有栖と奉日本『千両役者のワンカラ―』

ぴえ

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第十章:最後の策

有栖_10-1

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 目の前で大の字で倒れている天使が立ち上がる様子がないことに少し安堵した有栖だが、彼が意識のあるうめき声を出すと咄嗟に身構えた。

「安心してください。立てませんよ」

 天使が倒れたままそう言ったが、有栖は警戒を緩めず、

「そうしてくれると助かる。ただでさえ勝った気がしていないんだから」

 自嘲気味にそう言った。有栖がそう思うのは最後の一撃は明らかに天使が銃撃によるダメージでカウンターをミスしたことを理解していたからだ。そもそも、そのダメージがなければ勝てていたかも解らない。そう考えると、天使を止めることが出来た喜びはあれど、一対一で彼に勝利した感覚は全くなかった。

「負傷した箇所を狙わなかったのに、何を言っているんですか。こちらも、そちらも総力戦だった。それで負けた――それだけです」

 気づかれていたか、と有栖は天使の発言を聞いて苦笑いをする。勝利を目指すなら真っ先にそこを狙うべきなのは解っていた。しかし、言い訳にするわけではないが、天使のことだからその部分を撒き餌にカウンターがくるのではないか、と思い決断を下させなかった部分もある。結果、彼女は負傷箇所を狙えなかっただけだ。

「どうするつもりですか?」

 倒れたまま、天使が有栖に問いかけた。

「何が?」
「私を倒しても、『レシエントメンテ』を止める方法はないでしょう?」

 天使の問いに有栖は答えずに、ダメージが重く残っている身体を引きずるように部屋の奥のデスクに置いてあったパソコンへと歩く。そこに『レシエントメンテ』があることは虹河原から聞いていた。

「物理的な破壊に意味はありませんよ。バックアップもあるのですから」

 倒れながらも横目で有栖を見て、行動の可能性を指摘した。しかし、彼女の行動は彼の予想もしていなかったものだった。
 有栖はズボンの後ろのポケットから小型のハードケースを取り出し、それを開けるとUSBメモリを取り出したのだった。
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