光と瘴気の境界で

天気

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プロローグ

天幕の中

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 第二騎士団の臨時駐屯地は、瘴気の晴れた森の手前の開けた場所に作られていた。
 焚き火の煙が静かに上がり、周囲では討伐を終えた隊員たちが装備の手入れや夕食の準備をしている。

 見張りをしていた騎士が、アルバートが腕の意識のない少年を抱えて戻ってきたのを見て驚き、声をかける。

「団長……!?」

 周囲の騎士がすぐさま立ち上がり、敬礼する。
 アルバートは足を止めることなく短く告げる。

「周囲の討伐は完了した。今見たことは他言無用だ。……お前たちは休め。」

 必要最低限の言葉に全員が従い、誰も余計な質問をしない。
 “静かなる王国の悪魔”と呼ばれる騎士団長の言葉は、絶対だった。


 そのままアルバートは中央の天幕へ向かう。
 中では副団長ルートが地図を広げており、こちらを見て目を丸くした。

「……おや。お持ち帰り、ってわけじゃないよね?」

 いつもの柔らかな笑みを浮かべながらも、
 瞳の奥には冷静な警戒が宿る。

「森で倒れていた少年だ。瘴気を浴びている。」

 アルバートがそう言うと、
 隣の棚に薬草の入った瓶を整理していた軍医セナが振り返った。

「倒れてた? あの森で、か?………どれだけ吸ったのか分かるのか?」

アルバートは頭を振り

「見たところ結界も張られていなかった…。見つけた時にはすでにこの状態で倒れていた。」

 アルバートがベッドに少年を横たえる。
 少年の呼吸は浅く、胸が熱に浮かされ上下している。

 セナはすぐに屈み込み、乱暴だが手慣れた手つきで額や首筋に触れた。

「……っつ。かなり熱が高ぇな。
 瘴気の反応も出てる。…どのくらい浴びたか分からねぇのは厄介だ……。この結界はお前が?…応急処置としては悪くねえな。」

 少年の胸元に手をかざし、淡く光が灯る。

「《ヒールライト》」

 柔らかな光が少年を包むと呼吸の荒さは少し和らいだが、熱はいまだ高いままだ。


「これで一旦は安定する。……けどな、」

 セナは真剣な目でアルバートとルートを見る。

「今夜が山だ。油断できる状態じゃねぇ。」


 天幕内の空気が、静かに重くなる。
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