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レクナ村
レクナ村8
しおりを挟む村長宅へと戻り、玄関をくぐった瞬間、アルバートは短く「討伐は完了した」と告げた。
安堵と驚きが入り混じった表情を浮かべる村長に、ルートが軽く会釈をして続ける。
「後で詳しく報告します。今は……確認したいことがあって」
二人は村長の了承を得ると、そのまま真っ直ぐ客間へ向かった。
扉をそっと開ける。
部屋の中は静かで、薄い寝息だけが規則正しく響いていた。
「……はる、眠れたんだね。」
ベッドに横たわるはるを見て、ルートは安堵の息を漏らす。
だが――
その一言のあと、空気が、わずかに、固まった。
(……あれ?)
違和感を感じ、ルートはセナとアルバートへ目を向ける。
どちらも、表情に微かな影を落としていた。
その空気の理由を悟ったのか、アルバートが静かに口を開く。
「……ルート。さっきの光……覚えてるな?」
「え?あぁ、あの……村全体を包んだやつだろ?結界の追加だって聞いたけど……」
アルバートはゆっくり首を振った。
「……あれは、はるがやった。」
一瞬で、ルートの瞳孔が見開かれた。
「……は……? ま、待ってアル、何を……」
「俺の怪我も……全部、跡形もなく治した。
骨も、裂傷も、血の痕すらない。
あれほどの治癒は、見たことがない。」
ルートの口から言葉が抜け落ちる。
「……………はるが……? あの規模を……?
じゃあ……魔力は……」
言いかけたところで、セナが静かに頷いた。
「あぁ。魔力切れで気を失ってる。
生命維持に必要な分の魔力は残ってるけど……限界だ。」
その声音は淡々としているのに、どこか震えが混じっていた。
沈黙が落ちる。
圧倒されるような沈黙だった。
ルートが、しばらくしてやっと声を絞り出す。
「……だって、さっきの結界……
とんでもない範囲だったんだぞ……
瘴気まで押し返して……。
あれを……はるが……?」
アルバートもまた、深く息を吐く。
「見ていた俺たちも、信じ難かった。
だが事実だ。」
ルートは額に手をあて、目を閉じた。
「……あれだけの光なら……
隣村どころか……王都の見張りだって見てる。
報告が上がるのも時間の問題だ。
“何が起きたか” を調べに兵が来てもおかしくない。」
セナが低く呟いた。
「……はるの存在が、国に知られるのは……避けられないだろうな。」
アルバートははるの横へ歩み寄り、その額にそっと手を置いた。
その眼差しは、騎士のものではなく――どこまでも優しい、ひとりの青年の顔だった。
「……どんなことがあっても、俺ははるを守る。」
ルートも一歩踏み出し、真剣な瞳で頷く。
「もちろんだ。
はるをこの国の道具なんかにさせるもんか。」
セナもまた、
「……同じだ。
はるは俺たちが助けた。
だから……守るのも、俺たちの役目だ。」
静まり返った客間で、三人は強く誓い合う。
その中心で、眠るはるは何も知らぬまま――
穏やかな寝息を立てていた。
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