幸せのありか

神室さち

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セカイデ イチバン

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「ウソッ!? お母さんお母さんっ 出番です!!」

「あー 私、無理。酔ってるし。カートの方ならやってもいいけど」

「ゲームなんだから大丈夫」

「ほらいるじゃない? 運転できて酒飲んでない人。哉君、やっておしまい」


 焼酎ロックのグラス片手に、どこの悪役の決め台詞か、理右湖がそんなことを言ってヒラヒラ手の平を動かして哉を促している。


「そうだ、哉君! 樹理ちゃんと速人君と私の敵をっ! がふうっ!」

 桜が意味不明のうめき声を上げてソファの背もたれから片手だけ覗かせる倒れこむ。

「氷川さんもゲームとか、やるんですか? こう言うの? ちょっと見てみたいかも」

 先ほどからの会話に加わる気力もないくらいのゲーム疲れからやっと立ち直ったらしい樹理に言われて、チーズを積む手を止め、哉が席を立とうと腰を浮かせる。


「あー 割とできるよ。と言っても、やってる姿は大昔にアーケードで一度見ただけだけど」

 そんなことを理右湖が言っている間に哉がスタスタとテレビの前に行き、足で速人を小突いて脇に追いやり、コントローラを握って、隣に座る椿になにやら言われて頷いている。

 先ほどと同じコースで良いかの確認だったらしく、速人が三連敗したコースを、縦に二分割されたテレビが映し出す。流石に何度もやっている椿のコース取りは完璧で、ぶれることなく同じ場所を通っている。しかし、下に写る哉のマシンからの視点での映像には椿のマシンの後部がその動きをトレスするようにぴったりと映っている。


 一度目の対戦は、哉を後ろにくっつけるようにして椿が勝利した。続けて同じコースで対戦するらしく、再び画面が分かれてレースがスタートする。

 同じように椿のマシンの後ろに哉がくっついて走っていたのだが。



「うぎゃぁあああああ」



 最終のヘアピンを抜けた直後、椿が悲鳴を上げる。カーブの微妙な加減速を利用して、哉が椿のマシンと並んで、ほとんど同時にゴール。YOU WINのテロップは、下画面、つまり哉の方についている。

「もう一回勝負!! コース変えていい?」

 コースを変えて再び二人がコントローラを構える。しかし、先程よりも早い時点で哉が椿の前に立ちはだかり、追い越すスキを与えずに勝利した。


「……このコース、超お気に入りで負け知らずだったのに……こんなあっさり……負けた……」



 がっくりと床に手をつく椿と、相変わらず喜怒哀楽の読めない表情の哉。そして何故か大喜びしている桜。


「……すごい、氷川さん勝っちゃった」



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