光と瘴気の境界で

天気

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レクナ村

レクナ村7

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 アルバートは倒れたはるの体を軽々と抱き上げた。
その仕草は荒々しさなどなく、壊れものに触れるように慎重で――
深手を負っていた者とは思えないほど力強かった。

「……はる。大丈夫だ。すぐ寝かせるからな」

握っていた手をそっと離し、胸元に抱え直す。
はるの頭がアルバートの胸に預けられると、周囲の騎士たちは道をあけた。

一歩歩くごとに、はるの黒髪が揺れ、
それを見た村人たちのざわめく。

アルバートはそれらを一切気に留める様子もなく、
一直線に客間へ向かった。


ーーーーーーーーーーー


セナははるを運ぶ背中を一度見送ると、村長へ向き直った。

「村長さん……今の光景は、他言無用で頼みます。
見ていた村人全員にも、必ずそう伝えてください」

村長は真剣な顔で首を縦にふる。

「も、もちろんです……あれは……あれは……」

言葉に詰まる村長へ、セナはさらに低く言付けるように告げた。

「混乱させたくありません。今はただ、“騎士団の指示に従ってほしい”と。
いいですね」

「……承知しました」

それで十分だと判断すると、セナは踵を返し、
走るように客間へ向かった。


ーーーーーーーーーーー


アルバートがはるをベッドへそっと横たえると、
すぐにセナが駆け込んできた。

「どうだ」

「呼吸は安定してる……ただ、魔力の消費が尋常じゃない」

セナは両手をかざし、はるの胸のあたりへ静かに魔力を流し込む。
淡い光がふわりと身体に染み込み、微細な魔力の流れが輪郭を露わにしていく。

「……生命維持に必要な魔力は、かろうじて残ってる。
今は深い眠りで回復に入ってる状態だ。すぐにどうこうはない」

安堵の息を吐くセナ。

その言葉にアルバートもわずかに肩の力を抜いた。

「そうか……良かった」

だが次の瞬間、鋭い眼差しへ戻る。

「…はるを頼む。前線の確認に行く。すぐ戻る」

その言葉を残し、アルバートは迷いなく踵を返し、
再び外へ駆け出した。


ーーーーーーーーーーー


夕闇が深まり、瘴気に覆われていたはずの西側の森は、
強固な結界に押し返され、澄んだ空気を取り戻しつつあった。

その中で、ルートが部下達へと指示を飛ばしながら状況の確認をしていた。

そこへ――

「ルート!」

重く、しかし確かな足音。
振り返ったルートは思わず目を剥いた。

「だ、団長……!? あれ?傷は……」

つい先ほどまで瀕死だったはずの男が、
傷ひとつない状態で走ってくるなどありえない。

「セナが治したのか?」

ルートは信じられないものを見るようにアルバートを見つめた。

だがアルバートは短く息を吐き、簡潔に言う。

「……今は戻るのが先だ。おまえの報告を聞かせろ」

ルートは慌てて姿勢を整え、状況を手短にまとめた。

「討伐は完了しました。周辺の確認も済んでいます。
負傷者もおりません。
途中――追加で結界が張られたようでした。あれは……規模が段違いです。
村全体を覆い、西の森の瘴気を押し返すほどの強固で。
それに、確かに負傷していた者も居ましたが、その光に包まれた後、傷などなかったかのように綺麗に回復しています。」

部下の騎士たちも、信じられないというように何度も頷いた。

アルバートは静かに目を伏せ、ひと呼吸おいてから言う。

「……後で話す。村へ戻るぞ」

「はっ!」

ルートはすぐに部下へ帰還の指示を出し、
アルバートの後に続いて村へ戻っていった。








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