タコのグルメ日記

百合之花

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Ⅴ章 交易都市バルゴ

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そんな感じの生活が一月続いたころ。
やまいと朝風呂に入っていた時のことである。
日々過ごす本小屋と、風呂用に作った小屋で分けており、風呂用の小屋でゆったりのんびり中。

「頭、流すよ?目瞑って。」
「うん。」
「ちゃんと洗って、ほらお股も。」
「もうっ、分かってるよ。」
「ちゃんと石鹸を落として・・・」
「分かってるってば。」

今更ながら砂糖が普通に売られていたり、米があったり、香辛料が多かったり、意外にも石鹸があったりと文化がそこそこ発展していたりするのはもしかしたら僕意外にも日本なり地球なりの先人がいて、文化を伝えたのかなぁととりとめもないことを考えつつ。
僕達はのんびりと過ごしていた。
しかし、そうしたのんびりした日々も終わりが近い。やまいが自分の身を危なげなくとはいえど守れるようになった以上、僕は前以上に森の奥にいけるからだ。
今までは一日も家を空けると何かしらの動物が家をあさることもあったので、あまり家から離れられなかった。が、これからは違うのだ。
留守はやまいが守ってくれる。
もちろん、いざとなれば逃げて構わないので、絶対的に安心できると言うわけでもないが、それでも行動範囲がかなり広がると言うのはまだ見ぬ動物を見つけれる可能性があるということである。
さっそく今日明日にでも遠出に行こうか。それともやはり大事を取ってやまいがもう少し育つのを待つべきか。
でも、焦る理由は無いのだし、のんびり待つことにしようかな。

「・・・どうしたの?」
「なんでも。」

一緒に浴槽に入りながら、物思いにふけっていると――

いきなり自分達の寝泊りしてる本小屋、もとい母屋とも言うべき方向から大きな物音がした。誰かが駆け込んだような物音だ。
これは―治療を求めに来た冒険者に違いない。いまだちらほらやってくるのだからこまったものだ。
しかも今回の人はよほど余裕が無いのか、礼儀がなってないのかいきなり家に押し入り、がさごそと物をあさっている様子。
人の家にいきなり押し込み強盗た、ふてぇ野郎だ。
軽くお仕置きして追っ払おうと思い、タコから人型になり、すっぽんぽんのままで外に出る。
あ、一応言っておくと裸を見せて、うろたえる様を見て楽しもうなんて事は思っておらず、日ごろ裸で過ごしているのだから風呂に入る時にわざわざ着替えなど用意しない。タコが服を着るわけも無く、風呂から上がればタコの姿なのだから着替えは必要ないためだ。
ここは無難に男の裸体で行こうか?
女性の裸よりかはまだマシな気がする。

でも、裸の場合、男の股間部分の造形がうまくいかないのでちょっとこまる。
えっちな話になるが女性であれば筋を作り、少女然とした姿をとっておけば毛を生やす必要も無く、大した問題は無いのだが、男の場合股間のあれは形状が意外に複雑である。
チンとタマ。
その二つを、しかもほぼくっつく位近い場所に筋肉のみで作るのは非常に困難、というか無理である。
タダでさえ体を作るのに筋肉のリソースの大部分を割いているのに、さすがのガチムチボディも限界があるというもの。そもそもこの場所には少女が住んでいるということなのだ。
とりあえず裸体の少女姿で彼らの前に出なくてはならない。

余談だが、やまいと浴槽につかるときも裸体少女姿だ。母屋とは別にお風呂用の小屋を作ってそこに風呂を設置したのであるが、何せこちとら本職の大工さんというわけではない。
当初よりはかなり腕が上がったとは思うのだが、日曜大工レベルを逸脱するというわけではないので大きく作っても歪んだり、微妙な隙間ができてしまって使い物にならないの上に、お湯を沸かすための火の魔道具も仕込んでいるので万が一の火災などに対応しやすいようとも考えている。
そういう細かいところは気になりだしたら放っておけないわけで―
すなわち、上手い具合にできる大きさに収めるとなるとどんなに大きくしても人間をかたどった、もとい体積を圧縮した僕とやまいが膝を抱えて入ることが出来る程度の大きさしかありえないのである。
ちなみに、やまいがいなくても普通の状態で入るには浴槽はちと狭く、ぶっちゃけ第三者から見るなら鍋からあふれるほどの大きさのタコを生きたまま突っ込んで茹蛸にしたような景観だ。
風呂桶から出た僕の触腕は気持ち良いがために筋肉が弛緩して、だらしなく垂れており、胴体(あたま)の部分もだらんとなる。
一言で言うならばタコの死骸。死骸にしか見えないことだろう。死んだタコが鍋に使ってる画にしか見えないため、あまりタコの状態で入ることは無い。
シュールだから。一回やまいがそれを見て泣いたこともある。それ以来、やまいと一緒に入るときは必ず人型をとるようになった。いや、タコのままのほうが気持ち良いのだけれどね。

閑話休題。
やまいを置いて着替えるように言ってから、やむをえず裸で小屋に向かうとそこには意外にもまだ10を少し超えたくらいの―12、3歳ころのちょうど思春期に入り始めるころあいの少年が顔を赤くしてこっちを凝視し、もう一人は幼馴染くさい、幼馴染としか思えない、幼馴染風のポニーテールの女の子がいた。
これまた12、3歳のそろそろ体重とかが気になりだし始めるお年頃である。
こちらもこちらで多少顔を赤くしながらも、何を見てるのっ!と叫んで隣の少年の頬をつねり始めた。
やきもちか?やきもちなんか?
リア充は爆発しろ。
C4(爆弾の種類)は!?C4爆薬はないんか!?この場にあったら彼らにくっつけて爆発させてるのにっ!!
僕にはそもそも出会いが―あっても、タコなので人間は諦めなくちゃいけないんだぞっ!!
タコでもいいという物好きな女性はいないだろうか?
でも、いつぞやのエンデの反応を見ると望み薄だ。
好意的な相手ですらあの反応だったのに、普通の人が知ったらかなりどぎついだろう。

「で、君達はなに?見せ付けるためにわざわざここに来たの?
ていうか、あれかな?そっちの少年、腕ちぎれかけて、腹から血、流してるけどこの状況でよくもまぁそんな夫婦漫才ができるよね。女の子のほうも血が出てる・・・ように見えるけど、少年の血かなソレ。まぁどうでもいい。
問題はあれだ。あれだよ。完結に言おうか。人の家荒らさないでくれる?
メープルシロッ―って言っても分からんか。回復薬ならあげるから。」
「あ、はい。ありがとうございます。」

回復した少年が頭を下げてそう言った。
良い子そう。人の目を見て言ってないのが無礼だと思うが。それと頬が赤い。

「あ、あの、服着ないものなんですか?」

相変わらずソワソワして目をそらしたままの少年、の横に居た少女が言った。

「・・・着ないけど?」
「お、大人だぁっ!?」

服着ないと大人なのだろうか?
タコなんだから着ないに決まっている。というボケはこれくらいにして。
そういうことを言いたいわけではないのは当然分かる。大人なので。

「お風呂入ってたから。」
「お、お風呂ですか!?
な、なんでこんな場所で・・・」
「こんな場所だからさ。」
「え?」
「こんな場所だからこそ出来ることもある。
そうは思わないかい?」
「えと・・・そ、そうですね?」

それっぽいことで面倒な説明を省いたのだが、少年。それでいいのか?
こんなちんけなセリフで説得されてしまって。
少なくとも風呂はどこでも自作できるだろうに。

「とりあえずだ。服を着るから出て行け。」
「す、すいませんっ!」
「覗いちゃいやだよ?」
「今更っ!?」
「今更ってなにかな?少年。
丸々見ちゃったからってこと?」
「い、いやっ!?そのっ!!」

あたふたとあわてふためく少年。
それを見て幼馴染ポニーテールがまぁそれっぽいリアクションを―もとい少年の名前らしきものを叫ぶ。

「アルッ!!」
「べ、別に見てないよっ!!い、いたっ!?
いたいって、リタっ!」
「とりあえず家の外で待っててくれる?」
「は、はいっ。」

アル少年があわてて返事をし、続いて―

「わ、分かりました。」

リタ少女が返事をした。

服と一緒にやまいに被せるフードも取って、やまいを連れてこなくては。

☆ ☆ ☆

「あの、子供・・・ですか?」
「子供だよ。やまいって言うんだ。まぁ覚えなくてもいいさ。それでまだ何か用?」

僕の影に隠れるやまいを胡乱げに見つつも、リタと呼ばれた少女は話を続ける。

「私はリタ・V(ヴェスペリア)・エルリック。こっちはアルフォンス・モルディオ。豊饒の森に住む妖精とお見受けします。」
「妖精とやらを知らないから、自分がそうなのかは分からないな。」
「えと・・・怪我した冒険者を無償で助ける心優しき精霊の主、と聞きました。」
「だとすれば人違いかな。
僕は優しいと言うわけでもないし、無償で人助けをしているというわけでもない。精霊の主、というわけでも当然無い。そもそも精霊を見たことあるの?」

グリューネの話では魔力を分解するバクテリア、ないしは細菌的な存在が精霊だ。
今までこの目で見た事が無いので、そもそも見えない物かとても小さい物であると考えるのが自然。
精霊の主といってもいまいち良く分からない。
いや、グリューネにとっての精霊だから、彼女達は違う意味で使ったのかもしれない。
たとえば昔の人は天災を神様が怒った結果だとか、万物に宿る意思がうんぬんと思い込んでいたが、現代につれ科学で原理が証明されると同時に天災はただの事象となった。
昔の人が言う天災と地球の現代人が言うところの天災に関する意味合いは多少なりとも違う。
それらの人の知識や文化によって呼称は変わるのである。
ともすれば。

「水の精霊、風の精霊は確認されてるみたいです。会った事はないですけど。」
「へぇ・・・どんな味がするんだろ?
食べれるかな。」

んな種類があるなんて初耳である。
これは違う意味で使っていると考えるべきだな。
まぁ目に見えるということは光を反射する、すなわち質量があることは分かる。一種の生物らしいことは推測できる。

「は?」
「いや、こっちの話。」

あれだよね。野生で生きてると生き物を見たときに思うことがまず食べられるかどうかなので・・・グリューネじゃないが、僕は食い意地が張ってるというわけではないことは言っておこう。
リタの話の続きをアル少年が引き継ぐ。

「でも、不思議な薬で僕を助けてくれました。」
「無償じゃないって言ってるじゃないか。メープルシロップだってただじゃないんだぜ?
具体的には僕の労力が代価として使われているのだ。というわけで君達には代価として要求したいことがあるんだけれど?やる気はあるかい?
無ければとっとと出て行ってくれ。」
「あ、いえ、あのそれは、その何かしてほしいというなら僕達に出来うる限りはやりますけど・・・あまりお金は・・・」
「というかあんな大怪我してまで森に入ってくるものかな・・・身の程をわきまえなよ。早死にするよ?
それとも死に場所を求めてきたとか?
ちと見た目から察するに人生をやめるという決断を下すのはまだ早いと思うけどね。まぁどうでもいいや。」
「あ、それは・・・」
「入ってきた理由もどうでもいい。君達に要求するのは―ああ、何がいいだろうか?」

別にメープルシロップぐらい簡単に作れるから適当に助けたのだが、さて、どうしよう?
巷では十二分にこの小屋に寄り付かないようにという話は広まっている。
少なくとも現状は一月に一人来るか来ないかだ。
今更、冒険者としての自身の力量もわきまえない子供に宣伝してもらっても効果は薄い。
ならもうちょっと役にたちそうな・・・ああ、やまいの顔を直接見るとどうなるかを実験しようか。
でも、まぁある程度はやまいの村生活の話で分かっていることであって今更そんなことをしてもやまいは良い気分にはならないと思うし―どうしようか?

「あの、その・・・助けられておいて、言いづらいのですけど・・・私達、ここが目的地として・・・その、それであの、お願いがあるんですっ!」

頭を下げるリタ少女。
それに続いてアル少年も頭を下げる。



「さるお方のお願いで私達は来たんです。」



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