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第二章
バレバレみたいです…
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紫藤さんに通されて入った部屋は、畳の敷いてある純和風の部屋だった。
外観と同じ感じなんだな。
変なところで感心して、キョロキョロと辺りを見回した。
……と、不意に視線を感じて顔を向けると、さも興味津々な視線と目が合った。
さっきの可愛らしい人だ。
「ねえきみ、なんて名前?」
「あ、すみません! 自己紹介まだでした。えっと、1年の鹿倉歩です。あの……、紫藤さんとは去年のクリスマスに……、勉強でお世話になり知り合いました。……それから……えっと、文化系のクラブに入りたくて入部を希望しました。よろしくお願いします!」
「……文化系。まあ、文化系っつったら文化系か」
「読書なんだから、そうでしょ?」
「まあ、そうだが……」
僕の挨拶を聞いた真ん前で、強面の人と可愛い人がボソボソと話をしている。
何だか妙な会話に聞こえるんだけど……。
「まあ、読書って言ってもダラダラしてる時間の方が多いからな。受験勉強だけをしに来ている人もいるし」
「要は目標があるからな。……俺も、そろそろそうしようかな」
「じゃあ、俺も付き合うよ」
「えーと、ちょっとみんな聞け―」
「あぁ?」
「あっと、すみません。剛先輩も聞いてください」
「なんだ」
各々がそれぞれに話しているところを、紫藤さんがパンパンと手を叩いて皆を注目させた。
それに文句を付けた三年生が、加山さんの言ってた怖い人に違いない。
「新入生がせっかく入会してくれたんですから、それぞれ自己紹介をしてください。え~と……」
「じゃあ、俺から行きまーす! 二年の工藤千佳だよ。特技は誰とでも仲良くなれること。だから歩君ともすぐに親しくなれると思うから、よろしくね♪」
「はい。えっと工藤先輩、よろしくお願いします」
「うん~♪ でも、千佳先輩って呼んで♡」
「あ、はい。千佳先輩」
「特技がもう一つ抜けてんだろ?」
クリスマスの時に傍にいた一人の人が、揶揄うように言った。
「あー、ははっ。まあ、それはそのうち」
……?
何だろう?
「で、俺の隣にいるのがー」
そう言って、顔をくるんと強面の先輩に向ける。自己紹介を促してくれているようだ。
「三年の東郷剛だ」
「よ、よろしくお願いします!」
やっぱり何となくこの人怖い。
愛想の欠片も無い東郷先輩に、僕は慌ててぺこりと頭を下げた。
「じゃあ次は俺。えっと、同じく二年の白石水です。きみとはクリスマスの日にあったよね」
「はい! 白石先輩、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた僕の姿を、白石先輩の背後からクリスマスの日に一緒だったもう一人の人がジッと見ていた。
「ホラ、陸も」
振り返った白石先輩が、その人を促した。それにフッと息を吐いて、僕を見た。
「……紫藤目当てなら、まあいいか。俺は黒田陸だ」
……!!
ふえぇっ?
今、今この人何って言った!?
やっぱりさっきの僕の態度で、完璧バレちゃってたの!?
ボムッて音がしたんじゃないかと思ったくらいに、一挙に顔が熱くなった。
「バカ! 陸!」
「……んだよ。いいじゃん、本当のことだろ? それに、大体紫藤がここに連れて来たってことは……、デッ!」
え?と思って黒田先輩の顔を見たら、横から紫藤さんのパンチが飛んできた。
「おいクロ、余計なこと言ってんじゃねーよ」
パンチを腕に食らった黒田先輩が、忌々しそうに紫藤さんを見ている。
その隣で、宥めるように白石先輩がその腕を摩っていた。
「気にすんな歩。……それより、いくつか本は集まってるぞ。読みたいものは何かあるか?」
「え? あ、はっはい」
気を取り直すように紫藤さんが僕を本棚に案内してくれた。まだ顔の火照りは引かないけど、それを気にし過ぎるとせっかく紫藤さんが回避してくれたことが無駄になってしまいそうなので、あえて気にしていないように振る舞った。
そこに千佳先輩がタタッと近づいてきた。そしてちょいと本を引き寄せて、僕の手の平に乗っけてくれた。
「俺のお薦めはこれだよ! ライトなミステリーで面白かったよ」
「ありがとうございます」
どうやら、僕はなんとかここのみんなには受け入れてもらえたようだ。
だけど、僕の気持ちが既に気が付かれてしまってるらしいことは気にかかる。
それと、さっきの黒田先輩の意味深な言葉の続きが、僕はどうしても気になってしまっていた。
外観と同じ感じなんだな。
変なところで感心して、キョロキョロと辺りを見回した。
……と、不意に視線を感じて顔を向けると、さも興味津々な視線と目が合った。
さっきの可愛らしい人だ。
「ねえきみ、なんて名前?」
「あ、すみません! 自己紹介まだでした。えっと、1年の鹿倉歩です。あの……、紫藤さんとは去年のクリスマスに……、勉強でお世話になり知り合いました。……それから……えっと、文化系のクラブに入りたくて入部を希望しました。よろしくお願いします!」
「……文化系。まあ、文化系っつったら文化系か」
「読書なんだから、そうでしょ?」
「まあ、そうだが……」
僕の挨拶を聞いた真ん前で、強面の人と可愛い人がボソボソと話をしている。
何だか妙な会話に聞こえるんだけど……。
「まあ、読書って言ってもダラダラしてる時間の方が多いからな。受験勉強だけをしに来ている人もいるし」
「要は目標があるからな。……俺も、そろそろそうしようかな」
「じゃあ、俺も付き合うよ」
「えーと、ちょっとみんな聞け―」
「あぁ?」
「あっと、すみません。剛先輩も聞いてください」
「なんだ」
各々がそれぞれに話しているところを、紫藤さんがパンパンと手を叩いて皆を注目させた。
それに文句を付けた三年生が、加山さんの言ってた怖い人に違いない。
「新入生がせっかく入会してくれたんですから、それぞれ自己紹介をしてください。え~と……」
「じゃあ、俺から行きまーす! 二年の工藤千佳だよ。特技は誰とでも仲良くなれること。だから歩君ともすぐに親しくなれると思うから、よろしくね♪」
「はい。えっと工藤先輩、よろしくお願いします」
「うん~♪ でも、千佳先輩って呼んで♡」
「あ、はい。千佳先輩」
「特技がもう一つ抜けてんだろ?」
クリスマスの時に傍にいた一人の人が、揶揄うように言った。
「あー、ははっ。まあ、それはそのうち」
……?
何だろう?
「で、俺の隣にいるのがー」
そう言って、顔をくるんと強面の先輩に向ける。自己紹介を促してくれているようだ。
「三年の東郷剛だ」
「よ、よろしくお願いします!」
やっぱり何となくこの人怖い。
愛想の欠片も無い東郷先輩に、僕は慌ててぺこりと頭を下げた。
「じゃあ次は俺。えっと、同じく二年の白石水です。きみとはクリスマスの日にあったよね」
「はい! 白石先輩、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた僕の姿を、白石先輩の背後からクリスマスの日に一緒だったもう一人の人がジッと見ていた。
「ホラ、陸も」
振り返った白石先輩が、その人を促した。それにフッと息を吐いて、僕を見た。
「……紫藤目当てなら、まあいいか。俺は黒田陸だ」
……!!
ふえぇっ?
今、今この人何って言った!?
やっぱりさっきの僕の態度で、完璧バレちゃってたの!?
ボムッて音がしたんじゃないかと思ったくらいに、一挙に顔が熱くなった。
「バカ! 陸!」
「……んだよ。いいじゃん、本当のことだろ? それに、大体紫藤がここに連れて来たってことは……、デッ!」
え?と思って黒田先輩の顔を見たら、横から紫藤さんのパンチが飛んできた。
「おいクロ、余計なこと言ってんじゃねーよ」
パンチを腕に食らった黒田先輩が、忌々しそうに紫藤さんを見ている。
その隣で、宥めるように白石先輩がその腕を摩っていた。
「気にすんな歩。……それより、いくつか本は集まってるぞ。読みたいものは何かあるか?」
「え? あ、はっはい」
気を取り直すように紫藤さんが僕を本棚に案内してくれた。まだ顔の火照りは引かないけど、それを気にし過ぎるとせっかく紫藤さんが回避してくれたことが無駄になってしまいそうなので、あえて気にしていないように振る舞った。
そこに千佳先輩がタタッと近づいてきた。そしてちょいと本を引き寄せて、僕の手の平に乗っけてくれた。
「俺のお薦めはこれだよ! ライトなミステリーで面白かったよ」
「ありがとうございます」
どうやら、僕はなんとかここのみんなには受け入れてもらえたようだ。
だけど、僕の気持ちが既に気が付かれてしまってるらしいことは気にかかる。
それと、さっきの黒田先輩の意味深な言葉の続きが、僕はどうしても気になってしまっていた。
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