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第47話:湯けむり余話と明かされる出自の秘密
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聖獣の導きによって発見された温泉は、村に大きな喜びをもたらした。早速、アキオとドルガンを中心に、男女別の湯小屋の建設が計画され、村人たちは期待に胸を膨らませていた。しかし、一つ問題が持ち上がった。
「うぅ…だんなぁ、あたし、この匂いはちょっとキツイかも…」
キナが、源泉の近くで鼻をクンクンさせながら、涙目で訴えてきたのだ。狼獣人である彼女の優れた嗅覚にとって、硫黄の強い匂いは長時間耐えられるものではなかったらしい。これにはアキオも困ったが、シルヴィアが「源泉から少し離れた場所に、湯を薄めて匂いを和らげた湯船を別に作ればよいのでは?」と提案。他の村人の中にも匂いに敏感な者がいるかもしれぬと、二種類の温泉を設けることで話がまとまった。
湯小屋の建設場所の目途がつき、村人たちが祝杯を挙げた(あるいは、単に日頃の労をねぎらってか)ある夜のこと。一部の男性陣――主に新しく加わった避難民の者たちだったが、中にはドルガンや古参の村人も混じっていた――が、自作の果実酒を酌み交わし、少々羽目を外しすぎた。高歌放吟ならまだしも、軽い小競り合いや自慢話がエスカレートし、騒ぎが大きくなりかけた、その時だった。
どこからともなく、シルヴィアを筆頭に、レオノーラ、アヤネ、セレスティーナ、そして村の屈強な(?)女性たちがぞろぞろと現れ、騒いでいた男性陣を無言で取り囲んだ。その静かな、しかし有無を言わせぬ迫力に、酔っ払いたちは一瞬で青ざめ、あっという間に沈静化。すごすごと解散していった。
「……女子会ネットワーク、恐るべし」
アキオは、一部始終を呆然と見ながら呟いた。女性たちの情報網と団結力は、時に村のどんな武力よりも効果的らしい。
この一件や、キナとの度重なる文化的なすれ違い(尻尾や耳の件など)を経験し、アキオは深く思い悩んでいた。村が大きくなり、多様な背景を持つ人々が集う中で、自分の「異世界人」としての常識のズレが、今後さらに大きな誤解や問題を生むかもしれない。彼はシルヴィアに相談した。
「シルヴィア、俺は、主要な皆には打ち明けるべきだと思うんだ。俺が、この世界とは違う場所から来たこと、そして、こちらの常識に疎いということを」
シルヴィアは、アキオの真剣な瞳を見つめ、静かに頷いた。「ええ、アキオ。あなたがそう決めたのなら、それが一番良い道でしょう。皆、あなたの誠実さを知っています。きっと理解してくれるはずよ」
数日後、アキオは意を決し、アヤネ、セレスティーナ、レオノーラ、そしてキナを中央館(まだ建設途中だが、雨風をしのげる区画は出来ていた)の一室に集めた。
緊張した面持ちで、アキオは自らの出自を語り始めた。自分が「ニホン」という全く異なる世界の人間であること、こちらの世界の風習や常識に疎く、それゆえに意図せず失礼な振る舞いをしてしまうことがあること。特にキナに対しては、改めて深く頭を下げ、これまでの無礼を詫びた。
「だから、もし俺の言動でおかしな点があったら、遠慮なく指摘してほしい。そして、この世界のことをもっと教えてほしいんだ」
アヤネは、驚きつつも、どこか納得したように静かに頷き、アキオへの信頼をさらに深めた表情を見せた。セレスティーナとレオノーラも、その告白を真摯に受け止め、彼の誠実さに敬意を表した。
一番衝撃を受けていたのはキナだった。彼女は目を丸くし、しばらくアキオの顔をじっと見つめていたが、やがてふっと表情を和らげた。
「なんだ、だんな、そんなことだったのかい! あたしはてっきり、だんながあたしをからかってるのかと…いや、本気であたしに気があるのかと…! そっか、違う世界のヒトだったんだね。じゃあ、しょうがないや! これからは、あたしがだんなに、この世界の常識ってやつを、みっちり教えてあげるよ!」
キナの屈託のない笑顔に、アキオも、そしてその場にいた全員が救われた思いだった。アキオの胸のつかえは、ようやく取れた気がした。
その夜、シルヴィアがアキオに、微笑ましい報告をした。
「アキオ、子供たちのことだけれど…」
最初の五人の子供たちのうち、アヤネを除いたアルトとミコ、そしてケンタとユメが、それぞれ「将来、ずっと一緒にいる」と、幼いながらも固い約束を交わし合っているらしいというのだ。アヤネが、ミコやユメからこっそり打ち明けられたのだという。
「そうか…あいつらも、もうそんなことを考えるようになったのか」
アキオは、驚きと共に、胸の奥が温かくなるのを感じた。この村で、新しい世代の未来もまた、確かに芽吹いている。
明かされた秘密と、新たに結ばれた(あるいは再確認された)絆。アキオたちの村は、様々な出来事を乗り越えながら、より強く、より温かい共同体へと成長を続けていくのだった。
「うぅ…だんなぁ、あたし、この匂いはちょっとキツイかも…」
キナが、源泉の近くで鼻をクンクンさせながら、涙目で訴えてきたのだ。狼獣人である彼女の優れた嗅覚にとって、硫黄の強い匂いは長時間耐えられるものではなかったらしい。これにはアキオも困ったが、シルヴィアが「源泉から少し離れた場所に、湯を薄めて匂いを和らげた湯船を別に作ればよいのでは?」と提案。他の村人の中にも匂いに敏感な者がいるかもしれぬと、二種類の温泉を設けることで話がまとまった。
湯小屋の建設場所の目途がつき、村人たちが祝杯を挙げた(あるいは、単に日頃の労をねぎらってか)ある夜のこと。一部の男性陣――主に新しく加わった避難民の者たちだったが、中にはドルガンや古参の村人も混じっていた――が、自作の果実酒を酌み交わし、少々羽目を外しすぎた。高歌放吟ならまだしも、軽い小競り合いや自慢話がエスカレートし、騒ぎが大きくなりかけた、その時だった。
どこからともなく、シルヴィアを筆頭に、レオノーラ、アヤネ、セレスティーナ、そして村の屈強な(?)女性たちがぞろぞろと現れ、騒いでいた男性陣を無言で取り囲んだ。その静かな、しかし有無を言わせぬ迫力に、酔っ払いたちは一瞬で青ざめ、あっという間に沈静化。すごすごと解散していった。
「……女子会ネットワーク、恐るべし」
アキオは、一部始終を呆然と見ながら呟いた。女性たちの情報網と団結力は、時に村のどんな武力よりも効果的らしい。
この一件や、キナとの度重なる文化的なすれ違い(尻尾や耳の件など)を経験し、アキオは深く思い悩んでいた。村が大きくなり、多様な背景を持つ人々が集う中で、自分の「異世界人」としての常識のズレが、今後さらに大きな誤解や問題を生むかもしれない。彼はシルヴィアに相談した。
「シルヴィア、俺は、主要な皆には打ち明けるべきだと思うんだ。俺が、この世界とは違う場所から来たこと、そして、こちらの常識に疎いということを」
シルヴィアは、アキオの真剣な瞳を見つめ、静かに頷いた。「ええ、アキオ。あなたがそう決めたのなら、それが一番良い道でしょう。皆、あなたの誠実さを知っています。きっと理解してくれるはずよ」
数日後、アキオは意を決し、アヤネ、セレスティーナ、レオノーラ、そしてキナを中央館(まだ建設途中だが、雨風をしのげる区画は出来ていた)の一室に集めた。
緊張した面持ちで、アキオは自らの出自を語り始めた。自分が「ニホン」という全く異なる世界の人間であること、こちらの世界の風習や常識に疎く、それゆえに意図せず失礼な振る舞いをしてしまうことがあること。特にキナに対しては、改めて深く頭を下げ、これまでの無礼を詫びた。
「だから、もし俺の言動でおかしな点があったら、遠慮なく指摘してほしい。そして、この世界のことをもっと教えてほしいんだ」
アヤネは、驚きつつも、どこか納得したように静かに頷き、アキオへの信頼をさらに深めた表情を見せた。セレスティーナとレオノーラも、その告白を真摯に受け止め、彼の誠実さに敬意を表した。
一番衝撃を受けていたのはキナだった。彼女は目を丸くし、しばらくアキオの顔をじっと見つめていたが、やがてふっと表情を和らげた。
「なんだ、だんな、そんなことだったのかい! あたしはてっきり、だんながあたしをからかってるのかと…いや、本気であたしに気があるのかと…! そっか、違う世界のヒトだったんだね。じゃあ、しょうがないや! これからは、あたしがだんなに、この世界の常識ってやつを、みっちり教えてあげるよ!」
キナの屈託のない笑顔に、アキオも、そしてその場にいた全員が救われた思いだった。アキオの胸のつかえは、ようやく取れた気がした。
その夜、シルヴィアがアキオに、微笑ましい報告をした。
「アキオ、子供たちのことだけれど…」
最初の五人の子供たちのうち、アヤネを除いたアルトとミコ、そしてケンタとユメが、それぞれ「将来、ずっと一緒にいる」と、幼いながらも固い約束を交わし合っているらしいというのだ。アヤネが、ミコやユメからこっそり打ち明けられたのだという。
「そうか…あいつらも、もうそんなことを考えるようになったのか」
アキオは、驚きと共に、胸の奥が温かくなるのを感じた。この村で、新しい世代の未来もまた、確かに芽吹いている。
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