全寮制男子高校 短編集

天気

文字の大きさ
5 / 28

5




知らせを聞いて、無意識に早くなる歩み。

生徒会室の扉を開けた瞬間。
蓮は言葉を失った。

山積みの書類。
乱れた朝陽の机。
そして——ソファに横たわる小さな体。

「……朝陽?」

近づくと、熱に浮かされた呼吸と乾いた咳が聞こえる。
頬は赤く、唇は乾いていた。

「、けほっ、ごめんなさい……迷惑、かけて……」

掠れた声。
その一言で、胸が締め付けられた。

——違う。
謝るのは、俺たちだ。

蓮はその場に膝をつき、朝陽の額に触れる。
熱い。異常なほどに。

「……俺は、何をしてたんだ」

生徒会長として。
先輩として。
好きだと言いながら、彼を一人にした。

罪悪感が、遅れて牙を剥いた。

「朝陽、すまなかった。」


蓮は朝陽に解熱剤を飲ませて寝かせると、
すぐに朝陽の机につき、仕事に取りかかった。
一つ、また一つと期限の近いものから処理していく。

速度は、異常だった。
だがそれでも、終わりが見えない。


——これを、朝陽は一人で。


気づけば夜が深まり、窓の外は暗くなっていた。

「……ごめん」

小さく呟き、蓮は朝陽の髪をそっと撫でる。
眠りは浅く、時折うなされるその姿に、胸が痛んだ。

その夜、蓮は一睡もせずに仕事を片付けた。


朝になり、珍しく役員たちが生徒会室に入ってきた。



「……え?」

光景を見て、言葉を失う。

机に整然と並ぶ書類。
ソファで眠る朝陽。
そして、朝陽の机につき目の下に隈を作った蓮。

「会長……?」

「朝陽が、朝陽が全部やってた」

蓮の声は低く、静かだった。

「体調悪くても、何も言わずに」


千早は唇を噛みしめ、湊翔は視線を逸らし、悠真は拳を握り締めた。


——自分たちは、何をしていた?


その時、扉が乱暴に開く。

「蓮!」

空だった。

「なんで来ないんだよ。仕事?そんなの朝陽に——」

言葉は、途中で止まった。

「それ以上言わないでくれ」

蓮は立ち上がり、初めて強い声を出した。

「俺たちがいない間、朝陽は倒れるまで働いていた…」

空は目を見開き、ソファで眠る朝陽を見ながら理解を拒むように首を振る。

「嘘だ!仮病に決まってる!!蓮たちの気を引くために!俺の方が——」

「間違ってしまった…」

「ごめんなさい、朝陽…」

千早が静かに告げる。

「何言ってんだよ!!!ほら!遊びに行くぞ蓮!」

断るも聞く耳を持たない空。

「……つまんない」

吐き捨てるように言い、拳を壁に叩きつける。

——全部、朝陽のせいだ。

その感情が彼の中で、黒く渦巻き大きくなっていく。


その剣幕にようやく深い眠りについていた朝陽が
僅かに身じろぐ。
それに気づいた湊翔が、空の肩を組み

「ほーら空ちゃん!俺、空と一緒に屋上でおやつパーティしたいなあ!ほら!急ご!!」

有無を言わせず扉に向かって歩いていく湊翔と空。
扉が閉まる瞬間2人がこちらを見る。
納得していないような顔の空、
こっちは任せてくれ、朝陽を頼んだと蓮にアイコンタクトを取る湊翔。

扉が完全に閉まると先ほどの嵐が嘘だったように
静けさだけが残った。


部屋に残った蓮、千早、悠真は朝陽がまだ眠っているのを確認するとサッと仕事の分担すると
仕事を始める。徹夜の蓮は朝陽の眠るソファの横に1人がけのソファを動かし仮眠をとる。





なんとか空を連れ出した湊翔は、仕事の、朝陽の邪魔をしないようなんとか敷地内のカラオケで気を引くことに成功した。

その日は暗くなるまでカラオケで過ごし、楽しそうに笑う湊翔も心の奥では横たわっていた朝陽が心配でたまらなかった。















感想 0

あなたにおすすめの小説

光と瘴気の境界で

天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。 彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。 目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず… アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、 彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。 古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。 魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。 ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

風に立つライオン

壱(いち)
BL
BL非王道全寮制学園の生徒会役員の主人公。王道転入生によって学校内の秩序や生徒会の役割だとかが崩壊した。金、地位、名誉、名声、権力、全てを手にしている者になったつもりでいたのは誰だったのか。 王道を脇役に主人公は以前出会った生徒会長の父との再会、恋人だった義父の病んでそうなカンジに眩暈がしそうだった。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。