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Ⅲ章 ヘスペリオス洞穴
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ぴちょりぴちょりと水滴が落ちる洞窟。
ここをただひたすら歩くこと20分ほど。
暗い洞穴ということで20分といえども、なかなか疲れるものがある。
特に地盤沈下的な魔法を使われたとき、一瞬でも気を失ってたことが痛い。
どんな風に落ちて、落ちた場所がどの辺なのか一切が分からない。
これは予想以上に厄介な問題だ。
道は今のところ一本道で、もどろうと思えば戻れる。
今から引き返すべきか不安になりながらも洞窟を歩いていく。
下手に動くよりもじいやさんを待ったほうが良い判断か。
でも、僕から見ても手ごわい動物であろうあの生き物からして、死んでる可能性が無いことも。その場合、あそこにいたままというのはまず無い選択肢だ。
幸い鍾乳洞のようなこの洞窟の構造や見た目からして、これらの道や空間は昔からあったと考えるべきだろう。
どこかに出口もある…と考えたい。
鍾乳洞ってどうやって出来たんだっけな…いや、異世界だし地球とは違う法則で出来てるかもしれない。
なんてことを考えつつ、歩いているとぐぅぅぅとお腹の鳴る音がした。
僕はタコの体になって以来、お腹を鳴らすことはなくなったので、自然――
「あぅ・・・」
赤面するエンデのお腹が鳴ったということになる。
恥ずかしがって縮こまる彼女はちょっと可愛い。
「・・・食べられそうなものは無いね。」
あたりを見渡してそう言った。
小さく、蠢く小動物や昆虫は居れども、あれらに毒や雑菌が無いとも限らない。
湿気てる密閉空間のこの場で焚き火など出来ないし、そもそも燃やすものが無い。
彼女の火魔法で焼こうにも、そこまで細かい火加減はできまい。
消炭になるのがオチだ。
我慢してもらうしかない。
「わ、分かっている!」
「・・・そう。」
苦笑。
また黙して歩く。
しばらくして。
「・・・き、聞こえたか?」
「・・・。」
会話の流れ的に聞こえた上でしかありえないだろうに。
ここは知らんふりをするのが大人のエチケットというものだろうか?
「い、いや、なんでもない。」
いろいろな意味で改めて聞くことのおろかさに思い至ったのだろう。
彼女は口をつぐんだ。
「ふふ。」
「わ、笑うな。」
「恥ずかしがること無いさ。普通に可愛いと思う。」
女の子のお腹が鳴って恥ずかしがるというのはそれなりのテンプレイベントだと思うが、あれって結構可愛いと思うんだ。
その旨を伝えると、彼女は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
軽い悲鳴の後にごにょごにょと言っていたが、残念ながら聞き取ることは出来ない。
一応言っておくが、本当に聞こえない音量だっただけで、ラブコメにありがちな時たま極端に耳が悪くなる主人公とかじゃないのであしからず。
どうせなら聞こえる程度の音量でぼやいてもらいたかったものである。
後ろをちらっと伺うと、「・・・っ!?・・・っ!!」何も言わずにただ顔を背け、手で顔を隠すまでする。
…あれ?
この生き物何?
かなり可愛くなってる気がする。
「…ちょっとここで待ってて…」
「え、え、ええ、え?」
「…しばらく一人にするけど…」
「いや、まてっ!
理由を話してから…はっ!?まさかっ!!なんだっ!?
うざかったのかっ!?
こっそり臭いをくんかくんかしたのがうざかったのかっ!?
気持ち悪かったのかっ!?そ、それとも髪の毛をしゃぶったのがばれ――
…んぐっ!?」
「ちょっと静かに。」
タコになって、狩りをし続けて身についた技能。
というか野生の生き物になって手に入れた技能。
それは周囲に対する人間レベルではありえないほどの『注意力』である。
警戒心と言い換えても良い。
要は「人間が動物に気づいたときにはすでに動物の背中を見ていた」なんて経験がないだろうか?
全身を使っての索敵能力。
特に単独行動を行う動物に強く備わっている能力が当然ながら僕にもある。
異世界というのもあって、その力は地球の動物とは段違いに強く、この力がゆえに僕は厳しい自然界でなんとか生き延びてきたのである。
その索敵能力、気配察知(タコレーダー)はおそらく魔力量に比例して、範囲が変わる。
範囲は僕の場合、約1キロ。
見通しの悪い場所では半分にまで落ち込む。
強さもおおよそはつかめる。
そしてその気配察知、タコレーダーに引っかかった大型の生き物がいる。
よって問題が発生した。
「…動かないか。」
僕が捕捉した動物は『動かない』。
これだけで警戒に値する。
大きさにしたがって魔力量は大きくなる傾向がある。
魔力量が大きいということは向こうもそれなりの索敵能力があるということ。
ゆえに僕が大型肉食獣を食べる機会は少ない。
強い場合は逃げるし、弱い場合は逃げられるからだ。
そこをなんとかごまかして接近できるのがタコの擬態能力。
体の魔力を大気中に充満する魔力に似せるという擬態まで可能なタコであるがために、相手に気づかれずに近づくことができる。
逆にリグレットホースのように索敵から外れる動物もいるのだが、いまだ理由は良く分からん。それはまたの機会に話すとして、今の問題は『動かない』動物である。
逃げずに動くということは魔力量が少ないタイプの動物なのか、それとも逃げる必要が無いのか、動けない状況にあるのか。
確認が要る。
もしも僕よりも強い場合、ほぼ一本道のこの洞穴において脱出が非常に困難なことを意味する。
戻ってもリグレットホースが魔法を使って追ってくるかもしれないし、このまま突き進むかの判断が必要だ。
体の感覚を揺らぐように薄めていく。
この暗さなら体の色自体を変える必要は無い。
隠すべきは音と気配。
周りの空気に混ぜ込むように自分の魔力を拡散し、ある種の結界を作るイメージで溶け込む。
「…なんだ?
何かしたのか?
い、今にも消えてしまいそうだぞ?」
魔法使いとして優秀だからだろう。
エンデは僕の魔力の希薄さを感じたようだ。
「それじゃ、明かりはおいていくからじっとしててね。」
今回は大きな目印がある。
スタート地点には彼女が。
目的地には大型動物が。
距離は約2、300メートル。
この程度の距離なら明かりが無くても十分だ。
「まって―」
静止の声を振りきって、近づいていく。
触碗をすべて開放し、それらの感覚を使って壁沿いに進んでいくことで徐々に徐々に近づいていく。
やっぱり明かりが欲しかったと思いつつ、ずるずる進んでいくと相手が急速に動くのを感じた。
離れていくようだ。
「…僕に気づいた…のか?」
僕の隠蔽擬態に気づいた。
というのも考えられることではある。
だが、どうにも腑に落ちない。
希薄な気配しかない僕に気づくほどの相手ならもっと早くに逃げ出していい。
なぜいまさら?
「…。」
索敵に集中する。
集中。
集中。
集中する。
「…どうも分かりづらいなぁ。」
洞穴のような曲がりくねった場所だと索敵能力がかなり落ちる。
離れていった動物はいまや僕の索敵範囲外だ。
「…まぁ、逃げたならいいか。
僕もいちいち見に行く手間が省け――づあっ!?」
ミシリ。
全身の筋肉が打ち付けられ、体が撓(たわ)む。
そのまま吹き飛ばされ、壁にツッコむ僕。
「ぐ…づっ…あぐ。
たいなぁ、いったい。痛すぎる。」
深海魚の一種としてチョウチンアンコウと呼ばれる魚の仲間をしってるだろうか?
頭から出す誘引突起(チョウチン)を他の生物の餌に見立てたり、光を出して注意を引いてそれに寄ってくる魚を食べる魚である。
前世で見たそのことをふと思い出した。
すなわちあの気配を出す大型動物だと思っていたのはそちらに注意を向けるための囮で、実際は目の前の蠢く動物が本体なのだ。
急速に動いた気配をもっていた動物は現在、僕の目の前に存在している。
逃げたように見せかけて、気配を消してこちらに接近していた。
そんなところだろう。
暗闇で姿が見えないが、気配はつかめる。
こちらを仕留める寸前で油断しているためかもしれない。
その油断が命取りだ。
「エアスラッシュッ!!」
お馴染み風の刃で切り抜くつもりでエアスラッシュを繰り出す。
気配で位置が丸分かりである以上、外すことは無い。
スカートの中から出ている触腕を盾代わりに周りにくゆらせながら、エアスラッシュをくりだすと、大きな叫び声をあげてどこかへ行った。
「…せっかくだから捕らえて食べたかったけど…まぁどこかへいったならいいや。」
再度索敵を開始して、念入りに周りを調べる。
何か居る音が無いか、気配が突然現れたりしてないか。
その場でたたずんでいると、遠くで爆音が響く。と同時に気配が二つ。
タコレーダーに引っかかった。
片方はエンデ。
もう片方は…当然。
☆ ☆ ☆
「…何だ!?」
エンデが一人、このまま置いて行かれないか、一人で彼女は大丈夫なのだろうか、無事ここから抜け出せるのか、魔物がこちらにせまってこないかなどとさまざまな意味で不安になっていたころ、ズズズズと大きな物を引きずるような音が奥から聞こえてきた。
当然、人型の生き物でも小さな魔獣がやってきた音でもない。
さらにはズズズという音の間隔はかなりせまく、かなりの速度でこちらに向かってきてるのが分かる。
そしてふと発声する魔力による圧力。
今までろくに戦ったことが無く、魔法に関する才能しか無い鈍感な彼女でも分かるほどの大きな気配が背後に現れる。
そっちをばっと振り向いてもそこには何も無く。
次の瞬間彼女の真上をゴッと風切り音を発てて巨大な者が通り過ぎた。
「きゃあっ!?」
おそらくは彼女の生涯で最大の幸福だったろう。
薄暗い洞窟で一人。
その状況で相手を確認する前に逃げ出そうとする。それは当然の思考で、しかしただ安直に逃げるだけでは当然、背後から迫ってくる捕食者から逃げられるわけが無い。
待ち伏せ方の狩りをする魔獣相手では気づいたときすでに手遅れだし、徘徊型ならば概ねは自分の間合いに獲物を入れてから襲ってくる。
特に人間の身体能力は他野生動物に比べて弱い傾向にある。
肉弾戦なんて一度もしたことの無い、貴族の女性であるならばなおさらだ。
『逃げる』。
自然界では逃げるだけでも命がけの難しい行為なのである。
当然彼女が普通に逃げるだけでは食べられていただろうが、彼女は足をくじいていたためによろけて、転げた。
上半身を狙っていた捕食者にとっては予想外の動きで、これがゆえに彼女は食べられずに済んだのだ。
怪我をしていて幸運だった。
足の痛みを我慢しながら起き上がり、目の前を通り過ぎた生物に目を見開くエンデ。
「…ミミズ…なのか?」
そこには大きな大きなクモのような足を持った、しかし全体的にはミミズのような生物が居た。
このミミズもどきと言うべきか、クモもどきと言うべきか。
ここ数年で洞穴内に住み着いた種で、このあたりの冒険者組合にはまったく情報が載っていない魔獣である。
ミミズとしての特徴とクモとしての特徴を持つこの生物は普段は地中を住処としているのだが地中をもぐり進んでいるうちにたまたまこの洞穴にたどり着いたのだ。
この洞穴内は特別な資源があるというわけでもないし、森の奥のほうにある洞穴ということでなおのこと知られていないこのミミズグモ。
また、もう一つの特徴として。
「ふ、ふれあぼむっ!!」
震える声でミミズに効果の高そうな火の魔法を使うエンデだが、空気の流れが無い洞穴内では火魔法の威力は著しく落ちる。
普段の三割減の大きさの火の爆弾がミミズにぶち当たる。
が、傷つきながらも獲物であるエンデに体当たりをしかける。
そのミミズとは思えないほどの獰猛性、もとい貪欲な肉食動物だと言うのがあげられる。
このミミズ。
繁殖期以外は自分の同属すら食らうほどの大食らいなのである。
のわりには、自身を殺しうるかもしれない相手の場合はすぐさま逃げ出すと言う臆病さも併せ持っているため、動物としてはかなり強いと言える。
タコによるエアスラッシュによって、足が一本落ちているものの、弱まった魔法で大きな怪我を覆うほど弱くは無い。
多少の傷を無視して、次の攻撃をしかけようとするが、やたらと魔法を連射してくるので物理的に戻される始末だ。
「エアスラッシュっ!!グランドニードルっ!!アクアソードッ!!
スプラッシュッ!!ライトスピアっ!!」
が、どれも照準が甘く、恐怖のためとまだ未熟であるがゆえの魔法の威力は低い。
中型までならともかく大型の生物は自身の体重を支えるために筋肉や骨が小さいものよりも頑丈で重い。
一瞬でも間が空けばその瞬間に巻きつき、捕食する。
捕食は頭部分よりもちょっと舌のほうにある穴から丸呑みと言う形だ。
「はぁはぁ、これでっ!どうだぁっ!!
トーテムファイアァアアアアッ!!」
トーテムポールのような柱状の炎を相手の地面から吹き出すという魔法だが、これもまた威力がかなり減衰していた。
必死な彼女にとって火魔法が密閉空間では向かないことに気づけず、じいやから聞いたとおり、虫やこうした軟体動物には炎が効くという言葉をそのまま鵜呑みにして使っていたのだ。
それが致命的だった。
大規模な炎魔法により周りの酸素が一気に使われ、軽いめまいと息苦しさに襲われたエンデはよろける。
そしてその大きな隙を逃すほど甘い相手ではないミミズグモは今度こそエンデを食らおうとまずはその体に体当たりをする。
「あぐっ!?」
なんとか避けようとしたが、いためた足で避けることは出来ず、多少は当たりを浅めたものの、致命的である。
即死するというわけでもないが放っておけば確実に死ぬ怪我である。
そこにズズズとせまりよるミミズグモ。
「…かはっ…じいや、父上…姉上、母上…死にたくないよ。」
嘆く余裕も無く、後悔する余裕すらも然程に無いほどの強撃をうけた彼女は幸いか、不幸か。
死に間際の命乞いというみっともない姿をさらすまもなく気絶した。
命乞いが通用する相手ではないが。
そしてそこに。
「どっせいあっ!!」
タコのとび蹴りがミミズグモに命中する。
弾き飛ばされるミミズグモ。
久しぶりの獲物を前にして興奮で周りが見えてなかったミミズグモにとって完全な不意打ちだった。
「…死んじゃったかな?」
血まみれで倒れている彼女の様子を伺いつつ、ミミズグモにエアスラッシュを食らわせまくるタコ。
ミミズグモは刻まれていく。
が、さすがに早々簡単に死ぬほど簡単な相手ではない。
逃げ出そうとしたミミズグモを伸ばした触腕で捕らえたタコは――
「タコ脚キャノン、零式っ!!」
某流浪侍漫画の中に出てくる技の名前をパク――リスペクトした技を繰り出した。
普通では一本の触腕で行われるタコ脚キャノンが2本以上の触腕を使って行われるタコ脚キャノンで、複数の触碗を重ね合わせてさらにひねりを加えて、一本の太い太い高速の螺旋突きを繰り出す、牙や爪を持たないタコにとってのまさに必殺技である。
基本的に正面から戦うような生物ではない、擬態して忍び寄って先手を取るタコという生物にとって初撃は大事だ。
そのための一撃必殺技。
ねじり、引き締め、収縮するため、時間がかかる技だが、一度当てればよほど堅い魔獣以外ではまず一撃で大怪我するほどの衝撃がミミズグモの体を突き抜けた。
と、同時に衝撃によって肉片が飛び散る。
顔に飛び散った血と肉片を舐め取って味見しつつ、彼女の元に向かう。
触腕をスカートの中に縮小して納め、彼女の怪我の具合を見るとなかなかひどい。
骨が何箇所か。
腕から骨がちょっと飛び出ている。
さらには打ち身だろうか。
服が破れ、そこから除くお腹はかなり拾い具合に青あざとなっていた。
下手したら内臓をいためているかもしれない。
「…すぐには死なないけれど…危ないな。」
これはかなり不味い。
非常に不味いぞ。
こうなったら多少の荒業を使うしかない。
そのためにはさすがに人間の姿のままは無理だろう。
「…やむをえないか。」
見捨ててもいいのだが、さすがに1週間近く一緒に居た人間を見殺しにするほど野生動物に染まってない僕としては、多少の手間隙くらいはいいかと思う。
それにたとえ中身が多少残念な子でも好意を向けてくれる美形。誰だろうと少しは助けようとするものである。
僕の本当の姿がばれるくらいなら…あ、でもそしたら外見に惚れたとか言うこの子はもう僕を好きにはならないか。
…ああ、うん。
まぁいいや。
そろそろ洞穴の中をさまようのも飽きてきたし、暗くてじめじめした場所で気が重くなってきたし。
服を脱ぎ、筋肉がどんどん盛り上がる。
ムキムキと筋肉が盛り上がり、僕の姿は可憐な美少女からおなじみタコの姿にとなる。
一気に意気を吸い込み、上空へと拳、ならぬ触腕を向ける。
魔力を溜め込み、溜め込み、溜め込んで。
一応、触腕をエンデを守るように展開しておいて。
「特大エアすらーっしゅっ!!」
特大のエアスラッシュをひたすら上空に打ち続けること5分。
こちらに落ち込んでくる岩も斬り飛ばし、小さな石は触碗で跳ね除け、周りから押し寄せる砂もまたエアスラッシュで吹き飛ばす。
大量の土が落ちてきたときはエアスラッシュと触腕を兼用で吹き飛ばしたり、弾き飛ばしたりする。
タコの体の下に彼女(エンデ)をしまいこんでひたすらひたすら洞穴を上空へと切り抜いて切り抜いて、切り抜いた結果が。
「光だね。」
差し込む光であった。
洞穴が崩落するなら崩落するで、崩れ落ちてくる岩砂もまるごと吹き飛ばすと言うとてつもない荒業である。
一歩間違えれば生き埋めか、圧死だったが、軟体動物であり、頑丈なほうであるタコにとっては埋もれてもそれこそよほど深く埋まらない限りは土の重さ相手でもなんとか這い出ることが出来る。
エンデの場合はすぐさま手当てが必要な状況だ。
コレぐらいの無茶をしてでもショートカットをしなければ医者に見せたときにはすでに手遅れ、というのが普通の見方だろう。
あの洞穴の奥にすすんだからと言って出口につながっていると言うわけではないのだから。
ゆえにこの選択はめちゃくちゃなように見えてそれなりに道理にかなっていたのだ。
大胆にして適切。
無謀に見えて、無茶ではない。
そういった自身が生き残るために適切な選択が厳しい自然界では必須なのである。
のかもしれない。
「これも何かの縁だ。
久しぶりに話し相手になってもらったことだし、助ける努力ぐらいはするよ。
もう少しの辛抱だ。」
返事は期待していないものの、そう気絶した彼女に話しかけて、タコは自身の小屋に疾駆するのであった。
ちなみに、であるが。
「…あの魔獣め…おのれ…お嬢様をかえ、せ…ガク。」
崩れた岩の下敷きになったじいやは割と痛い怪我を負って、しばらく気絶。
その後、多少の手がかりでもと思い、タコの小屋を訪ねてエンデと再会する。
リグレットホースは洞穴に閉じ込められ、じいやとの死闘に水を差された形となる。
じいやに負けはしないものの、勝てる戦いと言うほどでもなかったリグレットホースにとってありがたいことではあった。
このリグレットホースはそこそこの老体であるためである。
ここをただひたすら歩くこと20分ほど。
暗い洞穴ということで20分といえども、なかなか疲れるものがある。
特に地盤沈下的な魔法を使われたとき、一瞬でも気を失ってたことが痛い。
どんな風に落ちて、落ちた場所がどの辺なのか一切が分からない。
これは予想以上に厄介な問題だ。
道は今のところ一本道で、もどろうと思えば戻れる。
今から引き返すべきか不安になりながらも洞窟を歩いていく。
下手に動くよりもじいやさんを待ったほうが良い判断か。
でも、僕から見ても手ごわい動物であろうあの生き物からして、死んでる可能性が無いことも。その場合、あそこにいたままというのはまず無い選択肢だ。
幸い鍾乳洞のようなこの洞窟の構造や見た目からして、これらの道や空間は昔からあったと考えるべきだろう。
どこかに出口もある…と考えたい。
鍾乳洞ってどうやって出来たんだっけな…いや、異世界だし地球とは違う法則で出来てるかもしれない。
なんてことを考えつつ、歩いているとぐぅぅぅとお腹の鳴る音がした。
僕はタコの体になって以来、お腹を鳴らすことはなくなったので、自然――
「あぅ・・・」
赤面するエンデのお腹が鳴ったということになる。
恥ずかしがって縮こまる彼女はちょっと可愛い。
「・・・食べられそうなものは無いね。」
あたりを見渡してそう言った。
小さく、蠢く小動物や昆虫は居れども、あれらに毒や雑菌が無いとも限らない。
湿気てる密閉空間のこの場で焚き火など出来ないし、そもそも燃やすものが無い。
彼女の火魔法で焼こうにも、そこまで細かい火加減はできまい。
消炭になるのがオチだ。
我慢してもらうしかない。
「わ、分かっている!」
「・・・そう。」
苦笑。
また黙して歩く。
しばらくして。
「・・・き、聞こえたか?」
「・・・。」
会話の流れ的に聞こえた上でしかありえないだろうに。
ここは知らんふりをするのが大人のエチケットというものだろうか?
「い、いや、なんでもない。」
いろいろな意味で改めて聞くことのおろかさに思い至ったのだろう。
彼女は口をつぐんだ。
「ふふ。」
「わ、笑うな。」
「恥ずかしがること無いさ。普通に可愛いと思う。」
女の子のお腹が鳴って恥ずかしがるというのはそれなりのテンプレイベントだと思うが、あれって結構可愛いと思うんだ。
その旨を伝えると、彼女は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
軽い悲鳴の後にごにょごにょと言っていたが、残念ながら聞き取ることは出来ない。
一応言っておくが、本当に聞こえない音量だっただけで、ラブコメにありがちな時たま極端に耳が悪くなる主人公とかじゃないのであしからず。
どうせなら聞こえる程度の音量でぼやいてもらいたかったものである。
後ろをちらっと伺うと、「・・・っ!?・・・っ!!」何も言わずにただ顔を背け、手で顔を隠すまでする。
…あれ?
この生き物何?
かなり可愛くなってる気がする。
「…ちょっとここで待ってて…」
「え、え、ええ、え?」
「…しばらく一人にするけど…」
「いや、まてっ!
理由を話してから…はっ!?まさかっ!!なんだっ!?
うざかったのかっ!?
こっそり臭いをくんかくんかしたのがうざかったのかっ!?
気持ち悪かったのかっ!?そ、それとも髪の毛をしゃぶったのがばれ――
…んぐっ!?」
「ちょっと静かに。」
タコになって、狩りをし続けて身についた技能。
というか野生の生き物になって手に入れた技能。
それは周囲に対する人間レベルではありえないほどの『注意力』である。
警戒心と言い換えても良い。
要は「人間が動物に気づいたときにはすでに動物の背中を見ていた」なんて経験がないだろうか?
全身を使っての索敵能力。
特に単独行動を行う動物に強く備わっている能力が当然ながら僕にもある。
異世界というのもあって、その力は地球の動物とは段違いに強く、この力がゆえに僕は厳しい自然界でなんとか生き延びてきたのである。
その索敵能力、気配察知(タコレーダー)はおそらく魔力量に比例して、範囲が変わる。
範囲は僕の場合、約1キロ。
見通しの悪い場所では半分にまで落ち込む。
強さもおおよそはつかめる。
そしてその気配察知、タコレーダーに引っかかった大型の生き物がいる。
よって問題が発生した。
「…動かないか。」
僕が捕捉した動物は『動かない』。
これだけで警戒に値する。
大きさにしたがって魔力量は大きくなる傾向がある。
魔力量が大きいということは向こうもそれなりの索敵能力があるということ。
ゆえに僕が大型肉食獣を食べる機会は少ない。
強い場合は逃げるし、弱い場合は逃げられるからだ。
そこをなんとかごまかして接近できるのがタコの擬態能力。
体の魔力を大気中に充満する魔力に似せるという擬態まで可能なタコであるがために、相手に気づかれずに近づくことができる。
逆にリグレットホースのように索敵から外れる動物もいるのだが、いまだ理由は良く分からん。それはまたの機会に話すとして、今の問題は『動かない』動物である。
逃げずに動くということは魔力量が少ないタイプの動物なのか、それとも逃げる必要が無いのか、動けない状況にあるのか。
確認が要る。
もしも僕よりも強い場合、ほぼ一本道のこの洞穴において脱出が非常に困難なことを意味する。
戻ってもリグレットホースが魔法を使って追ってくるかもしれないし、このまま突き進むかの判断が必要だ。
体の感覚を揺らぐように薄めていく。
この暗さなら体の色自体を変える必要は無い。
隠すべきは音と気配。
周りの空気に混ぜ込むように自分の魔力を拡散し、ある種の結界を作るイメージで溶け込む。
「…なんだ?
何かしたのか?
い、今にも消えてしまいそうだぞ?」
魔法使いとして優秀だからだろう。
エンデは僕の魔力の希薄さを感じたようだ。
「それじゃ、明かりはおいていくからじっとしててね。」
今回は大きな目印がある。
スタート地点には彼女が。
目的地には大型動物が。
距離は約2、300メートル。
この程度の距離なら明かりが無くても十分だ。
「まって―」
静止の声を振りきって、近づいていく。
触碗をすべて開放し、それらの感覚を使って壁沿いに進んでいくことで徐々に徐々に近づいていく。
やっぱり明かりが欲しかったと思いつつ、ずるずる進んでいくと相手が急速に動くのを感じた。
離れていくようだ。
「…僕に気づいた…のか?」
僕の隠蔽擬態に気づいた。
というのも考えられることではある。
だが、どうにも腑に落ちない。
希薄な気配しかない僕に気づくほどの相手ならもっと早くに逃げ出していい。
なぜいまさら?
「…。」
索敵に集中する。
集中。
集中。
集中する。
「…どうも分かりづらいなぁ。」
洞穴のような曲がりくねった場所だと索敵能力がかなり落ちる。
離れていった動物はいまや僕の索敵範囲外だ。
「…まぁ、逃げたならいいか。
僕もいちいち見に行く手間が省け――づあっ!?」
ミシリ。
全身の筋肉が打ち付けられ、体が撓(たわ)む。
そのまま吹き飛ばされ、壁にツッコむ僕。
「ぐ…づっ…あぐ。
たいなぁ、いったい。痛すぎる。」
深海魚の一種としてチョウチンアンコウと呼ばれる魚の仲間をしってるだろうか?
頭から出す誘引突起(チョウチン)を他の生物の餌に見立てたり、光を出して注意を引いてそれに寄ってくる魚を食べる魚である。
前世で見たそのことをふと思い出した。
すなわちあの気配を出す大型動物だと思っていたのはそちらに注意を向けるための囮で、実際は目の前の蠢く動物が本体なのだ。
急速に動いた気配をもっていた動物は現在、僕の目の前に存在している。
逃げたように見せかけて、気配を消してこちらに接近していた。
そんなところだろう。
暗闇で姿が見えないが、気配はつかめる。
こちらを仕留める寸前で油断しているためかもしれない。
その油断が命取りだ。
「エアスラッシュッ!!」
お馴染み風の刃で切り抜くつもりでエアスラッシュを繰り出す。
気配で位置が丸分かりである以上、外すことは無い。
スカートの中から出ている触腕を盾代わりに周りにくゆらせながら、エアスラッシュをくりだすと、大きな叫び声をあげてどこかへ行った。
「…せっかくだから捕らえて食べたかったけど…まぁどこかへいったならいいや。」
再度索敵を開始して、念入りに周りを調べる。
何か居る音が無いか、気配が突然現れたりしてないか。
その場でたたずんでいると、遠くで爆音が響く。と同時に気配が二つ。
タコレーダーに引っかかった。
片方はエンデ。
もう片方は…当然。
☆ ☆ ☆
「…何だ!?」
エンデが一人、このまま置いて行かれないか、一人で彼女は大丈夫なのだろうか、無事ここから抜け出せるのか、魔物がこちらにせまってこないかなどとさまざまな意味で不安になっていたころ、ズズズズと大きな物を引きずるような音が奥から聞こえてきた。
当然、人型の生き物でも小さな魔獣がやってきた音でもない。
さらにはズズズという音の間隔はかなりせまく、かなりの速度でこちらに向かってきてるのが分かる。
そしてふと発声する魔力による圧力。
今までろくに戦ったことが無く、魔法に関する才能しか無い鈍感な彼女でも分かるほどの大きな気配が背後に現れる。
そっちをばっと振り向いてもそこには何も無く。
次の瞬間彼女の真上をゴッと風切り音を発てて巨大な者が通り過ぎた。
「きゃあっ!?」
おそらくは彼女の生涯で最大の幸福だったろう。
薄暗い洞窟で一人。
その状況で相手を確認する前に逃げ出そうとする。それは当然の思考で、しかしただ安直に逃げるだけでは当然、背後から迫ってくる捕食者から逃げられるわけが無い。
待ち伏せ方の狩りをする魔獣相手では気づいたときすでに手遅れだし、徘徊型ならば概ねは自分の間合いに獲物を入れてから襲ってくる。
特に人間の身体能力は他野生動物に比べて弱い傾向にある。
肉弾戦なんて一度もしたことの無い、貴族の女性であるならばなおさらだ。
『逃げる』。
自然界では逃げるだけでも命がけの難しい行為なのである。
当然彼女が普通に逃げるだけでは食べられていただろうが、彼女は足をくじいていたためによろけて、転げた。
上半身を狙っていた捕食者にとっては予想外の動きで、これがゆえに彼女は食べられずに済んだのだ。
怪我をしていて幸運だった。
足の痛みを我慢しながら起き上がり、目の前を通り過ぎた生物に目を見開くエンデ。
「…ミミズ…なのか?」
そこには大きな大きなクモのような足を持った、しかし全体的にはミミズのような生物が居た。
このミミズもどきと言うべきか、クモもどきと言うべきか。
ここ数年で洞穴内に住み着いた種で、このあたりの冒険者組合にはまったく情報が載っていない魔獣である。
ミミズとしての特徴とクモとしての特徴を持つこの生物は普段は地中を住処としているのだが地中をもぐり進んでいるうちにたまたまこの洞穴にたどり着いたのだ。
この洞穴内は特別な資源があるというわけでもないし、森の奥のほうにある洞穴ということでなおのこと知られていないこのミミズグモ。
また、もう一つの特徴として。
「ふ、ふれあぼむっ!!」
震える声でミミズに効果の高そうな火の魔法を使うエンデだが、空気の流れが無い洞穴内では火魔法の威力は著しく落ちる。
普段の三割減の大きさの火の爆弾がミミズにぶち当たる。
が、傷つきながらも獲物であるエンデに体当たりをしかける。
そのミミズとは思えないほどの獰猛性、もとい貪欲な肉食動物だと言うのがあげられる。
このミミズ。
繁殖期以外は自分の同属すら食らうほどの大食らいなのである。
のわりには、自身を殺しうるかもしれない相手の場合はすぐさま逃げ出すと言う臆病さも併せ持っているため、動物としてはかなり強いと言える。
タコによるエアスラッシュによって、足が一本落ちているものの、弱まった魔法で大きな怪我を覆うほど弱くは無い。
多少の傷を無視して、次の攻撃をしかけようとするが、やたらと魔法を連射してくるので物理的に戻される始末だ。
「エアスラッシュっ!!グランドニードルっ!!アクアソードッ!!
スプラッシュッ!!ライトスピアっ!!」
が、どれも照準が甘く、恐怖のためとまだ未熟であるがゆえの魔法の威力は低い。
中型までならともかく大型の生物は自身の体重を支えるために筋肉や骨が小さいものよりも頑丈で重い。
一瞬でも間が空けばその瞬間に巻きつき、捕食する。
捕食は頭部分よりもちょっと舌のほうにある穴から丸呑みと言う形だ。
「はぁはぁ、これでっ!どうだぁっ!!
トーテムファイアァアアアアッ!!」
トーテムポールのような柱状の炎を相手の地面から吹き出すという魔法だが、これもまた威力がかなり減衰していた。
必死な彼女にとって火魔法が密閉空間では向かないことに気づけず、じいやから聞いたとおり、虫やこうした軟体動物には炎が効くという言葉をそのまま鵜呑みにして使っていたのだ。
それが致命的だった。
大規模な炎魔法により周りの酸素が一気に使われ、軽いめまいと息苦しさに襲われたエンデはよろける。
そしてその大きな隙を逃すほど甘い相手ではないミミズグモは今度こそエンデを食らおうとまずはその体に体当たりをする。
「あぐっ!?」
なんとか避けようとしたが、いためた足で避けることは出来ず、多少は当たりを浅めたものの、致命的である。
即死するというわけでもないが放っておけば確実に死ぬ怪我である。
そこにズズズとせまりよるミミズグモ。
「…かはっ…じいや、父上…姉上、母上…死にたくないよ。」
嘆く余裕も無く、後悔する余裕すらも然程に無いほどの強撃をうけた彼女は幸いか、不幸か。
死に間際の命乞いというみっともない姿をさらすまもなく気絶した。
命乞いが通用する相手ではないが。
そしてそこに。
「どっせいあっ!!」
タコのとび蹴りがミミズグモに命中する。
弾き飛ばされるミミズグモ。
久しぶりの獲物を前にして興奮で周りが見えてなかったミミズグモにとって完全な不意打ちだった。
「…死んじゃったかな?」
血まみれで倒れている彼女の様子を伺いつつ、ミミズグモにエアスラッシュを食らわせまくるタコ。
ミミズグモは刻まれていく。
が、さすがに早々簡単に死ぬほど簡単な相手ではない。
逃げ出そうとしたミミズグモを伸ばした触腕で捕らえたタコは――
「タコ脚キャノン、零式っ!!」
某流浪侍漫画の中に出てくる技の名前をパク――リスペクトした技を繰り出した。
普通では一本の触腕で行われるタコ脚キャノンが2本以上の触腕を使って行われるタコ脚キャノンで、複数の触碗を重ね合わせてさらにひねりを加えて、一本の太い太い高速の螺旋突きを繰り出す、牙や爪を持たないタコにとってのまさに必殺技である。
基本的に正面から戦うような生物ではない、擬態して忍び寄って先手を取るタコという生物にとって初撃は大事だ。
そのための一撃必殺技。
ねじり、引き締め、収縮するため、時間がかかる技だが、一度当てればよほど堅い魔獣以外ではまず一撃で大怪我するほどの衝撃がミミズグモの体を突き抜けた。
と、同時に衝撃によって肉片が飛び散る。
顔に飛び散った血と肉片を舐め取って味見しつつ、彼女の元に向かう。
触腕をスカートの中に縮小して納め、彼女の怪我の具合を見るとなかなかひどい。
骨が何箇所か。
腕から骨がちょっと飛び出ている。
さらには打ち身だろうか。
服が破れ、そこから除くお腹はかなり拾い具合に青あざとなっていた。
下手したら内臓をいためているかもしれない。
「…すぐには死なないけれど…危ないな。」
これはかなり不味い。
非常に不味いぞ。
こうなったら多少の荒業を使うしかない。
そのためにはさすがに人間の姿のままは無理だろう。
「…やむをえないか。」
見捨ててもいいのだが、さすがに1週間近く一緒に居た人間を見殺しにするほど野生動物に染まってない僕としては、多少の手間隙くらいはいいかと思う。
それにたとえ中身が多少残念な子でも好意を向けてくれる美形。誰だろうと少しは助けようとするものである。
僕の本当の姿がばれるくらいなら…あ、でもそしたら外見に惚れたとか言うこの子はもう僕を好きにはならないか。
…ああ、うん。
まぁいいや。
そろそろ洞穴の中をさまようのも飽きてきたし、暗くてじめじめした場所で気が重くなってきたし。
服を脱ぎ、筋肉がどんどん盛り上がる。
ムキムキと筋肉が盛り上がり、僕の姿は可憐な美少女からおなじみタコの姿にとなる。
一気に意気を吸い込み、上空へと拳、ならぬ触腕を向ける。
魔力を溜め込み、溜め込み、溜め込んで。
一応、触腕をエンデを守るように展開しておいて。
「特大エアすらーっしゅっ!!」
特大のエアスラッシュをひたすら上空に打ち続けること5分。
こちらに落ち込んでくる岩も斬り飛ばし、小さな石は触碗で跳ね除け、周りから押し寄せる砂もまたエアスラッシュで吹き飛ばす。
大量の土が落ちてきたときはエアスラッシュと触腕を兼用で吹き飛ばしたり、弾き飛ばしたりする。
タコの体の下に彼女(エンデ)をしまいこんでひたすらひたすら洞穴を上空へと切り抜いて切り抜いて、切り抜いた結果が。
「光だね。」
差し込む光であった。
洞穴が崩落するなら崩落するで、崩れ落ちてくる岩砂もまるごと吹き飛ばすと言うとてつもない荒業である。
一歩間違えれば生き埋めか、圧死だったが、軟体動物であり、頑丈なほうであるタコにとっては埋もれてもそれこそよほど深く埋まらない限りは土の重さ相手でもなんとか這い出ることが出来る。
エンデの場合はすぐさま手当てが必要な状況だ。
コレぐらいの無茶をしてでもショートカットをしなければ医者に見せたときにはすでに手遅れ、というのが普通の見方だろう。
あの洞穴の奥にすすんだからと言って出口につながっていると言うわけではないのだから。
ゆえにこの選択はめちゃくちゃなように見えてそれなりに道理にかなっていたのだ。
大胆にして適切。
無謀に見えて、無茶ではない。
そういった自身が生き残るために適切な選択が厳しい自然界では必須なのである。
のかもしれない。
「これも何かの縁だ。
久しぶりに話し相手になってもらったことだし、助ける努力ぐらいはするよ。
もう少しの辛抱だ。」
返事は期待していないものの、そう気絶した彼女に話しかけて、タコは自身の小屋に疾駆するのであった。
ちなみに、であるが。
「…あの魔獣め…おのれ…お嬢様をかえ、せ…ガク。」
崩れた岩の下敷きになったじいやは割と痛い怪我を負って、しばらく気絶。
その後、多少の手がかりでもと思い、タコの小屋を訪ねてエンデと再会する。
リグレットホースは洞穴に閉じ込められ、じいやとの死闘に水を差された形となる。
じいやに負けはしないものの、勝てる戦いと言うほどでもなかったリグレットホースにとってありがたいことではあった。
このリグレットホースはそこそこの老体であるためである。
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