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第二章 恋におちたら
64 side樹理
しおりを挟む三人のいるテーブルに戻ると、なぜか真里菜と翠が腕相撲の真っ最中だった。
二人とも華奢だからか、勝負は拮抗していた。が、徐々に翠が押していく。負けじと真里菜が空いた手でテーブルをつかんで腕力以外の力を込めて押し返し、ついに翠が力尽きて負けた。
「リナ、卑怯」
「おほほ。勝ちは勝ちよ」
「何の勝負なの?」
腕相撲に集中していたらしい二人が樹理の声に始めて近くにいたのに気づいたのか、こちらを振り返る。
「お姉さまに十の質問をする係り決め」
「十も質問するの?」
「いや、言葉のあや。今のトコ一つだし、聞きたいこと」
げんなりとした表情の翠に聞かれて、真里菜が応える。
「なあに?」
「………いや、ここではちょっと。またの機会にお願いします」
そわそわと視線をさまよわせながら翠が言う。少し首をかしげながらも、樹理はそれ以上聞き質さなかった。そこへ片づけをスタッフに任せたらしい未来が現れる。
「緒方さん、次能先輩は?」
「都織? あれは午前中に起きてくるのはかなり稀だねぇ 大体午前三時に寝て正午前かな、起きるの。いると騒がしいけどいないとなんか物足りないんだよね。今はそうでもないみたいだけど。何か用事? それなら昼過ぎにでも携帯にかけてみて」
「わかりました。朝早くからお世話になりました」
立ち上がる哉に、未来がどういたしましてと応えている。その横で真里菜が樹理の腕を引っ張った。
「お姉さま、今日はどうするの? このまま休み?」
「ううん。三時に学校に行くことになっているの。今回の件で、話をしに。母がとにかく一言物申したいって」
「うわあ、加勢いる?」
「いるときにはお願いね。今日はまぁ……母に任せるわ」
「ラジャ」
おでこに人差し指と中指だけを立てた形で敬礼して真里菜が笑う。その横で翠が少しだけ不安そうな顔をしている。
「ウチのおばあ様、高等部の学校長とお友達だからホントのホントに頼って? 約束だからね」
「うん。ありがとう」
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