僕の王子様

くるむ

文字の大きさ
39 / 62
第五章

凄い人たちと一緒

しおりを挟む
公園は日曜のせいもあってか、この時間でも結構な人出ヒトデだ。黒田先輩はサッカーボールを下に置いて、何やら考えている。

「バスケのゴールが空いてる。2×2でもするか?」

「えっ!?」

どう見ても1人だけ運動音痴なこの状況で、スポーツ万能なこの人たちと一緒にプレーするのはかなり気が引ける。
引き気味な僕に、礼人さんが僕の頭に掌を乗っけてグラグラと揺らす。

「遊びだ、遊び。この狭い枠内でシュート目指してわちゃわちゃすればいいんだから。ドジしたって誰も怒んねーよ」

「そうだよ鹿倉君。俺もそれほどスポーツは得意じゃないけど、この2人とのゲームは結構楽しいと思うよ」
「は……、はい。分かりました、頑張りますっ」
「だーから、頑張らなくていいんだってばよ」

僕の頭から手を離して、礼人さんがスッと背筋を伸ばした。

「いこーぜ」

トクン。

夕陽を背に浴びて、ピンクバイオレットの髪がキラキラ光る。
影を帯びた端正な顔が、一際かっこよく僕の目に飛び込んできた。

この、どう見ても僕と不釣り合いにカッコいいこの人が、僕の彼……、彼氏なんだよな。

改めてそう思って顔を真っ赤にさせていると、礼人さんがじんわりと微笑んだ。
ああ、恥ずかしい。

いろんな意味でドキドキしながら僕も参加だ。


コイントスで攻撃権を決めて、最初は黒田先輩がボールを取った。

白石先輩にパスを回して、ゴール近くに走っていく。ボールを受け取った白石先輩はドリブルしながら進んでいき、黒田先輩にパスをしたところを横から礼人さんが素早くカットしボールを奪った。

「くそ―っ、礼人、お前お遊びじゃなかったのかよ」
「遊びだよ。けどクロの顔見てたら、ついついな―」

そう笑いながら礼人さんがアーク外へと歩いていく。

「行くぞ。ホラ、歩!」

「うわっ、はっはい!」

ポーンと弧を描くように軽く、僕でも簡単に受け止められそうなボールを礼人さんが放ってくれた。

一瞬わたわたしたけれど、「近くまで行ってシュートしてみろ!」と礼人さんが言ったので、ボールを突きながらもたもたとバスケットゴールへと近づいた。
ゴール下には黒田先輩がいたけど、思い切ってエイッ!とシュート。

……したんだけど、すんなり入ってくれずにリングにガツンとぶつかって弾かれてしまった。礼人さんがそれをすかさずフォローしようとしてくれたのだけど、一瞬早く黒田先輩に奪われてしまった。

「テメー、クロ。せっかくいいとこ見せれるところだったのに、少しは遠慮しろよ」
「それはこっちのセリフだろ。さっきは人の見せ場奪ったくせに」
「いいじゃんお前は。シロは十分クロのかっこよさ知り尽くしてるだろ」


「あー、始まった」
「え?」
「なんだかんだ言ってあの2人、気が合うというかムキになるというか。楽しんでるんだよね、ああやって」

ああ、うん。
2人とも言い合ってるように見えるけど、表情は2人ともとても楽しそうだ。
黒田先輩は否定しそうだけど、何となく言葉でじゃれ合ってるってのがあってるかもしれない。

「それにしても……、たいていは礼人の方がもっと余裕で陸のことを揶揄うのが常なんだけど……。今日は歩君がいるから、礼人までムキになっちゃってるみたいだね」

「え?」
トクン。

白石先輩の言葉に、礼人さんの言葉を思い出して顔が熱くなった。

目立つのは嫌だけど、僕がいるから本気になりたいってそう言っていた礼人さんの言葉……。

「うぉーい、歩、シロ。続き行くぞー」

「はーい」
「わかった」

白石先輩と戻って、また四人でわちゃわちゃとボールを奪い合う。

でも黒田先輩はすごく上手いにも関わらず、僕にはかなり手を抜いていて楽しませようと思ってくれているようだった。
ただ礼人さんがボールを持つと豹変して、凄く執拗にボールを奪いに行っていた。もちろん逆も然りだけど。


礼人さんがピポッドをしながら上手く黒田先輩をかわして、僕にパスをくれた。

「イケ、シュートだ!」

「はい!」

かなりの近くからシュートを放った。

パスン。

間が良かったのかフォームが良かったのか、僕の放ったボールが綺麗にゴールへと入って行った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

処理中です...