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Ⅴ章 交易都市バルゴ
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アル少年とリタ少女の話を聞くに、彼らは僕の持つ回復薬(メープルシロップ)の製法を知るためにここまでやってきたという。
交易都市バルゴとかいう所にいる領主バルゴからのじきじきの依頼だとか。
重症の冒険者ですら即治癒すると言う不思議な薬。
今までその製法を知ろうとした人間がいないのは逆に不自然か。いや、でも元々そういう薬的なのはゴブリンの爪から作られるポーションと言うのがあるみたいだし、そうでもないのかな。
とりあえず今回は、その話を耳に挟んだバルゴさんとやらが一応どんなものかを確認しに来たと考えるべき。
ちなみに何か欲しいものがあればできうる限りのことはさせてもらうと言う。
それなりに対等に向かい合ってくれる人―なのかは分からない。アル少年達のような実力の無い人間をよこしてくるその能力性や性格に多少の懸念があるので――
「教えてくれないでしょうか?」
「ううむ・・・なるほど。ま、せっかく来てくれたんだし。」
「じゃ、じゃあ!」
「だが断る。」
「えええええっ!?」
この森に入ってくる人間が増える結果、僕の家に来る人間が増えるようになってしまう。
それはいやだ。というかめんどい。
「どうしてなんですかっ!?」
「僕にしか作れないからさ。」
「え?」
「製法をそのままなぞっても僕の特殊な体質がただの甘い液体を回復薬にする。
だから他の人間が作っても意味が無いんだ。」
だったらいいな。うん。
「それじゃ・・・そのまま真似ても意味が無いということですか?」
「そう。」
実際は知らんが。
あ、でも回復薬として使ったときグリューネが驚いていた気がする。
魔法がある世界だしそんなこともあるのか?
なんてね。
僕が特別だったらすべてのタコ、もといデビルイーターは不思議な存在になってしまう。
まさかそんな都合の良いことあるわけあるまい。
『いや、デビルイーターじゃなくて貴方が変なのよ。』
「ん?」
「どうかしました?」
一瞬、グリューネになんか言われた気がするがすぐにどこかへ消えてしまった。
僕のふと出た声に敏感に反応したリタ少女になんでもないと言いつつ。
「というわけだから・・・帰ってもらおうか。お礼は―ああ、持ち物をなんか貰っておこうか。」
別に貰う必要は無いんだけど、無償で人助けしてくれるよ!みたいなうわさが流れても困る。
「あの、せめて一緒に来てもらえないでしょうか?」
「いや、だから作れない―」
「でも・・・」
リタ少女達は粘る。
まぁ彼女達からすれば命がけで死に掛けてまでここに来たというのに、教えても意味無いよといわれてもそうそう信じられない、というより信じたくないだろう。
せめて主に会わせて、こう、何かの成果を残したいということなのかもしれない。
せっかくだし、交易都市にお邪魔することも考えてみる。
交易とか言うくらいなのだ。
さまざまな物資や、この森で手に入れづらい―例を挙げれば加工食品などが手に入るかもしれない。
そのついでに会うくらいなら――ううむ、でもお偉いさんと会うのもなんかいやだな。めんどくさそうだ。
「おねがいします!」
「僕からもお願いします!」
二人とも必死である。
やまいも少し戸惑いつつもその目には「助けてあげよう?」とこっちを見ている。
―――そうだな。
もうぐちゃぐちゃ考えるのも面倒くさいし、交易都市も見てみたいし、作れたら作れたで住処を樹液を得ることの出来る木から離せば良い。
むしろそっちに注意がいって森に入る人間が樹液に夢中になってくれるなら家にくる人間が減る可能性も。
おおう、逆にすばらしい。
やまいに街を見せたいのもあるし、よしきた。
すぐさま行こうか。
「分かった。いくよ。」
「本当ですかっ!?」
「準備してくるから待ってて。」
「は、はいっ!」
二人してうれしそうな顔をする。
僕の影に隠れていたやまいもうれしそうである。
「うれしそうだね。」
「ばるごはねっ!
とかいなんだよっ!!」
「都会?」
「お母さんが言って――たの。」
親から交易都市バルゴについて聞いていたのだろう。
それと同時に母親から嫌われたことも連鎖的に思い出して気落ちしたやまいを抱きしめ、家の手作り箪笥から服を取り出す。
まさに漫画に出てくるような軽装服で、防具としての機能なんて微塵も無いものである。
肩にかけるようなミニマントに、煮込んでやわらかくした葉っぱに僕のタコ墨を練りこんだブラジャーじみたもの。
それに葉っぱパンツと葉っぱスカートである。
やまいの服は目が隠れるローブ。
アル少年達の反応を見るに目線さえあわさなければなんとかなる。
忘れそうになってた漆黒を葉っぱで作った鞘にいれ、腰に横になった状態でつるすようにして最後にポーチを太ももに巻きつけて完成。
太もものポーチにはメープルシロップ(塗布)と包帯、メープルシロップ(飲料)のビン。コンパス、火の魔道具(ライター)、いざというときの保存食であるトンボウサギの干し肉も入れて準備万端である。あとはナイフケースを腕につければあたかもサバイバルできそうなエロイ美少女の図が完成する。
あくまでも漫画に出てきそうな服装で、実際にこんな露出の多い服装で森に入ればたちどころに虫やヤマビルの類に襲われるので、良い子は真似した駄目だぞ!
僕はタコだから大丈夫なのだ。
ちなみにやまいのローブの下はワンピースっぽい服装。
もとい足がもろに露出しているのだが、そこはさすがのぼっち能力。
虫やヒルといった下等生物すら嫌悪して寄り付かないという徹底ぶり。
邪竜の加護の数少ない利点の一つである。
「にあう?」
「可愛いよ。」
「えへへ。」
フードを手にとってくるりと回るやまいはかわいらしかった。
☆ ☆ ☆
「くっ!」
「やぁっ!!」
リタ少女とアル少年はまぁまぁ未熟である。
僕から見ても技術が無いと感じるのだからよっぽどのものだろう。
彼女達の武器はリタ少女が双剣。
アル少年が大剣だ。
で、扱いがへたくそだ。
いや、へたくそといっても今まで森で見てきた人間達に比べて、なので最低限扱えるレベルではある。
扱えてるけどセンスを感じないというか・・・あれですよ。
どんくさい。
一言で言うならどんくさいんだ。
「あ、あまり前に出ないでくださいっ!!
森の外までは僕達が護衛しますから――危ないっ!?」
いや、君達に護衛してもらわなくても――ぐふっ。
どんとお腹に衝撃が来る。
茂みから一気に飛び出して襲い掛かるのは動物における攻撃手段の一つ。
お腹に突撃してきたのは赤黒い毛皮が特徴のレッドボアだ。
イノシシの形をした動物は数種類いるがその中でも特に気性の荒い種である。
ちなみに味は普通。なおかつその気性に反比例するかのように弱いので、むしろ良い獲物となる。味があまり良くないのが残念。たとえるなら焼肉屋の肉とスーパーで売ってる安物の肉くらいの違いがある。特売りのものではない。
普通に安いお肉並みの―だ。
まぁ弱いといっても、それはあくまでも他のボア種に比べてという話であり普通の冒険者がまともに受ければ肋骨の1本2本は楽に折れるだろう。
もちろん僕は折れない。
そもそも骨、無いので。
当然それを知らない彼女達は焦るわけで。ちなみにやまいは焦っていない。僕の強さは知っている。
とはいえ一般人からすれば、ボアの一撃を食らってダメージを受けていないというのも変なのでここは「そもそも、たいしたことがない」ことを装うではないか。実際そうだし。
「おーしおしおし。そっちから寄ってくるとは人懐っこい子だなぁ。」
努めて優しい声音を出し、突進攻撃が効いてないよ!的な体に。
魔法による発声なので大御所声優ばりの演技力だって可能だ。
ちなみにそう言って撫でてる―もとい押さえつけてる間もレッドボアはめちゃくちゃもがいてる。「HA・NA・SE!」と叫んでいるかのような暴れっぷりだ。ブーブーと興奮した際に出す威嚇音まで出している。
我ながら無理がある。どう見ても人懐っこいようには見えない。
「え・・・あの、大丈夫なんですか?」
その疑問は当然だ。
が、押し切る。
「もちろんだとも。どうぶ――魔獣に真っ向から立ち向かえるほどの筋肉があるように見える?」
「・・・いえ、あ、その、見えません、けど・・・」
「となれば。この子自身が力を抜いている。リラックスしてる。そうは思わんかね?」
「ええと・・・そう、ですね?」
「そうだとも。」
「け、怪我は無いんですか?」
アル少年のツッコミが終わったかと思えば次はリタ少女のツッコミか。
怪我、だと?
僕の筋肉がこの程度で傷つくわけが無い。
「ズドンって・・・凄い音がしてましたけど・・・?」
ズドン?
そこまでの音、発ってたかな?
気のせいだと思うけど。
「そう?
いつもそんなものだよ。」
「えっ?」
「えっ?」
「いや、えっじゃなくて・・・こっちのセリフなんですけど・・・あ、防具が凄いんですかっ!?」
「そうだよ?
そうに決まってるじゃないか。」
「あははっ!
そうですよねっ!
防具が凄いんですよね!!」
あははははと二人で笑いあう。
「ぼうぐって何?」
話に混ざりたかったのか、純粋に知りたかったのか、やまいが防具のことについて聞いてくる。
「今僕が着ているものだよ。」
「はっぱで作った?」
「そう葉っぱで作った。」
「はっぱ?
はい?はっぱってあの葉っぱ?
え・・・っと・・・わけがわからないよ。」
やまいが私も欲しいというので今着てるのがそうだよというとうれしそうにまたもやクルクル回る。
おそろいだね!というやまいにそうだねと答えつつリタ少女のほうを見るとなぜかリタ少女が目をクルクルまわしていた。
その後もちょいちょいやってくる動物は―
「はいはい、よしよーしよしよし。」
襲い掛かかってくる動物達をドーンして、バーンして、時にバキンと弾き、ズドムと受け止め撫で回す、ように振舞う。
そのたびに――
「・・・怪我は―ないみたいですね・・・ははは。」
「うらやましいなぁ、僕もだっこしたいなぁ・・・」
「アル、何を言ってるの?
貴方が抱っこしたら即座に引き裂かれるよ!」
「え、でも・・・」
「これは・・・あれなのっ!
あれなのよっ!!」
「あれって何?」
「うるさいわねっ!!
私だって分かるわけないでしょっ!!」
そんな日々を過ごしながら森をゆっくりと抜けていくのだった。
交易都市バルゴとかいう所にいる領主バルゴからのじきじきの依頼だとか。
重症の冒険者ですら即治癒すると言う不思議な薬。
今までその製法を知ろうとした人間がいないのは逆に不自然か。いや、でも元々そういう薬的なのはゴブリンの爪から作られるポーションと言うのがあるみたいだし、そうでもないのかな。
とりあえず今回は、その話を耳に挟んだバルゴさんとやらが一応どんなものかを確認しに来たと考えるべき。
ちなみに何か欲しいものがあればできうる限りのことはさせてもらうと言う。
それなりに対等に向かい合ってくれる人―なのかは分からない。アル少年達のような実力の無い人間をよこしてくるその能力性や性格に多少の懸念があるので――
「教えてくれないでしょうか?」
「ううむ・・・なるほど。ま、せっかく来てくれたんだし。」
「じゃ、じゃあ!」
「だが断る。」
「えええええっ!?」
この森に入ってくる人間が増える結果、僕の家に来る人間が増えるようになってしまう。
それはいやだ。というかめんどい。
「どうしてなんですかっ!?」
「僕にしか作れないからさ。」
「え?」
「製法をそのままなぞっても僕の特殊な体質がただの甘い液体を回復薬にする。
だから他の人間が作っても意味が無いんだ。」
だったらいいな。うん。
「それじゃ・・・そのまま真似ても意味が無いということですか?」
「そう。」
実際は知らんが。
あ、でも回復薬として使ったときグリューネが驚いていた気がする。
魔法がある世界だしそんなこともあるのか?
なんてね。
僕が特別だったらすべてのタコ、もといデビルイーターは不思議な存在になってしまう。
まさかそんな都合の良いことあるわけあるまい。
『いや、デビルイーターじゃなくて貴方が変なのよ。』
「ん?」
「どうかしました?」
一瞬、グリューネになんか言われた気がするがすぐにどこかへ消えてしまった。
僕のふと出た声に敏感に反応したリタ少女になんでもないと言いつつ。
「というわけだから・・・帰ってもらおうか。お礼は―ああ、持ち物をなんか貰っておこうか。」
別に貰う必要は無いんだけど、無償で人助けしてくれるよ!みたいなうわさが流れても困る。
「あの、せめて一緒に来てもらえないでしょうか?」
「いや、だから作れない―」
「でも・・・」
リタ少女達は粘る。
まぁ彼女達からすれば命がけで死に掛けてまでここに来たというのに、教えても意味無いよといわれてもそうそう信じられない、というより信じたくないだろう。
せめて主に会わせて、こう、何かの成果を残したいということなのかもしれない。
せっかくだし、交易都市にお邪魔することも考えてみる。
交易とか言うくらいなのだ。
さまざまな物資や、この森で手に入れづらい―例を挙げれば加工食品などが手に入るかもしれない。
そのついでに会うくらいなら――ううむ、でもお偉いさんと会うのもなんかいやだな。めんどくさそうだ。
「おねがいします!」
「僕からもお願いします!」
二人とも必死である。
やまいも少し戸惑いつつもその目には「助けてあげよう?」とこっちを見ている。
―――そうだな。
もうぐちゃぐちゃ考えるのも面倒くさいし、交易都市も見てみたいし、作れたら作れたで住処を樹液を得ることの出来る木から離せば良い。
むしろそっちに注意がいって森に入る人間が樹液に夢中になってくれるなら家にくる人間が減る可能性も。
おおう、逆にすばらしい。
やまいに街を見せたいのもあるし、よしきた。
すぐさま行こうか。
「分かった。いくよ。」
「本当ですかっ!?」
「準備してくるから待ってて。」
「は、はいっ!」
二人してうれしそうな顔をする。
僕の影に隠れていたやまいもうれしそうである。
「うれしそうだね。」
「ばるごはねっ!
とかいなんだよっ!!」
「都会?」
「お母さんが言って――たの。」
親から交易都市バルゴについて聞いていたのだろう。
それと同時に母親から嫌われたことも連鎖的に思い出して気落ちしたやまいを抱きしめ、家の手作り箪笥から服を取り出す。
まさに漫画に出てくるような軽装服で、防具としての機能なんて微塵も無いものである。
肩にかけるようなミニマントに、煮込んでやわらかくした葉っぱに僕のタコ墨を練りこんだブラジャーじみたもの。
それに葉っぱパンツと葉っぱスカートである。
やまいの服は目が隠れるローブ。
アル少年達の反応を見るに目線さえあわさなければなんとかなる。
忘れそうになってた漆黒を葉っぱで作った鞘にいれ、腰に横になった状態でつるすようにして最後にポーチを太ももに巻きつけて完成。
太もものポーチにはメープルシロップ(塗布)と包帯、メープルシロップ(飲料)のビン。コンパス、火の魔道具(ライター)、いざというときの保存食であるトンボウサギの干し肉も入れて準備万端である。あとはナイフケースを腕につければあたかもサバイバルできそうなエロイ美少女の図が完成する。
あくまでも漫画に出てきそうな服装で、実際にこんな露出の多い服装で森に入ればたちどころに虫やヤマビルの類に襲われるので、良い子は真似した駄目だぞ!
僕はタコだから大丈夫なのだ。
ちなみにやまいのローブの下はワンピースっぽい服装。
もとい足がもろに露出しているのだが、そこはさすがのぼっち能力。
虫やヒルといった下等生物すら嫌悪して寄り付かないという徹底ぶり。
邪竜の加護の数少ない利点の一つである。
「にあう?」
「可愛いよ。」
「えへへ。」
フードを手にとってくるりと回るやまいはかわいらしかった。
☆ ☆ ☆
「くっ!」
「やぁっ!!」
リタ少女とアル少年はまぁまぁ未熟である。
僕から見ても技術が無いと感じるのだからよっぽどのものだろう。
彼女達の武器はリタ少女が双剣。
アル少年が大剣だ。
で、扱いがへたくそだ。
いや、へたくそといっても今まで森で見てきた人間達に比べて、なので最低限扱えるレベルではある。
扱えてるけどセンスを感じないというか・・・あれですよ。
どんくさい。
一言で言うならどんくさいんだ。
「あ、あまり前に出ないでくださいっ!!
森の外までは僕達が護衛しますから――危ないっ!?」
いや、君達に護衛してもらわなくても――ぐふっ。
どんとお腹に衝撃が来る。
茂みから一気に飛び出して襲い掛かるのは動物における攻撃手段の一つ。
お腹に突撃してきたのは赤黒い毛皮が特徴のレッドボアだ。
イノシシの形をした動物は数種類いるがその中でも特に気性の荒い種である。
ちなみに味は普通。なおかつその気性に反比例するかのように弱いので、むしろ良い獲物となる。味があまり良くないのが残念。たとえるなら焼肉屋の肉とスーパーで売ってる安物の肉くらいの違いがある。特売りのものではない。
普通に安いお肉並みの―だ。
まぁ弱いといっても、それはあくまでも他のボア種に比べてという話であり普通の冒険者がまともに受ければ肋骨の1本2本は楽に折れるだろう。
もちろん僕は折れない。
そもそも骨、無いので。
当然それを知らない彼女達は焦るわけで。ちなみにやまいは焦っていない。僕の強さは知っている。
とはいえ一般人からすれば、ボアの一撃を食らってダメージを受けていないというのも変なのでここは「そもそも、たいしたことがない」ことを装うではないか。実際そうだし。
「おーしおしおし。そっちから寄ってくるとは人懐っこい子だなぁ。」
努めて優しい声音を出し、突進攻撃が効いてないよ!的な体に。
魔法による発声なので大御所声優ばりの演技力だって可能だ。
ちなみにそう言って撫でてる―もとい押さえつけてる間もレッドボアはめちゃくちゃもがいてる。「HA・NA・SE!」と叫んでいるかのような暴れっぷりだ。ブーブーと興奮した際に出す威嚇音まで出している。
我ながら無理がある。どう見ても人懐っこいようには見えない。
「え・・・あの、大丈夫なんですか?」
その疑問は当然だ。
が、押し切る。
「もちろんだとも。どうぶ――魔獣に真っ向から立ち向かえるほどの筋肉があるように見える?」
「・・・いえ、あ、その、見えません、けど・・・」
「となれば。この子自身が力を抜いている。リラックスしてる。そうは思わんかね?」
「ええと・・・そう、ですね?」
「そうだとも。」
「け、怪我は無いんですか?」
アル少年のツッコミが終わったかと思えば次はリタ少女のツッコミか。
怪我、だと?
僕の筋肉がこの程度で傷つくわけが無い。
「ズドンって・・・凄い音がしてましたけど・・・?」
ズドン?
そこまでの音、発ってたかな?
気のせいだと思うけど。
「そう?
いつもそんなものだよ。」
「えっ?」
「えっ?」
「いや、えっじゃなくて・・・こっちのセリフなんですけど・・・あ、防具が凄いんですかっ!?」
「そうだよ?
そうに決まってるじゃないか。」
「あははっ!
そうですよねっ!
防具が凄いんですよね!!」
あははははと二人で笑いあう。
「ぼうぐって何?」
話に混ざりたかったのか、純粋に知りたかったのか、やまいが防具のことについて聞いてくる。
「今僕が着ているものだよ。」
「はっぱで作った?」
「そう葉っぱで作った。」
「はっぱ?
はい?はっぱってあの葉っぱ?
え・・・っと・・・わけがわからないよ。」
やまいが私も欲しいというので今着てるのがそうだよというとうれしそうにまたもやクルクル回る。
おそろいだね!というやまいにそうだねと答えつつリタ少女のほうを見るとなぜかリタ少女が目をクルクルまわしていた。
その後もちょいちょいやってくる動物は―
「はいはい、よしよーしよしよし。」
襲い掛かかってくる動物達をドーンして、バーンして、時にバキンと弾き、ズドムと受け止め撫で回す、ように振舞う。
そのたびに――
「・・・怪我は―ないみたいですね・・・ははは。」
「うらやましいなぁ、僕もだっこしたいなぁ・・・」
「アル、何を言ってるの?
貴方が抱っこしたら即座に引き裂かれるよ!」
「え、でも・・・」
「これは・・・あれなのっ!
あれなのよっ!!」
「あれって何?」
「うるさいわねっ!!
私だって分かるわけないでしょっ!!」
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