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第96話:王女の愛し子、生命樹の兆し、そして乙女たちの門出
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セレスティーナがアキオの腕の中で、玉のような女の子を出産してから数日が過ぎた。中央館の一室は、生まれたばかりの赤ん坊のミルクの匂いと、母親の優しい温もりに満たされている。アキオは仕事の合間を縫ってはセレスティーナと赤ん坊の元を訪れ、その健やかな寝顔に頬を緩ませていた。
「アキオ様…この子の名前なのですが…」
ある日、セレスティーナが、胸に抱いた我が子を見つめながら、穏やかな声で切り出した。アキオは優しく促す。
「ああ、考えてくれたんだな」
「はい。あなた様と、この子と、そして私たちの未来への願いを込めて…『ステラ』と名付けたいのです」
「ステラ…星、か」アキオが呟く。
セレスティーナはこくりと頷いた。「エルドリアでは、星は希望と導きの象徴でした。この子が、私たち家族にとって、そしてこのアキオの町にとって、きらめく希望の星となりますように…そして、あなた様がいつも私を照らしてくださるように、この子もまた、誰かの道を優しく照らせる子に育ってほしいと…そう願っておりますの」
その瞳には、母としての深い愛情と、アキオへの変わらない想いが溢れていた。
「ステラ…素晴らしい名前だ、セレスティーナ。俺も、その名に込められた君の願いを、大切にしたい」
アキオは、セレスティーナの肩をそっと抱き寄せ、小さなステラ姫の額に優しいキスを贈った。こうして、アキオ家に四人目の、そして二人目の姫君が、星の輝きをその名に宿して加わったのだった。
ステラ姫の誕生で、アキオ家はますます賑やかになった。シルヴィアの腕の中ですやすやと眠る銀髪のアルス、キナの背中ですでに力強い脚をばたつかせている赤茶髪のリク、レオノーラに抱かれて大きな瞳をきょろきょろさせているエルザ、そしてセレスティーナの胸で小さな寝息を立てる黒髪のステラ。四人の幼な子たちの世話は、アキオにとっても妻たちにとっても嬉しい忙しさであり、中央館は絶えず優しい笑顔と、時折響く愛らしい泣き声に包まれていた。
年長の子供たちも、新しい妹の誕生を喜んだ。ミコは早速、赤ん坊にも優しい薬草湯の準備を手伝い、ユメは小さな手を興味深そうに見つめている。アルトやケンタも、どこか照れくさそうに、しかし温かい眼差しで小さな命の成長を見守っていた。
そんなある晴れた日のこと。アキオがシルヴィアと共に、生命樹の麓で薬草の手入れをしていたミコに声をかけた時だった。
「ミコ、最近、生命樹の様子が少し変わったように感じないか?」
アキオの言葉に、ミコは顔を上げ、生命樹の枝を見上げた。
「確かに…アキオ様。なんだか、以前よりも生命樹の気が濃くなったような…それに、あの枝先を見てください!」
ミコが指差す生命樹の高い枝には、これまで見たこともない、柔らかな乳白色の光を放つ、拳ほどの大きさの「実」がいくつか実っているのが見えた。それはまるで、磨かれた真珠か、あるいは月のかけらのように神秘的な輝きを放っていた。
「あれは…実、なのか?」シルヴィアも驚きの声を上げる。
その時、ふわりと生命樹の根本から聖霊様が姿を現した。
「うむ。お主たちも気づいたか。生命樹が、初めてその力を形にしたのじゃ。あれは生命樹の『恵みの実』。じゃがな…」
聖霊様は悪戯っぽく微笑む。「まだ時期尚早じゃ。あれらの実が真に熟し、自ら輝きを増す時まで、決して手を触れてはならんぞ。その時が来れば、おのずと分かるじゃろう」
その言葉に、アキオたちは顔を見合わせる。生命樹の実――それが一体どんな力を持っているのか、村に何をもたらすのか、今はまだ誰も知らない。しかし、その神秘的な輝きは、村の未来に新たな希望の光を投げかけているようだった。保育施設の建設計画も、この生命樹の恵みを受けられるようにと、少し設計が見直されるかもしれない。
生命樹の神秘に心を躍らせつつも、アキオの日常は変わらず家族と村のためにあった。そして、もう一つ、アキオの頭の中には大切な準備があった。ミコの15歳の誕生日が、数週間後に迫っていたのだ。この世界で15歳は成人と見なされる一つの節目。アキオは、彼女のこれまでの成長と、薬草師としての献身を称え、特別な贈り物をしたいと考えていた。
(ミコには、やはり薬草に関わるものが良いだろうな…彼女がもっとその才能を伸ばせるような、そして大切に使い続けてくれるようなものを…)
アキオは、シルヴィアやアルトにそれとなく相談しつつ、夜な夜な自身の工房で、月の木やアキオ鋼、そしてドワーフのドルガンから分けてもらった特別な鉱石を使い、何やら小さな道具の製作に取り掛かり始めていた。それは、ミコのための「特製薬草師セット」になる予定だった。切れ味の良い薬草ナイフ、美しい木彫りの施された薬研、そして彼女自身が発見や調合を記録できる、丈夫な革表紙の手作りの帳面…。
一方、中央館の奥の一室では、アヤネの20歳の誕生日を前に、シルヴィアが中心となって「妻会」が開かれていた。メンバーはキナ、レオノーラ、そして産後間もないが体調の良いセレスティーナも加わっている。
「…というわけで、アヤネさんの20歳の誕生日は、私たちにとっても本当に喜ばしいことよ。あの子がどれだけアキオ様を想い、この日を待ち望んでいたか…」シルヴィアが感慨深げに言う。
「本当だよな! アヤネには、うんと幸せになってもらわねえと!」キナが力強く頷く。
レオノーラも、「第一夫人として、そしてこれからは名実ともにアキオ殿の妻として…私たちも全力でアヤネ様を支えなければなりませんわね」と真剣な表情だ。
「わたくしも、アヤネ様にはいつも助けていただいております。ささやかですが、何かお祝いができればと…」とセレスティーナも微笑む。
妻たちは、アヤネへの祝福の気持ちを分かち合い、彼女の特別な日をどう迎えるか、そして彼女の新しい門出をどう支えるか、温かい雰囲気の中で語り合った。それは、嫉妬や軋轢などとは無縁の、アキオを中心とした強い絆で結ばれた家族ならではの光景だった。
生命樹の実は静かに熟成の時を待ち、ミコの新たな才能を開花させるであろう贈り物はアキオの手で形作られ、そしてアヤネの長年の想いが成就する特別な日は、刻一刻と近づいていた。アキオの町は、穏やかな初冬の気配の中で、いくつもの祝福と希望の蕾を静かに育んでいるのだった。
「アキオ様…この子の名前なのですが…」
ある日、セレスティーナが、胸に抱いた我が子を見つめながら、穏やかな声で切り出した。アキオは優しく促す。
「ああ、考えてくれたんだな」
「はい。あなた様と、この子と、そして私たちの未来への願いを込めて…『ステラ』と名付けたいのです」
「ステラ…星、か」アキオが呟く。
セレスティーナはこくりと頷いた。「エルドリアでは、星は希望と導きの象徴でした。この子が、私たち家族にとって、そしてこのアキオの町にとって、きらめく希望の星となりますように…そして、あなた様がいつも私を照らしてくださるように、この子もまた、誰かの道を優しく照らせる子に育ってほしいと…そう願っておりますの」
その瞳には、母としての深い愛情と、アキオへの変わらない想いが溢れていた。
「ステラ…素晴らしい名前だ、セレスティーナ。俺も、その名に込められた君の願いを、大切にしたい」
アキオは、セレスティーナの肩をそっと抱き寄せ、小さなステラ姫の額に優しいキスを贈った。こうして、アキオ家に四人目の、そして二人目の姫君が、星の輝きをその名に宿して加わったのだった。
ステラ姫の誕生で、アキオ家はますます賑やかになった。シルヴィアの腕の中ですやすやと眠る銀髪のアルス、キナの背中ですでに力強い脚をばたつかせている赤茶髪のリク、レオノーラに抱かれて大きな瞳をきょろきょろさせているエルザ、そしてセレスティーナの胸で小さな寝息を立てる黒髪のステラ。四人の幼な子たちの世話は、アキオにとっても妻たちにとっても嬉しい忙しさであり、中央館は絶えず優しい笑顔と、時折響く愛らしい泣き声に包まれていた。
年長の子供たちも、新しい妹の誕生を喜んだ。ミコは早速、赤ん坊にも優しい薬草湯の準備を手伝い、ユメは小さな手を興味深そうに見つめている。アルトやケンタも、どこか照れくさそうに、しかし温かい眼差しで小さな命の成長を見守っていた。
そんなある晴れた日のこと。アキオがシルヴィアと共に、生命樹の麓で薬草の手入れをしていたミコに声をかけた時だった。
「ミコ、最近、生命樹の様子が少し変わったように感じないか?」
アキオの言葉に、ミコは顔を上げ、生命樹の枝を見上げた。
「確かに…アキオ様。なんだか、以前よりも生命樹の気が濃くなったような…それに、あの枝先を見てください!」
ミコが指差す生命樹の高い枝には、これまで見たこともない、柔らかな乳白色の光を放つ、拳ほどの大きさの「実」がいくつか実っているのが見えた。それはまるで、磨かれた真珠か、あるいは月のかけらのように神秘的な輝きを放っていた。
「あれは…実、なのか?」シルヴィアも驚きの声を上げる。
その時、ふわりと生命樹の根本から聖霊様が姿を現した。
「うむ。お主たちも気づいたか。生命樹が、初めてその力を形にしたのじゃ。あれは生命樹の『恵みの実』。じゃがな…」
聖霊様は悪戯っぽく微笑む。「まだ時期尚早じゃ。あれらの実が真に熟し、自ら輝きを増す時まで、決して手を触れてはならんぞ。その時が来れば、おのずと分かるじゃろう」
その言葉に、アキオたちは顔を見合わせる。生命樹の実――それが一体どんな力を持っているのか、村に何をもたらすのか、今はまだ誰も知らない。しかし、その神秘的な輝きは、村の未来に新たな希望の光を投げかけているようだった。保育施設の建設計画も、この生命樹の恵みを受けられるようにと、少し設計が見直されるかもしれない。
生命樹の神秘に心を躍らせつつも、アキオの日常は変わらず家族と村のためにあった。そして、もう一つ、アキオの頭の中には大切な準備があった。ミコの15歳の誕生日が、数週間後に迫っていたのだ。この世界で15歳は成人と見なされる一つの節目。アキオは、彼女のこれまでの成長と、薬草師としての献身を称え、特別な贈り物をしたいと考えていた。
(ミコには、やはり薬草に関わるものが良いだろうな…彼女がもっとその才能を伸ばせるような、そして大切に使い続けてくれるようなものを…)
アキオは、シルヴィアやアルトにそれとなく相談しつつ、夜な夜な自身の工房で、月の木やアキオ鋼、そしてドワーフのドルガンから分けてもらった特別な鉱石を使い、何やら小さな道具の製作に取り掛かり始めていた。それは、ミコのための「特製薬草師セット」になる予定だった。切れ味の良い薬草ナイフ、美しい木彫りの施された薬研、そして彼女自身が発見や調合を記録できる、丈夫な革表紙の手作りの帳面…。
一方、中央館の奥の一室では、アヤネの20歳の誕生日を前に、シルヴィアが中心となって「妻会」が開かれていた。メンバーはキナ、レオノーラ、そして産後間もないが体調の良いセレスティーナも加わっている。
「…というわけで、アヤネさんの20歳の誕生日は、私たちにとっても本当に喜ばしいことよ。あの子がどれだけアキオ様を想い、この日を待ち望んでいたか…」シルヴィアが感慨深げに言う。
「本当だよな! アヤネには、うんと幸せになってもらわねえと!」キナが力強く頷く。
レオノーラも、「第一夫人として、そしてこれからは名実ともにアキオ殿の妻として…私たちも全力でアヤネ様を支えなければなりませんわね」と真剣な表情だ。
「わたくしも、アヤネ様にはいつも助けていただいております。ささやかですが、何かお祝いができればと…」とセレスティーナも微笑む。
妻たちは、アヤネへの祝福の気持ちを分かち合い、彼女の特別な日をどう迎えるか、そして彼女の新しい門出をどう支えるか、温かい雰囲気の中で語り合った。それは、嫉妬や軋轢などとは無縁の、アキオを中心とした強い絆で結ばれた家族ならではの光景だった。
生命樹の実は静かに熟成の時を待ち、ミコの新たな才能を開花させるであろう贈り物はアキオの手で形作られ、そしてアヤネの長年の想いが成就する特別な日は、刻一刻と近づいていた。アキオの町は、穏やかな初冬の気配の中で、いくつもの祝福と希望の蕾を静かに育んでいるのだった。
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