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第46話:聖獣の導きと湯けむりの予感
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生命樹が村に根付き、聖獣の子たちが元気に駆け回るようになってから、村の雰囲気はますます明るく、活気に満ちていた。アキオたちの「中央館」の建設も着々と進み、他の区画にも新しい家々や施設が次々と姿を現しつつあった。
そんな中、アキオは最近、村の女性たちの間に一つの新しい習慣が生まれたことに気づいていた。シルヴィアやアヤネ、セレスティーナにレオノーラ、そしてキナまでもが、時折集まっては楽しげに談笑しているのだ。アキオが何気なく近づくと、ふっと話題が変わり、当たり障りのない世間話になる。どうやら、アキオには内緒の「女子会」が、いつの間にか複数設立されていたらしい。その秘密めいた雰囲気が、アキオにとっては少しばかり微笑ましくも、ほんのちょっぴり寂しくもある日常の一コマだった。
ある日の午後、アキオが建設中の畑の様子を見に行こうとすると、聖獣の子たちの一匹――アキオに一番懐いている、額の角がひときわ輝く銀色のワンコ――が、彼のズボンの裾をくいっと引っ張り、何かを訴えるようにアキオを見上げてきた。
「ん? どうしたんだ、チビ銀(アキオが心の中で呼んでいる愛称)。どこかへ行きたいのか?」
ワンコは、まるで「こっちへ来て!」と言わんばかりに、アキオの足元でくるりと向きを変え、森の奥へと駆けだそうとする。その必死な様子に、アキオは何か特別なものを感じ、後を追うことにした。
ワンコに導かれるまま進むと、そこはアキオもまだ足を踏み入れたことのない、少し薄暗い森の一角だった。そして、微かに鼻をつく匂い。
(この匂いは……硫黄か?)
腐った卵のような、独特の刺激臭。それは、地球の知識では硫化水素を連想させるものだった。アキオは、火山性ガスなどの危険性を思い浮かべ、慎重に周囲を警戒する。ワンコは、そんなアキオの心配をよそに、さらに奥へと進み、やがて岩がごつごつとした、少し開けた場所で立ち止まった。
「これは……どうしたものか」
アキオは一人で判断するには危険が伴うと判断し、一度村へ戻って相談することにした。村へ戻ると、女性陣はちょうどいくつかのグループに分かれて、それぞれの「女子会」の真っ最中のようだった。シルヴィアとアヤネ、セレスティーナは木陰でお茶を飲みながら何やら話し込んでおり、レオノーラとキナ、そして獣人の女性たちは少し離れた場所で武具の手入れをしながら盛り上がっている。
(うーん、これは声をかけづらいな……)
結果として、手が空いていたのはアキオの近くにいたドルガンやアルト、ケンタといった男性陣だけだった。
「ドルガン殿、ちょっと見てほしい場所があるんだが…」
アキオは男性陣に事情を話し、ワンコを先頭に、再び硫黄の匂いがする場所へと向かった。
「ほう、この匂いは…火山性のものじゃな。ふむ、この岩肌…熱を持っておるわい」
ドルガンが岩に手を当て、険しい顔つきで呟く。周囲には、確かにうっすらと湯気のようなものも立ち上っている箇所があった。
「もしかしたら、温泉が出るかもしれんな。だが、下手に掘ると有毒なガスが噴き出す危険もある。これは慎重に調べねばならんぞ」
ドルガンの言葉に、アキオはこれが村にとって大きな発見になるかもしれないと直感した。そして、これほどのことであれば、女性陣にも意見を聞き、共に確認すべきだろうと考えた。
村へ戻り、「女子会」を終えたばかりのシルヴィアたちに事情を説明すると、皆、驚きと好奇心に目を輝かせた。
「まあ、温泉ですって!? それは素晴らしいわ!」セレスティーナが期待に胸を膨らませる。
「もし本当なら、日々の疲れを癒せる最高の場所になるな」レオノーラも興味深そうだ。
「シルヴィア、君の森の知識で、何か分かることはないか?」アキオが尋ねる。
シルヴィアは頷き、「ええ、行きましょう。大地の恵みであるならば、きっと私たちの助けになるはずだわ」
そして、今度は女性陣も加えた一行が、再びその場所へと向かった。シルヴィアが注意深く周囲の植生や気の流れを観察し、ドルガンが岩盤の様子や匂いの源を特定していく。そして、ワンコがしきりに鼻を鳴らす、岩と岩の間のわずかな隙間。
「ここじゃな…ここから何かが湧き出そうとしておる」
ドルガンが皆に合図し、アキオとアルトが慎重にその隙間の周りの土砂や邪魔な岩を取り除いていく。すると――。
ゴポゴポッ…という音と共に、岩の裂け目から、熱い湯が勢いよく湧き出してきたのだ! それは、まるで小さな間欠泉のように、時折、白い湯気を立てながら噴き上がっている。
「おおっ! 出たぞ! 本当に温泉じゃあ!」ドルガンが興奮した声を上げる。
「まあ、素晴らしい…! まさに大地の恵みね!」シルヴィアも感動したように、湧き出る湯を見つめている。
アヤネは「これで、みんなでお風呂に入れますね!」と顔を輝かせ、キナも「やったぜ、だんな! これで汗も泥もきれいに洗い流せるってもんよ!」と大喜びだ。
湯気に包まれたその場所は、村人たちの驚きと歓喜の声で満たされた。聖獣のワンコは、まるで自分の手柄を誇るかのように、アキオの足元で嬉しそうに尻尾を振っている。
アキオたちの村に、また一つ、かけがえのない宝物がもたらされた瞬間だった。この湯けむりは、人々の心と体を癒し、村の未来をさらに温かく照らしてくれることだろう。
そんな中、アキオは最近、村の女性たちの間に一つの新しい習慣が生まれたことに気づいていた。シルヴィアやアヤネ、セレスティーナにレオノーラ、そしてキナまでもが、時折集まっては楽しげに談笑しているのだ。アキオが何気なく近づくと、ふっと話題が変わり、当たり障りのない世間話になる。どうやら、アキオには内緒の「女子会」が、いつの間にか複数設立されていたらしい。その秘密めいた雰囲気が、アキオにとっては少しばかり微笑ましくも、ほんのちょっぴり寂しくもある日常の一コマだった。
ある日の午後、アキオが建設中の畑の様子を見に行こうとすると、聖獣の子たちの一匹――アキオに一番懐いている、額の角がひときわ輝く銀色のワンコ――が、彼のズボンの裾をくいっと引っ張り、何かを訴えるようにアキオを見上げてきた。
「ん? どうしたんだ、チビ銀(アキオが心の中で呼んでいる愛称)。どこかへ行きたいのか?」
ワンコは、まるで「こっちへ来て!」と言わんばかりに、アキオの足元でくるりと向きを変え、森の奥へと駆けだそうとする。その必死な様子に、アキオは何か特別なものを感じ、後を追うことにした。
ワンコに導かれるまま進むと、そこはアキオもまだ足を踏み入れたことのない、少し薄暗い森の一角だった。そして、微かに鼻をつく匂い。
(この匂いは……硫黄か?)
腐った卵のような、独特の刺激臭。それは、地球の知識では硫化水素を連想させるものだった。アキオは、火山性ガスなどの危険性を思い浮かべ、慎重に周囲を警戒する。ワンコは、そんなアキオの心配をよそに、さらに奥へと進み、やがて岩がごつごつとした、少し開けた場所で立ち止まった。
「これは……どうしたものか」
アキオは一人で判断するには危険が伴うと判断し、一度村へ戻って相談することにした。村へ戻ると、女性陣はちょうどいくつかのグループに分かれて、それぞれの「女子会」の真っ最中のようだった。シルヴィアとアヤネ、セレスティーナは木陰でお茶を飲みながら何やら話し込んでおり、レオノーラとキナ、そして獣人の女性たちは少し離れた場所で武具の手入れをしながら盛り上がっている。
(うーん、これは声をかけづらいな……)
結果として、手が空いていたのはアキオの近くにいたドルガンやアルト、ケンタといった男性陣だけだった。
「ドルガン殿、ちょっと見てほしい場所があるんだが…」
アキオは男性陣に事情を話し、ワンコを先頭に、再び硫黄の匂いがする場所へと向かった。
「ほう、この匂いは…火山性のものじゃな。ふむ、この岩肌…熱を持っておるわい」
ドルガンが岩に手を当て、険しい顔つきで呟く。周囲には、確かにうっすらと湯気のようなものも立ち上っている箇所があった。
「もしかしたら、温泉が出るかもしれんな。だが、下手に掘ると有毒なガスが噴き出す危険もある。これは慎重に調べねばならんぞ」
ドルガンの言葉に、アキオはこれが村にとって大きな発見になるかもしれないと直感した。そして、これほどのことであれば、女性陣にも意見を聞き、共に確認すべきだろうと考えた。
村へ戻り、「女子会」を終えたばかりのシルヴィアたちに事情を説明すると、皆、驚きと好奇心に目を輝かせた。
「まあ、温泉ですって!? それは素晴らしいわ!」セレスティーナが期待に胸を膨らませる。
「もし本当なら、日々の疲れを癒せる最高の場所になるな」レオノーラも興味深そうだ。
「シルヴィア、君の森の知識で、何か分かることはないか?」アキオが尋ねる。
シルヴィアは頷き、「ええ、行きましょう。大地の恵みであるならば、きっと私たちの助けになるはずだわ」
そして、今度は女性陣も加えた一行が、再びその場所へと向かった。シルヴィアが注意深く周囲の植生や気の流れを観察し、ドルガンが岩盤の様子や匂いの源を特定していく。そして、ワンコがしきりに鼻を鳴らす、岩と岩の間のわずかな隙間。
「ここじゃな…ここから何かが湧き出そうとしておる」
ドルガンが皆に合図し、アキオとアルトが慎重にその隙間の周りの土砂や邪魔な岩を取り除いていく。すると――。
ゴポゴポッ…という音と共に、岩の裂け目から、熱い湯が勢いよく湧き出してきたのだ! それは、まるで小さな間欠泉のように、時折、白い湯気を立てながら噴き上がっている。
「おおっ! 出たぞ! 本当に温泉じゃあ!」ドルガンが興奮した声を上げる。
「まあ、素晴らしい…! まさに大地の恵みね!」シルヴィアも感動したように、湧き出る湯を見つめている。
アヤネは「これで、みんなでお風呂に入れますね!」と顔を輝かせ、キナも「やったぜ、だんな! これで汗も泥もきれいに洗い流せるってもんよ!」と大喜びだ。
湯気に包まれたその場所は、村人たちの驚きと歓喜の声で満たされた。聖獣のワンコは、まるで自分の手柄を誇るかのように、アキオの足元で嬉しそうに尻尾を振っている。
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