすことができる。
「お前に男としての機能など必要ない。俺がいれば、それでいいんだ……」
カイルの瞳に宿るのは、もはやかつての少年のような反発心ではない。獲物を檻に入れ、自分好みに作り替えようとする「支配者」の冷酷な情欲だった。
「去勢して、手元に置く」
そう決意したはずだった。そのための魔術道具や、術式の書かれた古書を無造作に机に広げ、カイルは深夜、吸い寄せられるようにアーサーの寝所へと足を向けた。
静まり返った私室。天蓋のカーテンを乱暴に引き開けたカイルは、そこに横たわる姿を見て、一瞬、呼吸を忘れた。
「……っ」
豪奢なフリルの枕に沈み、アーサーは死んだように眠っていた。
泣き腫らした瞼は赤く、端正な顔立ちにはまだ涙の跡が乾かずに残っている。あれほど鋭かった眼光は閉じられ、微かな寝息を立てる唇は、先刻自分が無理やり蹂躙したせいで少しだけ腫ぼったい。
カイルの手が、無意識にアーサーの頬へと伸びた。
指先が触れた瞬間、その肌のあまりの柔らかさに指が震える。
(……壊したい。こいつの心をズタズタにして、俺なしでは生きていけない体に作り替えてやりたい)
そう思っているのは、嘘ではない。
だが、その一方で、胸の奥が焼けるように熱い。
去勢術の術式を思い出そうとするたびに、あの日、自分を見下ろした「気高く強いアーサー」の幻影が脳裏をよぎる。
(……もし、こいつからその牙を抜いてしまったら。ただの「人形」になってしまったら、俺は満足するのか?)
カイルは唇を噛み締めた。
自分が求めているのは、自分に跪き、絶望に濡れた瞳で自分を見つめ、それでもなお消えない火花を散らす「アーサー」なのだ。
もしその魂を完全に壊してしまったら、自分の中に残るこの「渇き」は永遠に癒えないのではないか。
カイルは、眠るアーサーの横に腰を下ろし、そっとその髪を撫でた。
「……何故だ、アーサー。何故お前は、男なんだ」
もし、お前が最初から女であったなら。
俺はこんな回りくどい復讐などせず、力ずくで奪って、王妃としてでも愛人としてでも、ただひたすらに愛し抜いてやれたのに。
そうすれば、今この瞬間も、こんな苦しい感情に振り回される事も無かったのだ。
「……ん……っ」
アーサーが苦しげに身じろぎをし、カイルの服の裾を無意識に掴んだ。
縋るようなその仕草に、カイルの理性が音を立てて崩れそうになる。
憎んでいる。殺したいほど、憎んでいる。
けれど——今すぐこの男を抱き寄せ、その涙を舌で掬い取り、「怖がるな」と耳元で囁いてやりたい自分も、確かにそこにいた。
「卑怯だぞ、お前……。どこまで俺を狂わせる」
カイルは自嘲気味に笑うと、アーサーの手をそっとほどき、逃げるように部屋を後にした。
扉の向こう側で、彼は誰にも見せられないほど酷く歪んだ、悲しげな顔をしていた。
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