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レクナ村
夢
しおりを挟む(……ここ、どこ……?)
ふっと、浮かんでいた。
重さも痛みも、何もない。
ただ、柔らかい闇の中に身体が漂っているような感覚。
目を開けると、そこには――
深い湖面のように静かな黒い空間が広がっていた。
上下の感覚もあやふやで、足元はない。
けれど不思議と怖くはなかった。
「……夢……なのかな……」
声を出すと、闇に溶けるように波紋が広がる。
何もない空間に、ぽつり、ぽつりと光の粒が生まれた。
それはまるで星のように瞬き、はるの周りを漂いはじめる。
光はとても暖かくて、胸の奥がじんわりと熱くなる。
(……なんだろう、この感じ……)
不思議な安心感。
それなのに――
胸の奥では、別の痛みがうずき続けている。
アルバートが血だらけで立っていた姿。
焦った顔のセナ。
泣きたくなるほど怖かった瞬間。
(……守りたかった……)
そう思った瞬間、足元に光がぼうっと灯った。
闇の中に、淡い青白い光で描かれた“円”が広がっていく。
まるで魔法陣のような複雑な紋様。
触れてもいないのに、はるの心の内をなぞるように円が震える。
(……僕……何をしたんだろう……)
あの光も、結界も、全部無意識だった。
やりたくてできたわけじゃない。
それでも――
「助かってほしい」と願った瞬間、何かが勝手に溢れだした。
自分の中にこんな“力”があったなんて知らなかった。
怖い。
でも、誰も傷ついてほしくない。
そんな葛藤が胸のなかで渦を巻く。
ふと、どこからともなく声がした。
――だいじょうぶ。
幼いような、男性なのか女性なのかも分からない声。
「……誰?」
闇の向こうから光の粒が寄せてきて、はるの胸元へそっと触れる。
静かに、温かく。
――きみは、まちがってない。
胸の奥がじんと熱くなり、不意に涙が滲んだ。
(……僕……間違ってない……?でも……)
――守りたいと願った。それは、ちからよりつよい。
その言葉が心の深い場所まで染み渡った瞬間、
黒い空間の“地面”がゆっくりと光を帯び始めた。
幾重にも広がる光の紋様。
その中心に立っているのは、ほかでもない自分自身。
(……僕は……)
何かを掴みかけている――
そんな感覚だけが胸にある。
けれど同時に、身体がふっと軽く浮く。
遠くのほうから、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
――はる!
――はる、聞こえるか!
焦ったような声。
優しい声。
泣きそうな声。
(アルバートさん……?セナさん……?)
光が滲んで、視界が柔らかな白に包まれる。
はるの意識が光に攫われる寸前――
その声はもう一度、はるの内側で微かに響いた。
――すぐには思い出さなくていい。
――いまは、ただ生きて。しっかり、生き残って。
(……生き残る?)
質問しようとした瞬間、足元の光が強まり、視界が白く染まる。
そんな中でも、声はふっと笑うように優しく響いた。
――いずれ、また会える。
――きみが“鍵”を思い出すときに。
(鍵……?)
言葉の意味を掴む前に、視界が急速に遠ざかる。
最後に、かすかに聞こえた声は、確かにこう言った。
――ぼくは、きみの願いがうまれた場所だよ。
忘れないで。きみは……一人じゃない。
光が弾けた。
はるの意識は、現実へとゆっくり浮上していった。
誰かの声がそう呟いた気がしたが、
はるの意識はそのまま光にさらわれるように浮上していった。
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