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しおりを挟む文化祭まで、あと三日。
朝陽は寮の廊下を、ゆっくりと歩いていた。
熱は下がったが、体の奥に残る怠さは消えない。
——行って、いいのかな。
生徒会室の前に立ち、ノブに手をかけたまま、ためらう。
一昨日まで、あそこは「一人きりの場所」だった。
意を決して、扉を開ける。
「……え」
視界に飛び込んできた光景に、朝陽はそのまま固まった。
蓮がいる。
千早が、湊翔が、悠真が——全員、生徒会室に揃っていた。
「朝陽」
最初に声を上げたのは蓮だった。
すぐに近寄ってくるその姿に、朝陽は反射的に一歩下がりそうになり、踏みとどまる。
「……体調、大丈夫か」
「はい。もう……大丈夫です」
ぎこちない返事。
体調が万全ではないのは明らかだった。
幾分か痩せた頬に疲れの見える隈。
沈黙が落ちる。
「……俺たち、最低だった」
蓮が深く頭を下げた。
「朝陽に、全部押し付けて」
千早も、湊翔も、悠真も、それぞれに謝罪の言葉を口にする。
「本当に、ごめん」
「……ひどいことした」
「………ごめ、ん、なさい」
その言葉を聞いた瞬間、朝陽の視界が滲んだ。
「……っ」
涙が、ぽろぽろと床に落ちる。
「ごめんなさい……」
思わず漏れた言葉に、全員が凍りつく。
「違う!」
蓮が慌てて朝陽に駆け寄り抱き寄せる。
「謝るのは俺たちだ朝陽は何も悪くない。」
千早も、湊翔も、悠真も近寄り、朝陽を囲む。
ぎこちなく、それでも必死に、彼を抱きしめた。
「……1人にして、ごめん。」
その一言で、朝陽は声を上げて泣いた。
しばらくして落ち着くと、自然と皆が席についた。
朝陽は泣いたためか微熱を出した。
仕事をすると言って聞かない朝陽に千早が有無を言わさずソファに横にさせ絶対に仕事をさせないという強い気持ちが見え、納得いかないながらも大人しく横になっている朝陽。
「文化祭、成功させよう」
その言葉に、朝陽は小さく笑いながら頷いた。
5人で進める仕事は、驚くほど早かった。
今まで一人で抱えていたものが、嘘のように片付いていく。
気づけば時刻は14時を回っていた。
「ねーそろそろご飯いこーよー」
久しぶりに聞く、湊翔の軽い声。
「そうですね。キリもいいですし。朝陽は体調どうですか?食堂からお粥でもいただいてきましょうか。」
「……むりは、ダメ…」
「へっ平気!ほら熱も下がったから!
…みんなで食べにいきたいです。」
平熱へと戻った体温計を見せながら必死の朝陽。
その様子に安心しつつ、自然と頬が緩む。
こうしたい!と今まで自分の意見を言わなかった朝陽の
可愛いお願いに断る理由はなかった。
食堂でそれぞれが注文し、席につく。
ようやく一息ついた、その瞬間だった。
「どうして……どうしてあいつばっかりなんだ!!」
食堂の入口に、空が立っていた。
鬼の形相で、目は血走っている。
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