五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第97話:ミコの門出、星影の薬草師

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 アキオがミコへの贈り物の準備に心を込めていた数日が過ぎ、ついに彼女の15歳の誕生日がやってきた。
 その日の朝、中央館の食堂はいつもより少しだけ華やかな雰囲気に包まれていた。アヤネやキナが中心となって、ミコの好きな木の実を使った焼き菓子や、特別なスープを用意したのだ。まだ眠そうに目をこする幼子たちも、どこか祝いの空気を感じ取っているかのようだ。

 朝食の後、家族全員が広間に集まった。アキオ、シルヴィア、アヤネ、キナ、レオノーラ、セレスティーナ、そしてアルト、ケンタ、ユメ。もちろん、アルス、リク、エルザ、ステラの小さな四人も、母親たちの腕に抱かれてその場にいた。主役のミコは、少し緊張した面持ちながらも、その瞳には喜びと期待の色が浮かんでいる。

「ミコ、15歳の誕生日、そして成人おめでとう」
 アキオが、父親としての優しい眼差しでミコに語りかけた。
「この町に来た時はまだ小さかったお前が、こんなに立派に、そして心優しい娘に育ってくれて、父さんは本当に嬉しい。お前はもう、この町の、そして私たちの家族の、かけがえのない一員だ」
 アキオはそう言うと、数日かけて作り上げた「特製薬草師セット」をミコに手渡した。美しい木箱には、月の木で作られた柄の薬草ナイフ、碧玉の薬研と薬棒、そしてアキオ手作りの革表紙の帳面が収められている。帳面の表紙には、ミコの好きなスノードロップの押し花が可憐に埋め込まれていた。

「アキオ様…こんなに素敵なものを…ありがとうございます…!」
 ミコは、震える手で贈り物を受け取り、その一つ一つを愛おしそうに見つめた。彼女の大きな瞳からは、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「このナイフで、もっとたくさんの薬草を正しく扱えるように…この薬研で、もっと効果のある薬を作れるように…そしてこの帳面には、私が学んだこと、発見したことを、たくさん書き留めていきたいと思います。本当に、ありがとうございます!」
 彼女は深々と頭を下げた。その姿は、すでに一人前の薬草師としての自覚と、家族への深い感謝に満ちていた。

 アキオの心のこもった贈り物に続き、家族みんなからも、ささやかながら心のこもった品々がミコに贈られた。
 シルヴィアからは、彼女が大切に育てていた珍しい薬草の苗と、その育て方を記した手書きのメモ。「これで、あなたの薬草園ももっと豊かになるわ。分からないことがあったら、いつでも聞きにいらっしゃい」という言葉と共に。
 アヤネは、ミコが薬草を摘む時に使うための、刺繍入りの丈夫な布袋と、汚れを防ぐための可愛らしいエプロンを手渡した。「ミコちゃんがいつも綺麗でいられるように、そしてお仕事がしやすいようにって思って」と微笑む。
 キナからは、森で採れた丈夫な蔓で編んだ大きな背負い籠と、狼の牙で作った小さなお守り。「これで薬草どっさり採れるし、森でも安心だぜ!」と快活に笑う。
 レオノーラは、ミコの薬草ナイフのための上質な革の鞘(さや)と、小さな砥石(といし)を。「道具は手入れが肝心だ。これで、そのナイフも長く使えるだろう」と、騎士らしい実直さで。
 セレスティーナは、美しい押し花がいくつも挟まれた小さな詩集と、絵を描くための木炭のセットを。「あなたの優しい心と、植物への愛情を、いつまでも大切にしてくださいね」と穏やかに。

 そして、アルトは少し照れながら、自身で彫刻を施した木製の髪飾りを差し出した。それは、ミコが好きなスノードロップの形をしていた。「…これ、その…いつも頑張ってるから…」彼の不器用な言葉に、ミコは顔を真っ赤にして、しかし嬉しそうに受け取った。
 ケンタとユメも、それぞれ手作りの木彫りの小鳥や、編み上げた花の冠をプレゼントし、ミコは一つ一つに心からの感謝を伝えた。

 祝いの席は、質素ではあったが、愛情に満ちた温かいものだった。ミコは、家族からの祝福を胸に、薬草師として、そして一人の大人として、このアキオの町でしっかりと生きていくことを改めて誓うのだった。

 穏やかな祝福の時間はあっという間に過ぎていく。生命樹の実は静かに輝きを増し、村は日々の営みを重ねていた。

 そして、ミコの祝賀から一週間後。
 アキオにとっても、シルヴィアたち妻一同にとっても、そして何よりもアヤネ自身にとって、長年待ち望んだ特別な日が、静かに、しかし確かな足取りでやってきたのだった――アヤネの、二十歳の誕生日である。
 その朝、中央館の空気は、いつもとは違う、どこか厳かで、そして甘やかな期待に満ちていた。
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