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文化祭準備期間でいつも騒がしいはずの生徒会室が、
異様な静けさに包まれている。
その違和感に最初に気づいたのは、風紀委員長だった。
「……こんな年もあるんだな」
風紀委員長・大地は、提出期限を過ぎた書類を手に眉をひそめた。
本来なら生徒会がすでに処理しているはずのものだ。
珍しい事もあるものだと思っていたが、どうもおかしい。
面倒くさがったり、書類が多いだの文句を言いながらも
生徒会が期限を守らないことなど今までなかったからだ。
大地は片眉をあげ
「一度、生徒会室に行ってみるか」
そう判断し、数名の委員とともに扉を開ける。
「失礼する、当日の見回り——」
言葉は、途中で止まった。
生徒会室の左手前に置かれた机。
それに向かい今にも机と顔がつきそうな小柄な生徒。
青白い顔色、額に浮かぶ汗。
静かな部屋に微かに響く、浅く早い呼吸と乾いた咳。
机の上にも床にも、整理途中の書類が山のように積まれている。
「……小鳥遊、か?」
呼びかけても反応は鈍い。
大地はすぐに異常を察し、肩を貸して朝陽をソファに寝かせた。
「熱、相当あるぞ」
冷静な声とは裏腹に、内心では焦りが広がっていた。
水を持ってくるよう後輩に指示しながら生徒会室の中を見回す。
朝陽の机には生理途中の書類の山、
それに反して他の机は書類もなく綺麗だった。
この状況が一日二日で起きたものではないことは、一目で分かる。
「何があった?」
ゆっくりと事情を聞くと、朝陽は途切れ途切れに答えた。
責める言葉は一切なく、ただ「自分がやるべきことをやっただけです」と。
——これは、まずい。1人でこなせる仕事ではない。
大地は即座に判断し、生徒会長の所在を探らせた。
その頃、屋上では。
「蓮、聞いてる?」
空は蓮と千早の腕を引き、無邪気に笑っていた。
その後ろから悠真と湊翔が続く。
「今日は何して遊ぼうかなー?」
だが、蓮の視線は遠く、どこか落ち着かない。
無意識のうちに、屋上から見下ろす校舎の一角——生徒会室を探していた。
最近、朝陽を近くで見ていない。
それどころか、顔を思い出そうとすると、少し痩せた輪郭が浮かぶ。
「……なあ、千早」
「なんですか?」
「朝陽、最近——」
「どうせ仮病だろ」
蓮が千早に小声で話し掛けるが空には聞こえ、
被せるように話す。
「どうせ気引きたいだけ。蓮は俺と一緒にいるよな?」
そう言って、腕を絡めてくる。
けれど蓮の胸に、重いものが沈んだ。
その瞬間、風紀委員から連絡が入る。
徐々に顔の曇っていく蓮。
「先生に呼ばれてる」
蓮はそう言って、空の手を外した。
空は不満げだったが、引き止めはしなかった。
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