有栖と奉日本『千両役者のワンカラ―』

ぴえ

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第九章:ラストダンス

有栖と天使_9-1

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 最初の一撃は天使だった。鋭い左ジャブが有栖の顔面に向けて放たれたが、彼女はそれを紙一重で避ける。
 その攻撃を口火となり、互いに鋭いジャブの応酬を繰り出す。スピードは互角。互いに避けてはいたが、全くの同時に拳が放たれたとき、互いの顔が同時に跳ね上がった。
 次に、有栖が選択をしたのはボディブロー。右拳がわき腹に刺さるが、天使の選択したハイキックが彼女の左のガードごと重くぶち当たる。
 意識をつなぎ止め、右足で倒れそうになるのを踏ん張るがそこに天使がラッシュを仕掛ける。
 有栖は捌こうとするが、全ては不可能だった。数撃が彼女の意識を刈り取ろうとするが、必死でつなぎ止め、大きく一歩踏みだし、頭突きを当てた。
 天使が後方にたたらを踏む。そこに今度は有栖がラッシュを仕掛けた。数撃当てるが、倒すまでは至らない。
 互いのダメージが蓄積し、スピードが落ちてくると足を止めての撃ち合いとなった。
 拳と蹴りが交互に炸裂する。血しぶきが飛び、策略などなく目の前の相手を倒す為に攻撃を繰り出し合う。
 限界が近い――それを察したのは天使だった。彼自身が繰り出した攻撃を当てた手応えからの自信ではあるが、しかし、一方で自身の限界も近い。

 ――カウンターだ。それで終わる。

 単調で、落ちてきたスピード。タイミングは容易くとれる。
 有栖の右拳が大振りのフックとなって天使に襲いかかる。
 天使はタイミングを見て、右の拳を固く握り、ストレートを放つ。
 タイミングは完璧だった。
 しかし、そのとき鋭い痛みが天使を襲った。
 冷静になった天使の頭がアドレナリンの分泌を止めたのか、銃撃で撃ち抜かれた肩が危険なシグナルを発した。
 その痛みが天使の攻撃のスピードに僅かなブレーキをかけた。
 結果として、天使の攻撃が有栖に届く前に、彼女の攻撃が先に当たる。皮肉なことにそれはカウンターとなってしまった。
 続けて、有栖の左、右、左、と拳が連続で当たり、天使の頭と身体が左右に揺れる。
 そして――

 有栖の右の打ち下ろしが天使の顔面を撃ち抜き、地面に叩きつけられるように天使がダウンした。
 天使は起きあがることが出来ず、有栖はいつの間にか無呼吸で攻撃を放っていたことから解放を求めるように顔を上げ、生きていることを諦めないように呼吸を求めて、顔を天に向けて荒く呼吸をした。
 その姿はまるで勝利の咆哮を上げている獣のように、天使には映った。
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