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レクナ村
トラック
しおりを挟むルートははるの学ランを一瞥し、苦笑するように目を細める。
「その服……見慣れないけど、だいぶ動きづらそうだね。
代わりにゆったりしたものを持ってくるね。」
椅子から軽く腰を上げて、テントを出ていった。
セナはもう一度熱を確かめ、淡々と呟く。
「……熱は下がってきているが、まだ起き上がるのに力がいるだろうな。着替えさせるときはゆっくりやれ。」
そう言うと、診察道具をまとめながらテントを出て行くと、
すぐにルートが布の塊を抱えて戻ってきた。
「はい、これ。うちの予備のシャツとズボン。」
セナとルートはアルバートに軽い挨拶をして、静かにテントを出て行く。
途端、湿った夜気と薬草の匂いだけが残り、静けさが降りてきた。
アルバートは手にした服を整えながら、
「……着替えるぞ。ゆっくりでいい。」
その声は硬いようで、どこか優しい。
体を起こそうと力を入れると、背中をしっかりとした力が添えられた。
鍛えた腕の温かさが、熱でぼんやりした背中を支える。
「す、すみませ……っ」
「気にするな。無理しなくていい。」
はるは自分1人で着替えもでできないことに頬を赤らめながら、袖を通す。
アルバートは手早いが乱暴ではなく、
慣れているのか、体に触れる指は驚くほど丁寧だった。
着替えの途中、はるはぽつり、ぽつりと口を開く。
「……あの……。
ぼく……トラック、っていう……車に、轢かれて……
気がついたら……あの森に、いました……」
アルバートの手がふと止まる。
「……トラック?」
聞き慣れない単語に、眉がわずかに動いた。
はるは喉を上下させながら続ける。
「……ぼくのいた世界では、魔物も……瘴気も、なくて……
騎士も……いません。
日本っていう国で……ただ、高校に行ってて……」
アルバートは、理解できない言葉だらけの説明を静かに聞いていた。
否定も混乱も見せず、ただ確かめるように、ゆっくり言う。
「……つまり、おまえの世界には、魔物は存在しない。
瘴気も、魔法も、剣の騎士もいない。そういうことか?」
はるは弱々しく頷いた。
アルバートは少しだけ息を吐き、はるの背を支え直した。
「……そうか」
短い言葉。
けれど、その声音には“疑わない”という意思が宿っていた。
「説明しづらいだろうに、よく話した。
安心しろ。おまえがどこから来たとしても、ここでは害されることはない」
はるの胸の奥がきゅっと熱くなる。
アルバートは服の袖を整えながら、柔らかく言った。
「今は体を治すことだけ考えろ。
世界のことも、魔物のことも、あとでゆっくりでいい」
はるは目を伏せ、小さく頷いた。
アルバートの手は相変わらず温かく、
その温もりに触れていると――
(……大丈夫なのかもしれない……)
そんな思いが、かすかに胸へ灯っていった。
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