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第二章
付き合ってるんだよ♪
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「歩、それでいいか?」
千佳先輩が勧めてくれた本を持ったまま突っ立っていた僕を、紫藤さんが寄ってきて肩をポンと叩いた。
「はい」
「よし、じゃあ来い」
畳の部屋に備え付けられている大きなテーブルの一角に僕を促して、ここに座れと言った。
そして、紫藤さんも僕の隣に座った。
……ドキドキする。
隣に紫藤さんがいるってだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがない。
ダメだ、ダメだ。
ただでさえ、みんなに気持ちがバレてしまっていそうな状況なのに、これ以上僕が紫藤さんのことを好きだと思わせるような態度に出てしまってたら、紫藤さんもきっと困るに違いないし。
集中だ!
この本に集中するんだ!
僕はこの小説の一言一句見逃さないぞという気持ちで、一文字一文字をしっかりと目で追う。
そうやってだんだん集中し始めたころに、コツンと軽く肘に何かがぶつかった。
……あ。
紫藤さんの肘だった。
視線を向けた途端にパチッと目が合って、瞬時にまた頬が熱くなる。
まずいと思ってパッと視線を離して、しまった!と思った。
こんなふうにあからさまに目を逸らすなんて、後輩にはあるまじき失礼な態度だ。上下関係の厳しい人だったら、きっとムッとするレベルじゃないのか?
もう色々ごちゃごちゃ考えすぎていて、頭の中はパニック状態だ。
きっと今の僕の顔は、赤くなったり青くなったりと忙しないに違いない。
「あーゆーむー」
「うわわっ!」
突然横から手が伸びてきて、わしゃわしゃと乱暴に髪の毛を混ぜられた。そして僕の頭に手を置いたまま、紫藤さんが顔を覗き込んだ。
「余計なこと考えるなよ。素直に楽しんでろ。ここは俺らにとってそう言う場所だ」
「……紫藤さん」
まただ。
また、ほんの一瞬で僕の心の内を理解してくれた。
そして知らないふりをしないで、向き合ってくれる。
クリスマスの日に初めて会ったあの時、勉強を教えてやるって言ってくれたのも、多分僕が焦りながら勉強に手が付かない状態になっていたことを気づいてくれていたからだ。
綺麗で近寄りがたいくらいにかっこいい人なのに、他人の、しかも初めて出会った人に対してまでも、さりげない優しさを与えてくれるような人なんだよな。紫藤さんって……。
そんな紫藤さんだから、僕は一目ぼれした後に、増々紫藤さんを好きになってしまったんだ。
「そうだよー、ここは緊張しないでいいとこなんだから。それに、歩君はもうこの同好会のメンバーなんだから、好きにしちゃっていいんだよ。こんなふうに♪」
「……え?」
びっくりして目が真ん丸になった。
だって。
僕の目の前で千佳先輩がコロンと横たわって、あの強面の東郷先輩の膝の上に頭をちょこんと乗っけたんだ!
しかもあのおっそろしい東郷先輩もそれに怒るどころか、目じりを下げて嬉しそうに千佳先輩の髪の毛を撫でている。
……どういうこと?
「付き合ってるんだよ、あいつら」
「えっ!?」
驚く僕に、紫藤さんはさらに衝撃の言葉を続ける。
「それにあいつらも」
「ええっ!?」
紫藤さんの指さす方向には、白石先輩と黒田先輩。
白石先輩はそれにはにかんだように笑って、黒田先輩はムッとしたような表情をした。
「…………」
びっくりして、ただただ言葉も出なくて、僕はポカンとした表情で紫藤さんを見上げた。
「フリーなのは俺だけだな」
「…………」
ニッコリと笑う紫藤さんに、僕の心臓がドキドキと煩くなった。
千佳先輩が勧めてくれた本を持ったまま突っ立っていた僕を、紫藤さんが寄ってきて肩をポンと叩いた。
「はい」
「よし、じゃあ来い」
畳の部屋に備え付けられている大きなテーブルの一角に僕を促して、ここに座れと言った。
そして、紫藤さんも僕の隣に座った。
……ドキドキする。
隣に紫藤さんがいるってだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがない。
ダメだ、ダメだ。
ただでさえ、みんなに気持ちがバレてしまっていそうな状況なのに、これ以上僕が紫藤さんのことを好きだと思わせるような態度に出てしまってたら、紫藤さんもきっと困るに違いないし。
集中だ!
この本に集中するんだ!
僕はこの小説の一言一句見逃さないぞという気持ちで、一文字一文字をしっかりと目で追う。
そうやってだんだん集中し始めたころに、コツンと軽く肘に何かがぶつかった。
……あ。
紫藤さんの肘だった。
視線を向けた途端にパチッと目が合って、瞬時にまた頬が熱くなる。
まずいと思ってパッと視線を離して、しまった!と思った。
こんなふうにあからさまに目を逸らすなんて、後輩にはあるまじき失礼な態度だ。上下関係の厳しい人だったら、きっとムッとするレベルじゃないのか?
もう色々ごちゃごちゃ考えすぎていて、頭の中はパニック状態だ。
きっと今の僕の顔は、赤くなったり青くなったりと忙しないに違いない。
「あーゆーむー」
「うわわっ!」
突然横から手が伸びてきて、わしゃわしゃと乱暴に髪の毛を混ぜられた。そして僕の頭に手を置いたまま、紫藤さんが顔を覗き込んだ。
「余計なこと考えるなよ。素直に楽しんでろ。ここは俺らにとってそう言う場所だ」
「……紫藤さん」
まただ。
また、ほんの一瞬で僕の心の内を理解してくれた。
そして知らないふりをしないで、向き合ってくれる。
クリスマスの日に初めて会ったあの時、勉強を教えてやるって言ってくれたのも、多分僕が焦りながら勉強に手が付かない状態になっていたことを気づいてくれていたからだ。
綺麗で近寄りがたいくらいにかっこいい人なのに、他人の、しかも初めて出会った人に対してまでも、さりげない優しさを与えてくれるような人なんだよな。紫藤さんって……。
そんな紫藤さんだから、僕は一目ぼれした後に、増々紫藤さんを好きになってしまったんだ。
「そうだよー、ここは緊張しないでいいとこなんだから。それに、歩君はもうこの同好会のメンバーなんだから、好きにしちゃっていいんだよ。こんなふうに♪」
「……え?」
びっくりして目が真ん丸になった。
だって。
僕の目の前で千佳先輩がコロンと横たわって、あの強面の東郷先輩の膝の上に頭をちょこんと乗っけたんだ!
しかもあのおっそろしい東郷先輩もそれに怒るどころか、目じりを下げて嬉しそうに千佳先輩の髪の毛を撫でている。
……どういうこと?
「付き合ってるんだよ、あいつら」
「えっ!?」
驚く僕に、紫藤さんはさらに衝撃の言葉を続ける。
「それにあいつらも」
「ええっ!?」
紫藤さんの指さす方向には、白石先輩と黒田先輩。
白石先輩はそれにはにかんだように笑って、黒田先輩はムッとしたような表情をした。
「…………」
びっくりして、ただただ言葉も出なくて、僕はポカンとした表情で紫藤さんを見上げた。
「フリーなのは俺だけだな」
「…………」
ニッコリと笑う紫藤さんに、僕の心臓がドキドキと煩くなった。
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