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第87話:聖霊様の湯治(?)と森の主の置き土産
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森の主の暴走が鎮まり、アキオたちが聖霊と共に村へ戻ると、避難民たちは事の顛末を聞き、涙ながらにアキオと聖霊(その時はまだ光の粒子として生命樹の周りに留まっていた)に感謝を捧げた。彼らは、アキオたちの町こそが真の安住の地であると確信し、この町の一員として生きていくことを改めて誓ったのだった。聖霊は、アキオたちの勇気と優しさを称え、生命樹を通じてこれからも町を見守ることを約束すると、再び生命樹の光の中へとその姿を溶け込ませていった…はずだった。
数日後、村の生活も落ち着きを取り戻し、アキオはシルヴィアと共に、新しくできた「生命の湯」の貸切風呂で、久しぶりに二人きりの時間を過ごしていた。森の主との一件で張り詰めていた心身を、銀月木の湯船の柔らかな湯が優しく解きほぐしていく。
「…本当に、大変な数日間だったな」アキオがしみじみと言う。
「ええ。でも、アキオ、あなたの力があの森を救ったのよ。私は、あなたを誇りに思うわ」シルヴィアがアキオの肩にそっと寄り添う。
と、その時。
「ふぅぅ…やはり、人の子の作るものは興味深いのぅ。この『ゆ』とやらは、実に心地よい…」
湯船の反対側の隅から、どこかで聞いたことのある、清らかで、しかしどこか楽しげな声が響いた。アキオとシルヴィアが驚いてそちらを見ると、湯けむりの中に、あの聖霊――美しい女性の姿をした――が、肩まで湯に浸かり、実に気持ちよさそうな表情で目を細めているではないか! その手には、アヤネが休憩所に置いていた手作りの果実水までしっかりと握られている。
「せ、聖霊様!? なぜここに…!? いえ、生命樹にお戻りになったのでは…!?」アキオが慌てて声をかける。
聖霊は、ゆっくりと目を開けると、悪びれる様子もなく、にっこりと微笑んだ。
「ああ、一度は戻ったのじゃがな。どうにも、この村の『ゆ』の噂が気になってのう。それに、せっかくこうして人の形を得て顕現したのじゃ。この世界の様々なものを、もっとこう…肌で、感じてみたいではないか。そう、例えば、この心地よい温もりや、そなたたちの作る美味なるもの、そして…」
聖霊はそこで一度言葉を切り、意味ありげに口元に笑みを浮かべた。
「そなたたちの、日々の様々な『たのし…』いや、『営み』というものをな」
「(た、楽しみって言いかけたぞ、この聖霊様!)」アキオは心の中でツッコミを入れるが、口には出せない。シルヴィアも、驚きと戸惑いを隠せないでいたが、聖霊のどこか人間臭い一面に、親近感も覚えていた。
「まあ、堅苦しいことは抜きじゃ。しばらくは、この村に滞在させてもらうとしよう。森の調和を見守るのも、たまには現場からが良いからのう」
そう言うと、聖霊は再び気持ちよさそうに目を閉じ、湯を満喫し始めた。アキオとシルヴィアは顔を見合わせ、苦笑するしかなかった。どうやら、この神秘的で美しい聖霊様は、なかなかに好奇心旺盛で、そして少々お茶目な性格の持ち主らしい。彼女の滞在は、村に新たな刺激と、そしてもしかしたら更なる波乱(?)をもたらすかもしれない。
一方、森の主がいた場所では、もう一つの変化が起きていた。
暴走が鎮まり、本来の巨大な古木の姿に戻った森の主は、アキオたちに感謝の意を示すかのように、その周囲にあった大量の倒木(暴走の際に自身でなぎ倒したものだ)を、まるで村への贈り物のように、一箇所に丁寧に集めてくれていたのだ。それは、村の建築や薪として、非常に貴重な資源となるだろう。
そして、森の主が元々根を張っていた大地には、いくつかの見たこともない、しかし力強い生命力を秘めた種子が、まるで未来への希望のように残されていた。シルヴィアがそれらを慎重に持ち帰り、生命樹の麓の特別な区画に植えると、数日のうちに小さな芽を出し始めた。それは、森の主が、自らの再生と、この村との新たな共存を願って残した、貴重な置き土産なのかもしれなかった。
聖霊の(半ば強引な?)湯治と、森の主からの思いがけない贈り物。アキオたちの町は、森の神秘と大いなる存在たちとの間に、不思議な、そして温かい絆を育み始めていた。その絆は、きっとこの町を、さらに豊かで、そしてかけがえのない場所へと導いていくことだろう。
数日後、村の生活も落ち着きを取り戻し、アキオはシルヴィアと共に、新しくできた「生命の湯」の貸切風呂で、久しぶりに二人きりの時間を過ごしていた。森の主との一件で張り詰めていた心身を、銀月木の湯船の柔らかな湯が優しく解きほぐしていく。
「…本当に、大変な数日間だったな」アキオがしみじみと言う。
「ええ。でも、アキオ、あなたの力があの森を救ったのよ。私は、あなたを誇りに思うわ」シルヴィアがアキオの肩にそっと寄り添う。
と、その時。
「ふぅぅ…やはり、人の子の作るものは興味深いのぅ。この『ゆ』とやらは、実に心地よい…」
湯船の反対側の隅から、どこかで聞いたことのある、清らかで、しかしどこか楽しげな声が響いた。アキオとシルヴィアが驚いてそちらを見ると、湯けむりの中に、あの聖霊――美しい女性の姿をした――が、肩まで湯に浸かり、実に気持ちよさそうな表情で目を細めているではないか! その手には、アヤネが休憩所に置いていた手作りの果実水までしっかりと握られている。
「せ、聖霊様!? なぜここに…!? いえ、生命樹にお戻りになったのでは…!?」アキオが慌てて声をかける。
聖霊は、ゆっくりと目を開けると、悪びれる様子もなく、にっこりと微笑んだ。
「ああ、一度は戻ったのじゃがな。どうにも、この村の『ゆ』の噂が気になってのう。それに、せっかくこうして人の形を得て顕現したのじゃ。この世界の様々なものを、もっとこう…肌で、感じてみたいではないか。そう、例えば、この心地よい温もりや、そなたたちの作る美味なるもの、そして…」
聖霊はそこで一度言葉を切り、意味ありげに口元に笑みを浮かべた。
「そなたたちの、日々の様々な『たのし…』いや、『営み』というものをな」
「(た、楽しみって言いかけたぞ、この聖霊様!)」アキオは心の中でツッコミを入れるが、口には出せない。シルヴィアも、驚きと戸惑いを隠せないでいたが、聖霊のどこか人間臭い一面に、親近感も覚えていた。
「まあ、堅苦しいことは抜きじゃ。しばらくは、この村に滞在させてもらうとしよう。森の調和を見守るのも、たまには現場からが良いからのう」
そう言うと、聖霊は再び気持ちよさそうに目を閉じ、湯を満喫し始めた。アキオとシルヴィアは顔を見合わせ、苦笑するしかなかった。どうやら、この神秘的で美しい聖霊様は、なかなかに好奇心旺盛で、そして少々お茶目な性格の持ち主らしい。彼女の滞在は、村に新たな刺激と、そしてもしかしたら更なる波乱(?)をもたらすかもしれない。
一方、森の主がいた場所では、もう一つの変化が起きていた。
暴走が鎮まり、本来の巨大な古木の姿に戻った森の主は、アキオたちに感謝の意を示すかのように、その周囲にあった大量の倒木(暴走の際に自身でなぎ倒したものだ)を、まるで村への贈り物のように、一箇所に丁寧に集めてくれていたのだ。それは、村の建築や薪として、非常に貴重な資源となるだろう。
そして、森の主が元々根を張っていた大地には、いくつかの見たこともない、しかし力強い生命力を秘めた種子が、まるで未来への希望のように残されていた。シルヴィアがそれらを慎重に持ち帰り、生命樹の麓の特別な区画に植えると、数日のうちに小さな芽を出し始めた。それは、森の主が、自らの再生と、この村との新たな共存を願って残した、貴重な置き土産なのかもしれなかった。
聖霊の(半ば強引な?)湯治と、森の主からの思いがけない贈り物。アキオたちの町は、森の神秘と大いなる存在たちとの間に、不思議な、そして温かい絆を育み始めていた。その絆は、きっとこの町を、さらに豊かで、そしてかけがえのない場所へと導いていくことだろう。
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