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しおりを挟む文化祭前日。
最終調整は順調に終わり、生徒会室には久しぶりに穏やかな空気が戻っていた。
「ゆまちゃんは明日、どこ回るの?」
「………中庭」
「…それいつもの猫ちゃんに会いにいくんじゃないの?」
そんな他愛ない会話を聞きながら、朝陽はふと蓮を見る。
——蓮先輩といると、安心するな。
昨夜、自然と彼の部屋に向かった自分を思い出す。
——どうして、蓮先輩のところだったんだろう。
答えは、まだはっきりしない。
けれど、胸の奥が温かくなるのを、朝陽は感じていた。
その夜も、朝陽は蓮の部屋で眠った。
蓮は多くを語らない。
ただ、夜中に目を覚ました朝陽の背に、そっと手を添える。
「……大丈夫だ」
その一言で、
朝陽は全身に入っていた力を抜き、また眠れた。
文化祭当日。
学園は人で溢れ、笑い声と音楽が交錯する。
生徒会の仕事は忙しかったが、それ以上に、充実していた。
見回りの途中、3階の廊下の窓から中庭で楽しそうにしている生徒を見て朝陽は足を止めた。
——成功した。
胸いっぱいに広がる安堵。
その瞬間、力が抜けた。
「……っ」
崩れ落ちそうになった体を、蓮が受け止める。
「朝陽」
涙が、止まらなかった。
「……良かった……」
儚く、健気なその姿に、蓮は息を呑む。
「少し、休もう」
近くの空き教室に入り、朝陽を抱き上げて椅子に座る。
そのまま、膝の上に乗せた。
朝陽の頭を撫で、衝動のまま、額に唇を落とす。
「……ごめん」
「どうして、謝るんですか?」
「男同士で、キスなんて……嫌だっただろ」
一瞬の沈黙。
「……な、です……嫌じゃないです」
その答えに、蓮は目を見開いた。
朝陽自身も、はっとする。
——ああ。
この気持ちは。
「……俺、蓮先輩のこと」
胸が、苦しくて、温かい。
「すき、です…」
蓮の声は震えていた。
「俺も朝陽が好きだ。ずっと好きだった。
守れなかったこと、許さなくていい。でも——」
言い終わる前に朝陽は、蓮の制服をぎゅっと掴む。
「……離れないでください」
それが答えだった。
2人は、静かに抱き合う。
見回りのことなど、すっかり忘れて。
外では、文化祭の喧騒が続いていた。
けれどその教室だけは、世界から切り離されたように静かだった。
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