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第5話:灯る生活の灯と芽生える信頼
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廃小屋での生活も数日が過ぎ、アキオと子供たちの手によって、その姿は目に見えて変わりつつあった。昨日まで頭上にぽっかりと穴が空いていた屋根は、アキオが切り出した生木と厚く重ねた木の皮、そして粘土質の土を混ぜた即席の充填材でほぼ塞がれ、雨露をしのぐには十分な状態になった。壁の隙間も同様に埋められ、以前とは比べ物にならないほど風の吹き込みが減っている。
「よし、これで夜もだいぶ暖かくなるだろう」
アキオは額の汗を拭い、満足げに小屋を見上げた。手入れした斧や鋸のおかげで、木材の加工効率は格段に上がり、作業は思った以上に捗っていた。
「アキオさん、次はこれ、どうすればいいですか?」
アヤネが、アキオが寸法を指示して切り出した短い丸太を数本抱えて尋ねてくる。その瞳は真剣で、アキオの一挙手一投足から何かを学び取ろうという意欲に満ちていた。
「ああ、それはこっちの壁際に並べて、簡単な棚にするんだ。食器……と言ってもまだ葉っぱだが、そういうのを置く場所を作る」
アキオはアヤネに手本を見せながら、丸太を組み合わせ、蔓で固定していく。その手際の良さに、アヤネだけでなく、作業の合間に覗きに来たアルトやケンタも感嘆の声を上げた。
「すげえ……アキオさん、本当に何でも作れるんだな!」ケンタが目を輝かせる。
アキオは「まあ、これくらいはな。昔取った杵柄ってやつだ」と少し照れ臭そうに笑った。アヤネは、そんなアキオの横顔をじっと見つめ、その頼もしさに改めて胸を熱くしていた。この人がいなければ、自分たちは今頃どうなっていただろうか、と。
食生活も、少しずつだが改善が見られた。アキオが改良し、アヤネやアルトが手伝って仕掛けた罠には、二、三日に一度は小動物がかかるようになった。アキオは、獲物を無駄にしないよう、燻製にして保存する方法を子供たちに教えた。煙で燻された肉の香ばしい匂いが小屋の周りに漂うと、それだけで心が満たされるような気がした。
「昔、趣味でな。ベーコンとかソーセージとか、自分で作ってたんだ」
そう語るアキオの顔は、少しだけ遠い目をしていて、アヤネは彼の過去にも思いを馳せた。
アルトやケンタは、今ではすっかり薪割りや水汲みの当番をこなし、ミコとユメは相変わらず木の実や食べられる野草を見つけてきては、アヤネやアキオを喜ばせている。特にアヤネは、限られた食材と乏しい調味料(岩塩くらいしかない)の中で、村で母親から教わった料理の知恵を絞り、皆が少しでも美味しく食べられるようにと工夫を凝らしていた。時にはアキオが「そのハーブはこう使うと香りが立つぞ」などと、地球での知識を元にアドバイスすることもあった。
夜、小屋の中では小さな焚き火がパチパチと音を立てている。以前の吹きさらしのシェルターとは違い、壁と屋根に囲まれた空間は、驚くほど暖かく、安心感があった。子供たちは、アキオが即席で作った木の枠に枯れ草や獣の毛皮(罠で獲れたものの余り)を敷き詰めた寝床で、互いに身を寄せ合って眠りについている。
その寝顔を見守りながら、アキオはふと、地球に残してきたもののことを思った。もう帰ることはできないのだろうか。だが、すぐにその感傷を振り払う。目の前には、自分を頼りにしてくれる小さな命があるのだ。
「アキオさん……?」
寝入ったはずのアヤネが、小さな声でアキオを呼んだ。
「どうした、眠れないのか?」
「ううん……ただ、ありがとうって、改めて言いたくて。アキオさんがいなかったら、私たち……」
「もういいんだ、そういうのは」アキオはアヤネの言葉を遮るように、優しく言った。「俺も、お前たちがいなけりゃ、この世界で一人ぼっちだった。助けられてるのは、俺の方かもしれんぞ」
アヤネは何も言わず、ただこくりと頷いた。その瞳には、アキオへの絶対的な信頼と、言葉では言い表せない深い感謝の念が宿っているように見えた。それはまだ幼い少女の純粋な敬愛だったが、その奥底には、いつか別の感情へと育つかもしれない小さな種火のようなものが、確かに感じられた。
小屋の主要な改修は一段落し、そこはもう「廃小屋」ではなく、彼らの「家」と呼べる場所になりつつあった。
「ねえ、ここ、私たちの本当のおうちみたいだね!」
翌朝、ケンタが嬉しそうに言うと、他の子供たちも笑顔で頷いた。その光景に、アキオは深い満足感を覚える。
しかし、森の木々が少しずつ葉の色を変え始めているのを見ると、彼は気を引き締めた。冬の足音は、確実に近づいてきている。食料の備蓄、そして本格的な冬支度。やるべきことは、まだ山積みだった。
「よし、これで夜もだいぶ暖かくなるだろう」
アキオは額の汗を拭い、満足げに小屋を見上げた。手入れした斧や鋸のおかげで、木材の加工効率は格段に上がり、作業は思った以上に捗っていた。
「アキオさん、次はこれ、どうすればいいですか?」
アヤネが、アキオが寸法を指示して切り出した短い丸太を数本抱えて尋ねてくる。その瞳は真剣で、アキオの一挙手一投足から何かを学び取ろうという意欲に満ちていた。
「ああ、それはこっちの壁際に並べて、簡単な棚にするんだ。食器……と言ってもまだ葉っぱだが、そういうのを置く場所を作る」
アキオはアヤネに手本を見せながら、丸太を組み合わせ、蔓で固定していく。その手際の良さに、アヤネだけでなく、作業の合間に覗きに来たアルトやケンタも感嘆の声を上げた。
「すげえ……アキオさん、本当に何でも作れるんだな!」ケンタが目を輝かせる。
アキオは「まあ、これくらいはな。昔取った杵柄ってやつだ」と少し照れ臭そうに笑った。アヤネは、そんなアキオの横顔をじっと見つめ、その頼もしさに改めて胸を熱くしていた。この人がいなければ、自分たちは今頃どうなっていただろうか、と。
食生活も、少しずつだが改善が見られた。アキオが改良し、アヤネやアルトが手伝って仕掛けた罠には、二、三日に一度は小動物がかかるようになった。アキオは、獲物を無駄にしないよう、燻製にして保存する方法を子供たちに教えた。煙で燻された肉の香ばしい匂いが小屋の周りに漂うと、それだけで心が満たされるような気がした。
「昔、趣味でな。ベーコンとかソーセージとか、自分で作ってたんだ」
そう語るアキオの顔は、少しだけ遠い目をしていて、アヤネは彼の過去にも思いを馳せた。
アルトやケンタは、今ではすっかり薪割りや水汲みの当番をこなし、ミコとユメは相変わらず木の実や食べられる野草を見つけてきては、アヤネやアキオを喜ばせている。特にアヤネは、限られた食材と乏しい調味料(岩塩くらいしかない)の中で、村で母親から教わった料理の知恵を絞り、皆が少しでも美味しく食べられるようにと工夫を凝らしていた。時にはアキオが「そのハーブはこう使うと香りが立つぞ」などと、地球での知識を元にアドバイスすることもあった。
夜、小屋の中では小さな焚き火がパチパチと音を立てている。以前の吹きさらしのシェルターとは違い、壁と屋根に囲まれた空間は、驚くほど暖かく、安心感があった。子供たちは、アキオが即席で作った木の枠に枯れ草や獣の毛皮(罠で獲れたものの余り)を敷き詰めた寝床で、互いに身を寄せ合って眠りについている。
その寝顔を見守りながら、アキオはふと、地球に残してきたもののことを思った。もう帰ることはできないのだろうか。だが、すぐにその感傷を振り払う。目の前には、自分を頼りにしてくれる小さな命があるのだ。
「アキオさん……?」
寝入ったはずのアヤネが、小さな声でアキオを呼んだ。
「どうした、眠れないのか?」
「ううん……ただ、ありがとうって、改めて言いたくて。アキオさんがいなかったら、私たち……」
「もういいんだ、そういうのは」アキオはアヤネの言葉を遮るように、優しく言った。「俺も、お前たちがいなけりゃ、この世界で一人ぼっちだった。助けられてるのは、俺の方かもしれんぞ」
アヤネは何も言わず、ただこくりと頷いた。その瞳には、アキオへの絶対的な信頼と、言葉では言い表せない深い感謝の念が宿っているように見えた。それはまだ幼い少女の純粋な敬愛だったが、その奥底には、いつか別の感情へと育つかもしれない小さな種火のようなものが、確かに感じられた。
小屋の主要な改修は一段落し、そこはもう「廃小屋」ではなく、彼らの「家」と呼べる場所になりつつあった。
「ねえ、ここ、私たちの本当のおうちみたいだね!」
翌朝、ケンタが嬉しそうに言うと、他の子供たちも笑顔で頷いた。その光景に、アキオは深い満足感を覚える。
しかし、森の木々が少しずつ葉の色を変え始めているのを見ると、彼は気を引き締めた。冬の足音は、確実に近づいてきている。食料の備蓄、そして本格的な冬支度。やるべきことは、まだ山積みだった。
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